機動警察Kanon 第200話












   ファォンファォンファォンファォン

  ミニパト一台、指揮車一台、キャリア二台、それに覆面パトカーが一台がサイレンを鳴り響かせ、

 夜の東京を走り抜けていく。







  「祐一、バッテリの充電大丈夫?」

 移動中のキャリアの上で、急速チャージ用のケーブルを繋ぐ作業中の祐一に声をかける名雪。

 すると祐一は首を縦に振った。

 「とりあえず充電中は出来ている、大丈夫だ」

 「そうよ、名雪。こんなのケーブルを繋ぐだけなんだから簡単よ」

 胸を張って威張る真琴。

 だがそう楽観視できる物でもなかった。

 「バッテリー残量はどれくらいだったんだ?」

 「えっと……だいたい20%ぐらいだったと思う……」

 「…50%ぐらいまで回復できれば御の字か」

 「あの黒いレバー相手にバッテリー気にしながらなんか戦えないよ……」

 「速攻でかたを付けろ」

 あっさり言い放つ祐一に名雪は唇をとがらせた。

 「そんな簡単に出来たら苦労しないよ〜」

 「仕方がないだろ。真琴がへまをやらかしたせいで援軍の見込みはさっぱり無いんだぞ」

 「へまとは何よ、へまとは!!」

 橋に大穴をあけた上、海に引きずり込まれたという事実の前には真琴の抗議が通用するわけ無かった。

 「だれがどう見たってお前のへまだろうが!!」

 「真琴、酷いよ〜」

 「名雪までそう言うの?」

 祐一はともかく名雪にまで言われた真琴のショックは大きく、がっくりと膝をつき項垂れる真琴。

 その姿を哀れに思いフォローしようとした名雪はふと気が付いた。

 「あれ? 天野さんの二号指揮車が変な方向に行っちゃうよ」

 「何だと!?」

 名雪の言葉に祐一は二号指揮車を見る確かに二号指揮車が一団から離れていく。

 「刑事さんも一緒だよ」

 二号指揮車の後を国崎&神尾両刑事の乗った覆面パトカーが付いていく。

 「なんだろうな?」

 「何だろうね?」

 首をかしげる二人であった。









   バラバラバラバラバラバラ

  海面を突き進む航跡を追い続けていた警察のヘリコプター。

 だがやがてその航跡は夜の闇にすっぽり包み隠されてしまった。




  『こちら107ハヤブサ、目標消失』

 「引き続き警戒されたし」

 ヘリからの報告に秋子さんはそう告げると頷き、そして隊員たちに指示を出した。

 「目標が上陸すると追われる地点に先回りします。続いてください」

 『了解です』

 『了解したよ』

 ミニパト一台とキャリア二台は舞浜に向かって突っ走っていった。







  「はい、止まってください」

 秋子さんの指示に二台のキャリアが停止する。

 そこは秋子さんが舞浜大橋の上から国崎往人に指し示したそのホテルの真ん前であった。

 「よいっしょ」

 「えい」

 停止するなり祐一と真琴はキャリアの二台から飛び降り、岸壁へと走る。

 肉眼で黒いレイバーを確認するためだ。

 そして同時にけろぴーを乗せた一号キャリアがいつでも出撃できるようデッキアップした。

 むろんバッテリーはチャージ中のままだ。

 「ちょっと!! 何も見えないじゃないの!!」

 岸壁へ出ようとした祐一と真琴であったが、高いフェンスと堤防が立ちはだかり、海が見えない。

 怒り狂う真琴とは対照的に落ち着き払った祐一は名雪に確認した。

 「名雪、何か見えるか?」

 『ちょっと待ってね』

 少しでも多く充電しようとカットしていた電源を入れ、センサーで周囲の状況を確認する名雪。

 そして熱センサーの反応に気が付いた。

 『10時の方向に熱反応発見したよ。距離500!!』

 「10時の方向だな」

 名雪の言葉に頷いた祐一は立ちはだかっているフェンスを上り始める。

 そしてその後を真琴も続いて上がり、そしてフェンスを乗り越え堤防の上に立つと夜の海を凝視した。

 『距離400!!』

 「何も見えないわよ!!」

