機動警察Kanon第140話

 

 

 

 企画七課がASURA捜索の為、東京湾に潜ってから数日後。

その日は雨が降りしきっていた……。

 

 

 「三ヶ月……」

課長代理こと川澄舞はグリフォン開発責任者の一人からの説明に暗澹した表情を浮かべた。

「あくまでも最短に見積もった場合ですが……。

我々としてもグリフォンがこれほど長期に渡って海に沈むとは想像していませんでしたので……」

弁解する開発責任者、だが舞は叱責を与えようとはしなかった。

「それはそう…。今や生きているのがASURAの発信器だけとはいえグリフォンに搭載している電池はよく頑張っていると思う…」

「ですから! 少しでも早く…出来るなら三ヶ月以内にASURAを引き上げないと所在範囲を見失うおそれがあります!!」

その言葉に舞は一回うなずき、だがその後、首を横に振った。

「残念だけど何が起こっているのか分からない以上、海中探索は行えない。

現にダイバーが二人、潜ったまま帰ってこなかった」

「それは聞いています。何でもアメリカ海軍の特務艦が動いていたとか…」

「はちみつくまさん」

「もしやUSA社の方で独自に動いているというセンは? みちるもあちらの手にあることですし」

「それなら佐祐理からこちに情報が入っくるはず。

USA社の方はこちらが用意した赤ん坊同然のソフトで満足していると思う。

それに私の勘だけどあの特務艦はASURA以外のことで動いていた気がする…。

それが何かまではわからないけど」

「………」

こういうことは分からない開発責任者は無言になってしまう。

「三ヶ月か…」

ただ舞は考え込むのであった。

 

 

 

 そしてそのころ社団法人東都生物工学研究所では…

「そうか…13号はとうとう揚がらなかったか…」

落胆する研究所所長の来栖、その来栖に貴島和宏はうなだれた。

「申し訳ありません、所長。フロンティア05便があんなことになるとは……。手配した私の責任です」

「墜落の責任まで問うりゃせんわ。事故なんぞ予想できるわきゃないからな。

それよりも気になるのは引き上げられたコンテナの状態だ。

密閉状態ならばかなりの衝撃に耐えられるはずのあのコンテナが酷い有様だった。

誰かが機内でコンテナを開けたんじゃないのか?」

所長の言葉に貴島ははっとした。

「同乗していた及川がですか? 何のために?」

だが来栖はそれには直接答えなかった。

「彼の遺体はなぜ戻ってこないのだね?」

「その…なにか遺体に問題があるとかで…。

あまりしつこく問い合わせるとこちらのことを訊かれそうですし…」

貴島がそこまで話したとき、その場にいたもう一人…望月綾芽が口を開いた。

「貴島くん、肝心なことは一つだけ…13号は警察や海上保安庁の手には渡っていないのね?」

「それは…今のところ大丈夫。先のことは分からないが……」

 

 「「「…………」」」

三人の間に重々しい雰囲気が漂う…。

 

やがてその雰囲気に耐えられなくなったのであろう。

所長である来栖がその雰囲気を吹き払うかのように言った。

「コンテナがあの有様では13号のカプセルも破損していると見ていいだろう」

その言葉に貴島はうなずいた。

「はい、中身は海に流出したと…」

「残念だが13号は魚の餌に終わったか」

心底残念そうな来栖、すると突然来栖のデスク上の電話が鳴った。

「はい、来栖だ」

『所長ですか。バッケンジー氏がお見えになっていますが』

「わかった、今行く」

受話器を置くと来栖は綾芽・貴島の二人に行った。

「まあそう言うわけだから私は行く。後のことは任せた」

「承知しました、所長」

「承知したわ」

 

 

 そして来栖は所長室を出るとバッケンジー氏を待たせている応接室へと向かった。

 

 

 

 「やあ大佐、雨の中を何のご用件かな?」

手を差し出しながら来栖がそう言うと大佐はその手を握りかえした。

「プロフェッサー来栖、今日は短刀を直輸入にお訊きしたいのですが13号はどうなっていますか?

輸送機が墜落してからこちら、私たちには何の情報も入ってきていません」

「…残念ながら未だ発見されていない。まだ…東京湾の底に沈んでいるはずだよ」

「そうですか。実は私たちも独自に捜索してみたのですがやはり13号は発見できませんでした」

大佐のその言葉に来栖は呆れた。

「呆れたもんだ! 君たちは東京湾で軍艦を運用したのか!?」

だが大佐は気にせず続けた。

「プロフェッサー…13号は絶望ですか?」

「おそらくな」

来栖はコクンとうなずいた。

「『WASTE(廃棄物)』という暗号名通りの扱いをするしかあるまい」

「残念です」

がっくりした表情の大佐、だがそれは来栖とて同じことだった。

「残念なのは私も同様だよ。しかしこうなってしまってはやもえん。

11号までの標本と12号で実験を続けるつもりだ」

「12号はまだ生きているのですか!?」

驚きを隠せないでいる大佐に来栖はうなずいた。

「すでに虫の息だがね。来たまえ、見ていくといい」

 

