機動警察Kanon第106話

 




 

 

 立派な先生も忙しさのあまり走り回る師走。

誰もが仕事納めや何やらで忙しいにもかかわらず国際レイバーショーは年末に開かれる。

その国際レイバーショー。

「一体何考えているんだ?」という批判を受けつつ開かれ続けて今年で早三回目。

年々その規模も拡大し、今年からは晴海ではなく幕張で行われることが決定。

そして我らが特車二課第2小隊もこの警備のため出動する運びと相成ったのでありました。

 

 

 

 「上層部から警備命令が出ました。

というわけで12月17日から23日まで幕張メッセで開催される国際レイバーショー。

特車二課第2小隊は一週間この警備に当たります」

秋子さんの言葉に第2小隊の面々は目を丸くした。

「…警備命令ですか?」

美汐がそう尋ねると秋子さんは頷いた。

「ええ、そうよ。

なんでも公安の方で地球防衛軍・海の家・クリーンピース等テロリストの活動予告を掴んだらしいのよ。

で場所が場所でしょう。そう言うわけで私たちに警備命令が下ったのよ」

「それじゃあ量産機、わざわざ休みを取らなくても見に行けますね、名雪さん」

栞の言葉に歓声を上げる名雪。

「やったんだぉ〜!!」

「うぐぅ、でも23日がお仕事だと名雪さんの誕生日会どうすればいいの?」

あゆの言葉に真琴は自らの欲望に忠実な意見を言った。

「あう〜っ、真琴秋子さんの肉まんいっぱい食べたかったのに〜」

「…真琴の誕生日じゃなくて名雪さんの誕生日なんですよ」

たしなめる美汐。だが真琴には効かなかった。

「でもこの間の美汐の時は肉まんいっぱいあったじゃない〜。

真琴、秋子さんの肉まん食べたいよ〜」

「それはケーキだと思いますよ、真琴さん」

「お母さ〜ん、ケーキにはイチゴいっぱいよろしくね〜」

「…別に二課に戻ってきてからやればいいだけの話だろ。何なら非番の日にでも」

祐一の言葉にポンと手を叩き、納得という表情を浮かべる四人。

「そういえばそうですね、。さすが祐一さんです」

「うぐぅ〜、ボク考えもしなかったよ」

「肉まん♪ 肉まん♪」

「イチゴ♪ イチゴ♪」

「お前ら何を考えているんだ?」

「不本意ながら同感です」

Kanon操縦手二人にあきれ顔の指揮者二人なのであった。

 




 

 

 そして12月17日。

とうとう国際レイバーショーが華々しく開幕した。

例年ならばレイバーの関係者、例えばメーカー・建築会社の人間を中心に一部マニアが集まるこのショー。

しかし今年は違っていた。

テロリストの活動予告を掴んだためであろう。

主催者側が用意した警備員のみならず制服の警察官が随所で警戒、さらに私服警官も潜り込んでいる。

会場へと続く道も随所で検問、上空には警察のヘリも飛び交っている。

まさに厳戒態勢の中、第三回国際レイバーショーは開かれたのである。

 

 

 

 「お〜い、危ないことしているな。何か見えるのか?」

警備本部からロケ弁ならぬ警備弁を人数分受け取ってきた祐一は、ケロピーの肩に乗り、会場を

覗き込んでいる名雪に声をかけた。

会場の中に視線が釘付けの名雪は答えた。

「SEEのTYPE−7がいるんだよ〜」

それを聞いた祐一は「ヒュ〜」と口笛を吹いた。

「なるほどね。うちに警備命令が出るわけだ」

「どうしてですか、祐一さん?」

不思議そうな顔をする栞。

「だって盗みに来るならやはりレイバーだろ。それより名雪、さっさとそこから降りてこいよ。

昼飯食ったら俺たちも見学しに行こうぜ」

急かす祐一を栞はたしなめた。

「祐一さん、別に急がなくても良いじゃないですか。

どうせ一週間はここから出ることはないんですから」

 

 

 

 会場の中には様々な新型のレイバーが展示されていた。

Key重工・菱井インダストリー・目立造船・皮崎重工・シャフトエンタープライズ・マナベ・トヨハタ・淵山・菱川などなど。

国内外の大手から中小まで。

まさに世界中の新型レイバーが一堂に会しているようなものである。






 

 そんな中、真琴とあゆは会場内を散策中であった。

「どうして土木機械に水着の姉ちゃんがはりついているのよ〜」

確かに真琴の言うとおり、どのレイバーにも水着の姉ちゃんが張り付いていた。

しかしあゆは全く気にしなかった。

「うぐぅ、ボクは別に目くじら立てる事じゃないと思うよ。華やかで良いんじゃない?」

「だってテロリストから脅迫が来ているの浮かれて!!」

「ボクはこういうの大歓迎だよ」

「うぐぅは黙っていなさいよ!! どうせ見てくれだけのバカばっかなんでしょ〜」

真琴はそう言う。

しかしその側ではそのバカのはずのモデルが真琴にも分からない専門知識を駆使してメーカーの

人間に説明しているところであった。

「うぐぅ、最近のモデルさんは質が高いんだよ」

「あう〜っ、何だかとっても不愉快……」





 

