機動警察Kanon第116話

 

 

 

 「では倉田とグリフォンの保護……と同時にグリフォンを倉田から引き取る。

これが任務でよろしいですね」

男の言葉にSEJ専務の徳永は頷いた。

「ああそうだ。あの女にオモチャを持たせておくと何をしでかすか皆目見当がつかん。

手段は問わないので上手くやってくれ」

「了解しました」

男は頷くと帽子を被り、きっぱり言い切った。

「我が『シャフト・セキュリティ・システム』にお任せください」

 

 

 専務の元を辞したSSS司令はすぐさま倉田&グリフォン捕獲の指示を与える。

「水戸支社から二個分隊出撃させろ。一隊は直接土浦へ、もう一隊は鹿島港を固めさせる。こちらは常磐道を下って倉田を出迎える」

「了解しました」

隊長は司令の指示をすぐさま現場へと伝える。

その姿を見た司令は指揮車へと乗り込もうとし、ふと気が付くともう一度隊長に指示を与えた。

「鮫島くん、現場の指示は君がとりたまえ」

「はっ!」

頷く隊長の鮫島、そんな彼に司令は言った。

「いいな、警察とのトラブルは絶対に避けろ。金だけでは解決できないこともあるからな」

「メンツをつぶさなければいいのでしょう」

「その通りだ。それが分かっていれば大丈夫だな、あとの細かいことは任せる」

「はっ!!」

そして司令は指揮車の中へと消えた。

その姿を見送った鮫島は麾下に指示を出す。

「こちら本部、こちら本部。セキュリティシステム特務部隊へ。これより土浦研究所の警備に向かう」

 

 

 

 「セキュリティシステムの動きは分かったか?」

企画七課の明石の言葉に無線を傍受していた翠川は頷いた。

「土浦研究所の警備とか言っているわ」

「土浦研究所の警備? それなら連中がわざわざ出ていくことはないよ。

ちゃんとガードマンがいるじゃないか」

「といわれてもそう言っているんだから仕方がないでしょ」

「ふむ……」

考え込む明石、がすぐに決断した。

「よし、課長に連絡入れておこう。早いところ土浦を出た方が良さそうだ」

そして電話の受話器を取るとダイヤルする明石。

しかし電話をかけても繋がらない、というかツツー音すら鳴らない。

電話線が繋がっていないのだ。

「どうしたんです?」

「繋がらないんだ」

「それでは携帯で連絡したらどうです?」

「そうするか」

しかし携帯電話も圏外であり、土浦研究所に連絡をとる事は不可能だった。

 

 

 「本当にいいんですか?

これで企画七課の通信回線は全てカットしましたけど火事でもあったら大変ですよ」

本社管制御室の男の言葉にセキュリティサービスの男は頷いた。

「何、今夜いっぱい切っておいてくれればいいんだ」

そして制御室の電話を取ると男は電話する。

 

 

 『こちら制御室、倉田と企画七課を切り離しました』

制御室からの連絡に鮫島は満足げに頷いた。

「よし、そのままお前達は企画七課の人間が外に出ないよう見張っていろ」

『了解しました。実力行使は構わないですか?』

「肯定だ。死なない程度なら幾らでも痛めつけてやれ」

そして鮫島は受話器を置くと隊長に言った。

「司令、これよりセキュリティシステムは土浦研究所に向け出発します」

「うむ、任せた」

 

 こうして佐祐理さん&グリフォン捕獲のためシャフトの犬たちが動き始めた。

 

 

 

 ゴォオオオオー ゴォオオオオー

 

 一台、また一台と巨大なトレーラーが首都高を走り抜けていく。

そのトレーラーを見た救急車の運転手はぼっそり呟いた。

「ずいぶん威圧的なトレーラーが通るな」

「シャフト・セキュリティ・システム。通称SSSですね」

背後からの声に運転手は感心する。

「へぇ〜、知っているんですか。さすが警察官ですね」

そう言われた天野美汐巡査部長は顔色一つ変えずに頷いた。

「日本ではあまりよくは知られていませんが香港・東南アジアでは猛威をふるいました。

悪名高い警備会社ですよ」

「そんな危ない会社なんですか。知りませんでしたよ」

しかし美汐は運転手の言葉など無視して考え込んだ。

(SSSが日本で一体何をするつもりなのでしょう? まさかリリー・田の関係!?)