 「良いからしっかり見張れ!!」

 『距離300!!』

 「あう〜っ、どこにいるのよ!!」

 「だから見張れって!!」

 祐一と真琴が口論しつつ見張っていると、そこへ充電中のケーブルを引きちぎって起動したけろぴーが

 フェンスを乗り越え、堤防の上に立つ。

 「名雪!! 銃を抜け!!」

 『距離200!! で、でも……』

 「相手は化け物なんだから抜かないとやられるだけよ!!」

 『距離150!! うぅ〜、わかったよ〜」

 37mmリボルバーカノンを抜き、構えるけろぴー。

 『距離100!!』

 とその時、突然海面に水柱が上がった!!

 『目標発見!!』

 「撃て、名雪!!」

 祐一の指示に名雪はリボルバーカノンのトリガーを引き絞った。


 ズキューンー!!


 ズキューンー!!


  着弾は航跡とは大きく外れていた。

 はっきり言ってしまえばどこ狙って撃っているのだという感じだ。

 そのため真琴は祐一のインカムを奪い取ると思わず叫んだ。

 「名雪!! どこ狙って撃っているのよ!! さっさと沈めちゃいなさいよ!!」

 だがその時、祐一は気が付いた。

 「お、おい。なんか変じゃないか」

 「変って何が変なのよ!?」

 興奮した真琴は祐一に食ってかかる。

 とその瞬間、真琴も気が付いた。

 けろぴーから数十m離れた岸壁にかかっている黒い鋭いレイバーの手の存在を……。




 ズキューンー!!



  航跡に3発の銃弾を浴びせた名雪。

 だがそのいずれもが目標を捕らえるには至っていない。

 4発目の弾丸を撃ち込もうとしたその時、無線機から祐一の指示が飛び出した。

 『名雪、そいつは囮だ!! 本体は……』

 「えっ!?」

 あわてて振り返る名雪。

 とメインモニター一杯に接近する黒いレイバー……グリフォンの腕があった。



 ドガァーンー!!



 「うわぁー!!」



  グリフォンの一撃に派手に吹っ飛ばされるけろぴー。

 「名雪!! 急いで立ち上がれ!!」

 続けざまにグリフォンの攻撃があると思った祐一は叫ぶ。

 だが意に反してグリフォンは攻撃してこなかった。

 倒れたけろぴーを黙殺し、背を向けて歩き出す。

 「名雪、そいつを行かせるな!!」

 『わかっているよ!!』

 立ち上がるなり37mmリボルバーカノンを手にグリフォンを追うけろぴー。

 するとそんなけろぴーに気が付いたグリフォンは軽々と堤防の上に上った。

 「撃ちなさいよ、名雪!!」

 真琴が叫ぶが名雪はトリガーを引き絞ることが出来なかった。

 『うぅ〜、撃てないよ〜』

 「何で撃てないのよ!!」

 名雪の言葉に怒り狂う真琴。

 だが指揮者である祐一にはなぜ名雪が撃たないのかは明白だった。

 「くそっ!! 佃島の時と同じかよ!!」







  「警察は守らなくちゃいけないものがいっぱいあるから大変だね〜」

 グリフォンのコクピット内のみちるはけろぴーの様子ににやりと笑った。

 とその時、無線機から佐祐理さんの声が届いた。

 『みちる、仕上げですよ♪』








  モニターの向こう側のグリフォンが攻撃態勢を取ったのを見て取った名雪は思わず唸った。

 「うぅ〜。こうなったら突撃あるのみだよ!!」

 まるで真琴が乗り移ったかのような言葉を吐くと、名雪のかるけろぴーはグリフォンへと突貫した。

 「どりゃ〜!!」




 そして因縁の対決が始まった。








あとがき
ついに200話到達です。

で今回も「200回記念座談会」でも書こうと思い、やってみたんですがどうも自分で納得出来る物が書けず。

詰まらないだけならいざ知らず最近のSS批判になってしまったので書くのやめました。

というわけで完結まであとちょっと、がんばります。


2004.06.04


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