機動警察Kanon第150話

 

 

 

 「サイレン起動」

舞の指示の元、TYPE SL-08「サイレン」が起動した。

そして真っ暗な東京湾へと突き進んでいく。

 

 

 

 「…おそらく21時に 今日二回目の発信がある。発信時間は三分、一秒足りとも無駄ダメ」

『了解しました』

サイレンはライトをつけると真っ暗な海の底へと潜っていく。

その様子を確認した舞はASURA回収のために配置についている部下に状況を確認した。

「らふれしあ号の碧川、中央防波堤の明石。まもなく発信が始まる。範囲確認の準備はいい?」

『らふれしあ号、準備よし』

『中央防波堤、OKです』

これの二カ所のみならずサイレンのセンサーも加わればかなり正確な位置が特定できる。

「サイレン。佐祐理のためにASURAを見つけて」

そうつぶやいた舞にサイレンのパイロットから海中の状況が報告されてきた。

『ヘドロがひどいです…もしもこの下に埋まってたら見つけ出すのはかなり困難かと……』

「焦らない」

舞はパイロットをたしなめた。

「発信時間は三分もある。サイレンのセンサーは優秀だから平気、ASURAを見つけられる」

『はい…もう少しメンテナンスベースに近づいてみます』

「まかせる」

 

 もはや舞にできることは黙って見守り続けるだけ。

一言もしゃべらずにじっとする舞。やがてその時は来た。

 

 

 

 「!?」

 

 「あれ!?」

 

らふれしあ号船上の碧川、中央防波堤の明石。

二人とも発信したASURAの位置に驚きの声を上げた。

 

 

 『課長代理、今朝の測定時と位置が違います!』

「本当!?」

中央防波堤の明石の報告に驚いて思わず聞き返す舞。だがらふれしあ号船上の碧川も肯定した。

『間違いありません。もっと東、若洲水門の近くです!!』

「…サイレン?」

『こっちでも確認しました。確かに発信源は後ろです』

三カ所の測定位置すべてが朝の測定位置とは違う位置であることを示している。

となればなぜかはわからないがASURAは移動したのであろう。

「…すみやかにASURAの回収急いで」

『わかりました』

 

 しかしサイレンがASURAを回収することは出来なかった。

 

 

 

 ガボン

 

 「川澄さん!! サイレンの様子がおかしい!!」

その声に舞があわてて駆け寄り、海を見ると海面にボコボコと盛り上がっている。

そこはメンテナンスベースのすぐそば……サイレンがいる位置だ。

「いったい何事!?」

だが誰も答えられるはずがない。

舞はあわてて無線機を取り出すとサイレンのパイロットに現状を尋ねた。

「サイレン! いったい何があったの!?」

『何かに後ろから衝突されました…そいつが関節に絡まって……』

「ちぎれる?」

そう尋ねる舞。だが帰ってきた返事は芳しい物ではなかった。

『やっていますが…こいつはその…なんというか…怪物だ! 畜生!!」

「怪物!?」

 

 

 そうこうしているうちに三分という時間が経っていた。

 

 『川澄さん…発信が終わりました』

「…わかった」

らふれしあ号の碧川からの報告に舞はうなずくと再び無線機を手にした。

「サイレン、動ける?」

『動力パイプがやられています。左半身が動きません。ポンプもダメです』

「…しかたがない。機体を捨て脱出して」

『はい…』

サイレンのパイロットとの交信を終えた舞は無言のまま剣を取り出した。

「か、川澄さん!?」

「課長代理!!」

騒ぐ部下を尻目に舞は鬱憤晴らしに剣で地面を思いっきりたたきつけるときっとした。

「これではっきりした。ASURAのそばには敵がいる」

 

 

 

 

 

 場所も日にちも変わった翌日。

今や特車二課所属の捜査員になってしまった感のある国崎往人部長刑事と神尾観鈴巡査の二人はメンテナンスベースの件で捜査に当たっていた。

 

 

 「にははは〜。往人さん、久しぶりの出番だね♪」

はしゃぐ観鈴に往人はたしなめた。

「悲しくなるからそれは言うな。それよりも仕事だ」

「え〜っと帝都大生物学部の池永先生は終わったから次は?」

「監察医務局に行ってくる」

往人がそういうと観鈴はイヤそうな顔をした。

「が、がお。観鈴ちん、ピ〜ンチ」

ポカッ

お約束の往人の一発に涙目になりながら観鈴は文句を言った。

「ど、どうしてそういうことするかな?」

「お約束だ、気にするな。それよりピンチとはどういうことだ?」

「えっ、だって監察医務局って言ったら…あれだよね?」

「…なるほど。観鈴が何をいやがっているのかわかった」

「じゃ、じゃあ!」

「却下」

「うぅ〜」

「捜査の状況を水瀬警部補に報告するんだ。ほれ、しゃきしゃき行くぞ」

「わかったよ〜」

 

 

 

 

 

 チリリリー チリリリー

 

 「はい、こちら特車二課です」

けたたましく鳴る隊長室の電話、それに出た秋子さんの耳に聞き慣れた声が届いた。

『水瀬警部補ですか。国崎ですが』

それは広域犯罪捜査官の国崎往人部長刑事の声であった。

観鈴を相手にしているときとは違ってえらく丁寧な口調…秋子さんの実力がよくわかるらしい。

「あら、往人さんじゃないですか。お元気ですか?」

『それだけが取り柄ですんで』

「それは良かったわ」

秋子さんはうれしそうに笑った。

「ところで捜査状況はどうなのかしら?」

『…芳しくないです』

「芳しくないと言うのは?」

『背後関係とか事件の動機うんぬん以前に正体が不明でどうしようもないんですよ』

「それじゃあこの件に関しての記者会見とかは…」

『肉片の分析がまだということなんでもう少し後になるかと』

「そんな悠長なこと言っていて良いんですか?」

秋子さんの言葉に往人は困った。

『俺に言われても困るんですが……』

「そうですね、すいません。とにかく捜査の方、がんばってくださいね」

『任せておいてください』

 

 

 

 

 

 「はぁ〜」

秋子さんへの連絡を終えた往人はため息をつきながら携帯電話を切る。

するとどろーり濃厚ピーチ味を飲んでいた観鈴が不思議そうに尋ねてきた。

「往人さん、どうしたの?」

「ん? いや、捜査が全く進まないことに不甲斐なさを感じていたんだ」

「にははは〜、そうだよね。手がかりが全然ないんだもん、わからないよ〜」

笑いながらそう言った観鈴に往人は叫んだ。

「笑い事じゃないぞ! これから夏が近づき暑くなってくるんだ!!

東京だけじゃない、千葉や神奈川! 東京湾で水遊びするやつはまだいるんだぞ!!」

「そんなことわかってるよ…でも……」

「くそ! このまま市民を危険にさらしておけっていうのかよ……」

 

 

 だが一介の警察官にはこの現状をどうすること出来ないのであった。

 

 

 

 

あとがき

こんぺ用のSS書いていたんで間があいてしまってすいません。

機動警察Kanon第150話、お届けします。

しかし久しぶりに往人と観鈴だせたな…。

 

 

2002.09.17    日朝首脳会談の日に

 

 

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