機動警察Kanon 第202話













  「Kanonまでの距離はっと」

 グリフォンのコクピット内で計器を確認したみちるはにやあ〜と笑った。

 そしてグリフォンを操縦するには普段使わないボタンを押し込んだ。

 するとコクピット外部からキィーンという甲高い音が鳴り響く。

 「回転数良し。それじゃあいっちょ行ってみよ〜っと」

 そう言うやみちるはレバーをぐっと押し込んだ。

 すると爆発的な加速を得たグリフォンは名雪の乗るけろぴーへとあっという間に距離を詰める。

 「必殺、みちるキ〜ック!!」





  ドガァ〜ン!!




  「くっ!!」

 グリフォンから放たれた必殺みちるキックをけろぴーは何とかシールドで受け止めた。

 しかしジェットエンジンによって加速されたグリフォンの鋭い攻撃を完全に吸収し切れるはずがない。

 はじけ飛ばされたけろぴーはバリケード代わりに止まっていた一号キャリアの上に勢いよく落下した。

 その衝撃で一号キャリアの車体は大きくひしゃげ、フロントガラスも粉々、あたり一面に細かい部品を

 まき散らし惨たる有様だ。

 この様子にミニパトに乗っていた秋子さんが無線機で呼びかけた。

 「栞ちゃん、元気ですか?」

 『えう〜っ、元気には元気ですけどあんまりです〜』

 「どうやら大丈夫みたいですね」

 栞の泣き言にほっとした秋子さんは正面を見据えた。

 そこには一号キャリアに駆け寄ってくる祐一の姿があったからだ。

 「名雪、大丈夫か!?」

 『うぅ〜、なんとか……』

 「ならさっさと立ち上がれ!! ぐずぐずしていると黒いレイバーにやられるぞ」

 そう言って振り返る祐一。

 するとそこにはもったいぶったような感じでゆっくりと近づいてくる黒いレバーの姿があった。

 『うぅ〜、わかったよ!?』

 「どうした、名雪?」

 ちょっくら名雪の様子がおかしいと気がついた祐一が尋ねると、名雪の叫び声が返って来た。

 『ど、どうしよう、祐一!? バッテリーが、バッテリが!!』

 「何!? 」

 ついに危惧していたその時が訪れてしまった。

 バッテリーが切れてしまえば警察用レイバーとして名高いKanonも何の役に立たない木偶人形に過ぎないのだ。

 『動いて!! 動いてよ!!』

 必死でフットペダルを踏み込むがけろぴーは起きあがろうとはしない。

 もはや立ち上がるだけのバッテリーも残っていないのだ。

 そうこうしているうちに黒いレイバーは一号キャリアの目の前に立っていた。

 そして動けないけろぴーを舐め回すような視線で見下ろすとけろぴーに向かって手刀を構えた。

 「名雪、かわせ!!」

 とはいうものの今のけろぴーに出来ることなどたかがしれていた。

 けろぴーの腕を目の前に構えコクピットの防御を固める名雪。

 とその時、栞がキャリアのアクセルを踏み込んだ。

 ホイルスピンをさせながらグリフォンの横を一気に走り去る。





  「に、逃げるなんて卑怯よっ!!」





  すぐに踵を返し、一号キャリアを追おうとするみちるとグリフォン。

 だがその後を追わせるわけには行かなかった。





  『あゆちゃん、援護してください!』

 秋子さんの指示に、あゆは二号キャリアのアクセルを踏み込んだ。

 そして一直線に黒いレイバーへと突っ込む!!

 「う、うぐぅ〜!!」





  「行け、あゆ!! 必殺ヒットマン攻撃だ!!」

 「あゆあゆ、そのまま撥ねちゃいなさい!!」

 祐一と真琴の声援を一身に背負ってあゆは黒いレイバーへと突っ込んでいく。

 「うぐぅ〜!! 名雪さんの危機はボクが救うんだよ!!」





  だがそんなあゆの決意も実ることはなかった。

 「ひょい」

 「うぐぅ!?」

 あっさり黒いレイバーに体当たり攻撃をよけられてしまうあゆ。

 そして『車は急には止まれない』という標語通り、暴走した二号キャリアは黒いレイバーの脇を猛スピードで

 突っ切ると、道路脇の堤防に突っ込んだ。





  「何なの、こいつ?」

 一瞬、呆気にとられるみちる、だがすぐに気を取り直すとけろぴーを乗せた一号キャリアのあとを追った。





  「あゆあゆ、無事!?」

 堤防に突っ込んでひしゃげたドアをこじ開けた真琴はあゆの無事を確認する。

 するとそこには

 「たい焼きが一個、たい焼きが二個、たい焼きが三個……」

 衝突のショックで意識が半分吹っ飛び、現実逃避しているあゆの姿があった。

 「ちょっとあゆあゆ、しっかりしなさいよ!!」

 怪我していないとみるや真琴はあゆを運転席から引きずりおろした。

 「うぐぅ!!」

 大人の背の高さほどあるキャリアの運転席から引きずりおろされた。

 「ちょ、ちょっとひどいよ真琴ちゃん!!」

 あゆの抗議を無視して真琴は秋子さんに叫んだ。

 「沢渡真琴および月宮あゆ両巡査はこれより一号機支援に入ります!!」

 「あまり無茶はしないでくださいね」

 「はい!! ほらあゆあゆ、行くわよ」

 「うぐぅ〜!!」

 ドナドナよろしく悲しそうな目で秋子さんを見るああゆを引きずりつつ真琴は堤防の向こう側へと姿を

 消したのであった。






  「何するつもりなんでしょうね?」

 「さあ?」

 祐一の問いかけにたおやかな表情の秋子さん。

 その秋子さんの表情に、これ以上の質問は無意味と悟った祐一は秋子さんに敬礼した。

 「一号キャリアを追います!!」

 「がんばってくださいね、祐一さん」

 「はい!!」

 そして祐一は美汐が乗ってきた二号指揮車に乗り込むと一号キャリアを追うのであった。







あとがき
最近メインPCの調子が悪いです。

このSS書いている途中で突然シャットダウンしてしまいましたし。

どうもノースブリッジの熱暴走のようで温度が65℃突破……ファンを全開にしていると落ちませんので

これで確定だと思うんですがどうしたらいいでしょう?

昨年は冷夏だったせいでこのようなトラブルは起こらなかったんですが……新しく一台組むべきか、

それとも冷却能力の高いヒートシンクを調達すべきか。

悩みの種です。


2004.07.04


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