 

 

 「12号は惜しかったな」

そう言う来栖の目の前には強化ガラスで出来た大きな水槽が…そしてその中には何やら奇妙な生物が漂っていた。

「こいつはもう少しで地上に上がれる姿になれるのにそろそろ寿命なんだ。

13号はもう少し強靱な個体と聞いていたから楽しみにしていたんだが」

「プロフェッサー…」

「ん、何だね?」

大佐からの質問に聞き返す来栖。すると大佐は真剣な表情で尋ねてきた。

「もしも…もしもですが13号が海中で生きていたとしてこのような形から地上にはい上がってくるまでどれくらいの期間が必要ですか?」

「…もし生きていたらの話だが…それほど長くはかかるまい。三ヶ月だ」

 

 

 

 

 そしてそれから一ヶ月あまりの月日が流れた……。

 

  「東京湾は死にかけているぞ〜!!」

「子供たちに自然の海を返せ!!」

「東京湾を救え!!!」

何千何万という群衆が各の主張を書いたプラカードを手に町をうねり歩いていた。

上は今にも死にかけた老人から下は生まれたばかりで親に連れられた赤子まで。

おそらくは仕事や生活、その全てに置いて共通点のない様々な人たち。

そんな人々がただ一つのスローガンを合い言葉にここ東京に結集していたのだ。

そのスローガンとは…ずばり「バビロンプロジェクト」反対。

 

 そして特車二課第二小隊の隊員たちはそのデモ警備に当たっていたのだ。

 

 

 「はぁ〜」

名雪はけろぴーのコクピット内で大きなため息をつき、そして呟いた。

「うぅ〜、何か違うよ〜」

すると名雪の呟き声を聞き止めたのであろう、祐一が尋ねてきた。

『何が違うんだ? ただ立っているだけだからって気を抜くなよ。

もうすぐレイバーが来るんだからな』

確かに祐一の言うとおりトラックの載せられたレイバーが数台デモに参加中だ。

それ故に第二小隊の出動がかったのだろう…しかし…

「だってこの状況で何をしろって言うんだよ〜」

この見渡す限り人人人の状況では警視庁が誇るKanonといえども周囲に被害を及ばずに処理することなど不可能。

よって第二小隊が出張ってくる必要もないはずなのだ。

『指揮官の命令は絶対服従、何とかしろ』

「絶対無理だよ〜」

『無理でもやれ』

「うぅ〜」

 

 

そしてそんなやりとりから数分後…

 

 

「ねえ祐一、この回線指揮車にしか行っていないよね?」

名雪はまた祐一に話しかけた。

『それが何だ?』

「わたし…こんなことしたくて特車二課に入ったんじゃないよ〜」

『しかたがない、これも仕事だ。二時間も立っていれば終わる、辛抱しろ』

「そんなこと聞いているんじゃないよ〜。

わたしが言いたいのは犯罪者でもない人たちを威圧的に見下ろすような仕事が好きになれないんだよ〜」

『職務に好きも嫌いもないからな。まあ我々税金で養われている公僕として暴動が発生しないよう警備に当たるのも大事なお仕事だ』

「それはわかっているけど…」

『わかっているのなら納得しろ』

「納得できないよ〜。それに最近こういう必要性もないようなお仕事ばっか増えている気がしない?」

『良かったじゃないか。戦力として認めてもらったのかもよ』

だが名雪は首を横に振った。

「とてもそんな風には見えないよ〜。まるでヒマな時間を作らせないようにしているみたい」

すると意外なことに祐一は同意した。

『そりゃあたぶん当たりだな。さして必要とも思えない警備にかり出すなんて。

まあ、あの姑息な課長にはお似合いなやり口だけどよ』

「うぅ〜、いつまでこんあことしなくちゃいけないんだろう?」

『人の噂は七十五日っていうし…まああと二ヶ月は覚悟していた方が良いんじゃないのか?』

「だぉ〜!!」

 

 

 

かくしてしばらくの間、特車二課…特に第二小隊は激務が予想されるのであった。

 

 

 

 

 

あとがき

しばらくというかちょいコネタ挟みます。

13号の活躍はそれ以降ですのでおしばらくお待ちを。

それはそうと冴子さん役ですがおね2の望月綾芽嬢、その相棒を貴島和宏が。

台詞のない哀れな彼は及川穣が勤めてます。

所長はどうしよう?とも思ったんですが適切なキャラが思いつかなかったので原作まんまです。

 

 

 

2002.07.21

 

 

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