機動警察Kanon 第201話













  「が、がお。黒いレイバーとKanonが戦い始めたよ」

 ホテルの目の前で始まった格闘戦に思わず声を上げる観鈴。

 すると

 ポカッ

 「痛い、どうしてそういうことするかな」

 往人の鉄拳に抗議する観鈴だが往人は涼しい顔だった。

 「約束事だ」

 「ひどいよ、往人さん〜」

 状況を忘れて脱線し始める二人に美汐はため息をついた。

 「お二人とも今はそんなことをしている場合ではないと思いますよ」

 「そ、そうだったな……」

 「にははは〜、忘れてたよ」

 ポリポリ頭をかく二人……こういうところはさすがにコンビ、息がぴったりだ。

 「ここに例のレイバー関係者がいるわけだ」

 往人の言葉に美汐は頷いた。

 「実戦をライブで見せる、これほど効果的なプレゼンテーションはありません。そしてそれが目的なら……」

 「にははは〜、このホテルほどのアリーナ席はどこにもないよね」

 「そういうことです」

 美汐は頷くとポンと手をたたいた。

 「それでは始めましょう。急がないと確認し切れませんよ」

 「こんなことになるんだったらこんなに調べておくんじゃなかったよ」

 そう愚痴る往人の手には来日中のレイバー・軍事関係者の写真入り名簿があった。

 「がんばろうよ、往人さん」

 そして三人は秋子さんに託された機材を駆使して撮影を開始したのであった。

 





  ズガァーンー!!

 ものすごい衝撃音とともにKanonとグリフォンの二機のレイバーは堤防の向こう側に消えた。

 「名雪!!」

 「ちょっとどうなっているのよ!!」

 あわてて堤防を駆け上る祐一と真琴。

 その二人の視線の先にはグリフォンを押し倒した黒いレイバーの姿があった。

 



  「取ったよ!!」

 37mmリボルバーカノンをグリフォンに突きつけた名雪が叫ぶ。

 だが圧倒的な速度を誇るグリフォンにはその程度、何の障害でもなかった。

 「甘いのよ!!」

 グリフォンの拳は37mmリボルバーカノンを強襲し、その力に耐えかねけろぴーの手の中から分かれる。

 そして返す拳でけろぴーを殴りつけた。

 ダァーンー!!

 ものすごい勢いでグリフォンの上から吹っ飛ばされるけろぴー。

 「だぉ〜!?」

 なんとかけろぴーの制御し、転倒は阻止する名雪。

 だがその短い時間はグリフォンを駆るみちるには十分すぎるほどの時間であった。

 一瞬のうちにけろぴーから距離を置き、そしてグリフォンは万全の構えを取っていた。






  「さすがにそう簡単にできる相手ではありませんね」

 黒いレイバーの動きっぷりに秋子さんはちょっとだけ困った表情を浮かべた。

 とその時、「ピィー!!」と無線機が呼び出し音が鳴り響く。

 「はい、水瀬です」

 『あたしです、香里です』
 
 それは通常時は埋立地にいるはずの整備班班長の美坂香里その人であった。

 「あら香里ちゃん、どうしました?」

 『今強力な助っ人と一緒にそっちに急行中です』

 「助っ人ですか。ありがとうございます」

 どこからわいて出たのかもしれない助っ人に秋子さんは動じる様子もない。

 『特車二課は第二小隊だけじゃないって存分に知らしめてやりますよ』

 「頼もしい言葉ですね。助っ人の方々にもよろしくお伝えくださいね」

 『任せてください、秋子さん。後十分ほどでそっちに着きますからね』

 香里との交信を終えた秋子さんは無線機をフックにかけながら呟いた。

 「あと十分……けろぴーのバッテリーは大丈夫でしょうか……」








  「おっ、こいつもファイルに載っているな」

 観鈴が操作するカメラから映し出された映像に往人はにやりと笑った。

 「こりゃあ入れ食い状態だな……観鈴、照合は後回しにしてどんどん撮るぞ」

 「にははは〜、了解だよ往人さん」

 力強く頷く観鈴。

 だが

 「お、おい、どこ撮っているんだお前は」

 「が、がお。うまく操作出来ないよ」

 高性能であるが故に重く操作の難しいカメラを操作するのは観鈴には荷が重たかった。

 「お、おい。しっかりやらないか」

 モニターの前を離れ、観鈴の元に向かう往人。

 とそのときモニターの前に残っていた美汐ははっとした。

 「神尾さん、今映っているのはどの位置ですか?」

 「えっ、え〜っと……七階の右の方かな?」

 「そうですか……」

 「なんかあったのか?」

 往人が振り返り美汐に尋ねる。

 すると美汐は首を横に振った。

 「いえ、何でもありません。ただ急がないと全員を撮り切れないと思ったものですから」

 「全く天野巡査部長の言うとおりだな。仕方がない、観鈴、俺と代われ」

 「にははは〜、了解だよ〜」







   ドン!!  ガァーン!!  ズシャーン!!

 グリフォンの連続攻撃に名雪の駆るけろぴーは防戦一方であった。

 シールドを使って攻撃を防ぎながら後退する一方だ。

 「名雪!! 押さえていかないとバッテリーが持たないぞ!!」

 かなりのバッテリーを消耗し、補充できたのは急速チャージ分のみ。

 このままではあっという間にバッテリーが切れてしまうであろう。

 祐一がそう指示すると無線機の向こう側から名雪の悲痛な声が届いてきた。

 『それは十分わかっているけど黒いレイバー相手に押さえながら戦うなんて無理だよ!』

 「……くっ」

 実際、バッテリー残量を温存してもけろぴーの機体が壊されてしまえばそれは何ら意味はないのだ。

 だがバッテリーが切れてしまえばその結末は明白だ。

 「ちょっと祐一、バッテリーはあとどれくらい保つのよ?」

 真琴の質問に祐一は首を横に振った。

 「わからん。あれだけ派手に動いてるんだぞ。フル充電してあったってそんなには保たないだろう」

 「接近戦は不利ね」

 「飛び道具はもう手元にないからな」

 とそのとき、けろぴーに連打を浴びせていたグリフォンが突然その手を止めた。

 そして一歩、また一歩とけろぴーから距離を開けていく。

 「一体何をするつもりなのよ!?」

 「俺が知るか!! ……名雪、注意しろよ!!」

 『わかってるよ』
 
 警戒する第二小隊の面々。

 やがてグリフォンはけろぴーから100mほど離れるとしゃがみ込んだ。

 「一体何をするつもりだ?」

 「そんなの真琴に言われたってわからないわよ!!」

 理解できない行動に二人はただ騒ぐだけ、はっきり言って何の役にも立たない。

 そうこうしているうちにグリフォンはクラウチングスタートの体勢を取った。

 「名雪!!」

 『わかっているよ!!』

 祐一の言葉に名雪は頷いた。

 『あの黒いレイバーのクラウチングスタート、全然ダメダメだよ!!』
 
 「そうじゃないだろ、そうじゃ!!」

 元陸上部部長にはとっても気になるようであった。









あとがき
荒らしが来ていたので更新が二週間ぶりになってしまいました。

もうしわけないですm( )m。

それとうまく区切れないので今回はここでお終いにします。

それにしても残りはOVA1話分……もうちょっとで完結ですね。




2004.06.19

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