 

 

 

 「徳永専務! SSSまで動かして一体何をするつもりだ!!」

専務室のドアを勢いよく開いて飛び込んできた平光常務は叫んだ。

しかしその言葉に徳永専務は平然と答えた。

「何、倉田を大人しくさせるだけだ」

「社長の判断を仰いだのか!?」

「社長の?」

徳永専務は顔色一つ変えずに首を横に振った。

「平光、貴様は社長のやり方を指をくわえて眺めていろというのか。

このままだと社は倉田の遊び場で終わるぞ!」

「し、しかしだな。SSSはやりすぎだ」

「やりすぎなものか。SSSは基本的に我が社を守るためにのみ存在しているのだぞ。

それが今働かないでいつ動いて貰おうというのだ!!」

 

 

 

 「あははは〜っ、すっかり専務の信頼無くしてしまいましたね♪」

土浦研究所を出て東京に向かおうとロビーに降りてきた佐祐理さんはいつもの笑顔でそう言った。

すると舞が冷静に突っ込んだ。

「……始めから信用されていなかった?」

「ふぇ〜、舞ったら酷いこと言いますね〜」

「…ごめん。でも事実」

そんなやりとりを楽しそうにしている二人。

がその目の前に土浦研究所のガードマンが立ちはだかった。

「倉田課長、申し訳ありませんがしばらく外へ出ないでいただけないでしょうか?」

「ふぇ〜、何ですって? それは困りましたね。佐祐理はこれから東京に戻らないといけないんですけど」

しかしガードマンはきっぱり断った。

「申し訳ありません。これも上司の命令なものですので……」

すでに回りは7.8人のガードマンによって取り囲まれている。

「…舞、部屋にもどりましょう」

「……はちみつくまさん。殴られるのはご免だし」

そこで来た道を戻り始める二人。

その回りをガードマンがびっちりと取り囲む。

 

 「それにしても佐祐理たちに一体何の用事があるんでしょうね〜♪」

「さあ? 生憎と伺っていないので……」

佐祐理さんは明るい笑顔でガードマンに話しかける。

なんせ佐祐理さんはとびっきりの美人だから周囲を固めており警備員も悪い気はしない。

ついつい話に乗ってしまう。

そのため一瞬の隙が出来た。

 

 ドガッ!

舞がすぐ後ろに控えていたガードマンに強力なひじうちを食らわす。

あまりに強力な一撃はそのままガードマンを気絶させる。

「佐祐理!!」

「わかりました♪」

その場に素早く伏せる佐祐理さん。

そして舞はどこからとも無く取りだした日本刀をふるう。

「ギャア!!」

「や、やられた……」

「お、お母さん……」

「………」

「たかが女にやられるとは……無念」

「あうぐぅ……」

あっという間にその場にいたガードマンは全員舞によって切り伏せられる。

「…私は佐祐理の敵を討つ者だから…」

格好良く決めると手早く鞘に刀を収める舞。

そして床に伏せていた佐祐理さんに手をさしのべる。

「佐祐理、大丈夫?」

「あははは〜っ、もちろんですよ〜♪それにしても舞はすごいですね〜。

あっという間にこれだけの人数を殺ちゃうんですから」

「……殺してはいない。みんな峰打ち」

「舞はやさしいんですね〜。それより急ぎましょう」

「はちみつくまさん」

そして運動神経の良い二人はその場から走り去った。

 

 

 

 「積み込みは終わりましたけどどうするんです、チーフ? 本当に一緒に行くんですか?」

開発スタッフの一人の言葉にチーフは苦笑した。

「ボクらが行かないとグリフォンが動かないからね」

「なにもこんなやばい仕事に付き合わなくても……」

「あーゆー人たちと関わりを持っちゃったのが身の不幸だ。こうなったら最後まで付き合うしかないよ」

「……それって悲惨ですね」

「まあね。それにしても倉田課長、遅いな。早くでないと……」

すると彼らのいた車庫の扉が勢いよく開いた。

「あははは〜っ、お待たせしました。それじゃあ出発しましょう♪

早くしないとSSSに道を塞がれてしまいまいますよ」

 

 かくして佐祐理さんの行動は関係者に大きな衝撃をもたらした。

 

 

 

 「隊長!! 土浦の警備員からです」

「わかった」

部下から無線のマイクを受け取る鮫島。

そして土浦研究所のガードマンからの報告に鮫島は驚いた。

「倉田が土浦を強引に突破した!? バカな!!」

あっという間に特殊部隊全員に動揺が広がる。

しかしSSS司令は一人違っていた。

「おもしろい、なかなか勘の鋭い女じゃないか」

なかなかやりごたえのありそうな獲物に司令は舌なめずりをするのであった。

 

 

 「ば、ばかな!! 倉田め…開き直るつもりか!?」

 

 

 

 「あははは〜っ、北北西に進路をとりましょう〜♪」

「佐祐理、向きが違う。映画じゃないんだから」

「はぇ〜、間違えちゃいました。東京に進路をとりましょう〜♪」

 

 かくして決戦の時は迫る。

 

 

 

あとがき

特車二課の面々の出番が少なかったですね。

美汐一人出てきただけでした〜♪

 

 

2002.04.17

 

 

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