 

 「ごちそうさまでした〜」

キャリアの助手席で警備弁を食べ終えた名雪。

そしてちょっとだけ不満を漏らした。

「やっぱり既製品のお弁当っていまいちだよね」

すると同じく弁当を食べ終えていた祐一が反論した。

「お前な。確かにそうかもしれないがタダ飯だぞ。贅沢言うな」

「で、でも〜」

「秋子さんの料理に比べればどんな料理でも劣るに決まっているだろ」

「そうか、それもそうだよね」

思わず納得する名雪。

「それじゃあ見学しに行くか?」

祐一がそう言うと名雪は首を横に振った。

「ダメだよ〜。まだ真琴とあゆちゃん、帰っていないんだよ。

ちゃんと引き継がなくっちゃ……って真琴たち遅いね。何しているんだろう?」

「俺が知るか」

祐一がそう答えたまさにその時、キャリアのドアが開き、真琴が帰ってきた。

「今帰ったわよ」

しかしなんだか不満たっぷりの様子だ。そこで名雪は真琴に尋ねてみた。

「どうしたの、真琴?何か不機嫌そうだけど」

その問いかけに真琴は答えず逆に名雪に聞き返した。

「名雪、リニア・アクチェーターが何だか言ってみなさいよ〜」

「? Kanonの関節駆動システムの基本メカニズムだよね?」

「その利点は何よ〜!」

「えっ!? え〜っとえ〜っと何だっけ?」

名雪の言葉に真琴は憤慨した。

「しっかり勉強しておきなさいよ!! 今日日水着の姉ちゃんだってそれくらい答えられるんだから〜!!」

「分かったよ。でもそう言う真琴は分かってるの?」

「…え〜っと」

「ねえ、ねえったら」

「…さ〜て、任務任務」

どうやら真琴本人もわかっていなかったらしい。

聞こえない振りをして名雪の前を立ち去ったのだった。

「…真琴、何が言いたかったんだろう?」

頭の中に?がありまくりの名雪。

そんな相棒を無視して祐一はキャリアを降りると真琴と一緒に帰ってきたあゆに声をかけた。

「よっ!! あゆあゆ。お帰り〜」

「うぐぅ、ボクあゆあゆじゃないよ〜!!」

「些細なことはさておき何か面白い物あったか?」

「うぐぅ、祐一くん意地悪だよ……って例の量産機っていうのが展示されていたよ」





 

 

 

 「写真で見たのとちょっと違うね」

量産機ことAVS−99の足下で機体を見上げながらそう言う名雪。

そんな名雪に祐一は解説した。

「出品前に細部変更をやったんだろ。それよりも見た目は悪くはなさそうじゃないか」

「外面だけじゃ良いか悪いかなんか分からないよ〜」

「それもそうだよな〜」

思わず納得する祐一。

その時AVS−99の足下にいる水着の姉ちゃんが機体についての説明をし始めた。

「動作ブロックごとに装備されたコントロールターミナルでセンサー・データのフィードバックをバクグラウンド…」

しかし

「うにゅ〜、難しくて何を言っているのか分からないよ〜」

「脳みそ溶けそう……」

と専門家であるはずの二人は理解できない。

いかに日頃勉強をさぼっているのかがよく分かる状況だ。

その時、AVS−99を見物していた一人が水着の姉ちゃんに質問した。

「あははは〜、佐祐理はちょっと頭が悪いですからよく分からないんですけど、それってKanon並の性能を

量産機でも実現したということなんですか?♪」

「にゃはは〜、恰好悪いぞ」

「はぁ!?」

予想だにしていなかた質問に思わず戸惑ってしまう水着の姉ちゃん。

しかし質問は続いた。

「具体的に言うとですね、重量級のTYPE7あたりと互角にやり合えるのか、って聞いているんですよ♪」

「にやはは〜、恰好悪いぞ」

「ええっと……」

完全に水着の姉ちゃんは答えられない、というかメーカーの人間でもたぶん答えられないであろう。

しかし端から聞いていた名雪にとってはまさに核心を突く質問だ。

だから名雪もその質問に加わった。

「そうだぉ〜、そうだぉ〜。それをはっきりして貰わないと使えないんだぉ〜!!」

「にやはは〜、恰好悪いぞ」

「あれ?」

妙に聞き覚えのある声だと言うことに気が付き名雪、そして祐一は声のした方向に視線をやった。

「「「「おおっ!?」」」」

 

そして同時に4つの声がはもったのであった。

 

 

 

あとがき

いよいよグリフォン編突入です♪

当然最後に出てきた二人はあの人とあの人です。

そsれにしてもここまで来るのに一年以上かかっているのか・・・・。

来年の今頃完結しているかな?

 

 

2002.03.09

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