機動警察Kanon 第197話













  キューィン ガシャン キューィン ガシャン キューィン ガシャン



  黒いレイバー……グリフォンが舞浜大橋の上を軽やかに進んでいく、と急にその足を止めた。

 なぜならばその進路の先にはKanon一号機……けろぴーが行く手を遮るかのように仁王立ちしていたのだ。

 二機のレイバーは無言で睨み合う……と背後からもう一機のレイバーが近づいてきた。

 それはライアットガンを腰だめに構えたKanon二号機であった。

 舞浜大橋のど真ん中で三機のレイバーが対峙することとなったのである。





  「にゅにゅ〜、こんな程度で挟んだつもりなのかな?」

  この状況に全く動じないみちるが不敵に笑う。




  「これ以上先には一歩も進ませないよ!」

  名雪はいくらか緊張しながらも自らの決意を言葉にすることで勇気を奮い起こす。




  そして真琴は

 「有効射程に入った、照準良し。美汐、発砲許可ちょうだい!!」

 『発砲許可は出せません。トリガーに指をかけないように』

 美汐といつもやりとりをやっていた(苦笑)。

 「どうせ説得に応じるような相手じゃないんだから先手必勝よ!!」

 『警察官として必要最低限の義務は果たさないと犯罪になりますよ』

 「あう〜っ、それはやだ……」

 『だったら指示に従うように』

 「了解……」




   真琴と美汐のやりとりを無線で聞いていた祐一は名雪に指示を出した。

 「名雪、銃を抜け!!」

 『で、でも!!』

 「相手は第一小隊を一蹴した化け物だぞ!! ためらっている場合か!!」

 『了解だよ……』

 祐一の指示に名雪は渋々37mmリボルバーカノンを取り出し、グリフォンに照準を合わせた。






  「警察ってみーんな同じパターンばっかりでつまんない」

 前と後ろから銃を突きつけられてもみちるは全く動じなかった。

 いつものようにマイペースでいるだけだ。





  「黒いレイバーの搭乗員、直ちに機体から離れなさい。指示に従わない場合は躊躇わずに発砲します」

 美汐が拡声器でグリフォンに呼びかける。

 だが当然のごとくその指示に応じることはなかった。





  「あははは〜、緊張感あふれる良い絵ですね〜♪」

 双眼鏡で舞浜大橋上の三機のレイバーを眺めながらうれしそうな佐祐理さん。

 そんな佐祐理さんに舞はいくらか不安げな言葉を漏らした。

 「二機のKanonを同時に相手してみちるは大丈夫なの?」

 「舞は心配性ですね〜♪」

 だが舞の言葉を佐祐理さんはあっさり一蹴したのであった。

 「…………」






  「睨み合っててもゲームは始まらないしそれじゃあ始めようかな〜」

 コクピット内でみちるは呟くとフットレバーを一気に踏み込んだ。

 みちるのその操作に反応し、グリフォンは瞬時に体をひねり込むと走った。



 バァババババババ


  とても重たいレイバーとは思えないスピードでグリフォンは真琴の乗る二号機に接近する。

 だが撃つ気マンマンで、その機会を待っていた真琴には奇襲攻撃にはならなかった。

 「偉い、良く来たわね!!」

 躊躇う事無く真琴はライアットガンのトリガーを引いた。



  ズキューンー!!



  銃声とともに大気を貫いた弾丸は、だがあっさりグリフォンにかわされた。

 外れた弾丸は橋のアスファルトを抉り、大穴を開ける。

 真琴がグリフォンが動くのを確信していたように、みちるもまた真琴がトリガーを引くと確信していたのだ。

 「逃がさないわよ!!」

 ライアットガンのポンプをスライドしつつグリフォンの動きを追う真琴。

 だがグリフォンは躊躇うことなく橋からダイブし、海へと飛び込んだ。

 水中仕様のグリフォンにとっては水中は大地の上と何ら変わらなかったのだ。

 「逃げるとは卑怯な!!」

 すぐに橋の縁に二号機を寄せると、真琴は海面に浮かぶ航跡へとライアットガンをぶっ放す。



  ズキューンー!!  ズキューンー!!



  だが何の手応えもなかった。

 グリフォンはそのまま航跡を消し、暗い夜の海へと姿を消す。

 「くそっ、どこへ行ったのよ!?」

 「見えるか、名雪!?」」

 真琴同様に橋の縁に駆け寄り、37mmリボルバーカノンで海面をにらみつけていた名雪に祐一が尋ねる。

 そんな祐一の問いかけに、各種センサー情報を調べた名雪は叫んだ。

 「下だよ!! 橋の下に回り込んで来る!!」

 「下かよ」

 相手が水の中では正直言ってKanonの出る幕はほとんど無い。

 出来ることとすれば橋の上から銃で撃つぐらいだが、それも橋の下とあっては効果はほとんど無いだろう。

 だが頭に血が上った真琴にはそんな理屈は通用しなかった。



  ズキューンー!!  ズキューンー!! 

 ズキューンー!!  ズキューンー!!



  無茶なことに橋ごとグリフォンを撃つ真琴。

 このため橋には大きな穴が空き、もはやこのままでは車が走れないような状態だ。





  「何という無茶なことをするのです!!」

 思わず呆れてしまう美汐。

 だが真琴はそんなことは気にもとめなかった。

 弾丸を撃ち尽くしたライアットガンをその場に捨てると、右足から37mmリボルバーカノンを取り出し、

 自ら空けた大穴へと駆け寄る。

 「姿を現しなさいよ!!」

 37mmリボルバーカノンを海面に向けつつ叫ぶ真琴。

 すると真琴の要望通りグリフォンが姿を現した。

 だがそれはあまりに早すぎ、真琴は完全に不意をつかれた。

 まるで学校の和式トイレからにゅっと手が出るかのように海面から突き出たグリフォンの腕が真琴のKanon

 二号機の足をつかみ、一気に海面へと引きずり込む。

 「あう〜っ!!」

 真琴の必死の抵抗もむなしく、Kanon二号機は海没した。

 「真琴!!」

 あわてて真琴の支援に向かおうとする名雪。

 だが

 『動くな、名雪!! 下手に近づくとお前も引きずり込まれるぞ!!』

 指揮者である祐一の言葉に名雪は動きを止めた。

 「で、でも…真琴が……やっぱりわたしはほっとけないよ!!」

 祐一の指示を無視して名雪は舞浜大橋にでかでかと空いた大穴へと駆け寄る。

 『真琴!! 脱出しなさい!!』

 そこへ美汐の二号指揮車も走り寄る。

 「真琴!!」

 『真琴!!』

 安否の確認のため暗い夜の海を凝視する二人。

 すると夜目ににも目立つオレンジ色の特車二課の制服を着込んだ真琴が海面に姿を現した。

 「こ、こんなの卑怯よ!! 正々堂々と真琴と勝負しなさいよ!!」

 そう叫ぶ真琴ではあったがその言葉がグリフォンコクピット内のみちるに届くことはなく、そしてグリフォン

 は再び夜の海へと姿を消したのであった。






あとがき
二日連続更新はなんだか久しぶりのような気がします。

まあ明日は仕事ですので三日連続は絶対に無理ですが。

それにしてもみちるの口調が久しぶり過ぎて全然覚えていません。

違和感有りまくりで……どうしましょう?



2004.05.18

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