機動警察Kanon第104話

 

 

 

 「あうぅ〜!!!」

「うぐぅ〜!!!」

 

 突然スピーカーから流れてきた真琴とあゆの絶叫に思わず驚く二課の面々。

完全に動きが止まってしまう。

しかしさすが秋子さんであった。

すぐに

「北川さん!! すぐに状況確認を!!」

と的確な指示を出す。

「は、はい!!」

その秋子さんの指示に北川はすぐに無線で呼びかける。

「真琴ちゃんにあゆちゃん!! どうした!? 何があった!?」

しかし真琴もあゆも一切返事を返しては来なかった。

ただ「ザーッ」という音がスピーカーから流れてくるのみであった。






 

 

 

 「あゆちゃんたちの身に何か起こったのは間違いありません」

秋子さんの言葉に祐一・名雪・栞・美汐も4人は頷いた。

無線の途切れ方から言えばまともな状況ではないことは明確だったからだ。

「地下では一体何が起こっているんだ!?」

「うにゅ、真琴とあゆちゃん大丈夫かな?」

「えぅ〜、二人が心配です〜」

「こんな酷な事はないでしょう」

それぞれ現在の状況に感想を漏らす。

すると秋子さんは満足げに頷くと言い切った。

「というわけであゆちゃんと真琴の二人を救出に向かいます」

「…地下で何が起こっていいるのか分からないのにですか?」

冷静な美汐の言葉だ。

すると秋子さんは頷いた。

「まさか二人を見捨てるわけには行かないでしょ」

「それはそうです。しかし状況も不明なまま地下に潜っても二重遭難するばかりだと思います」

美汐の言葉に祐一・名雪・栞はうんうんとまた頷いた。

「そうだよな。鬼に金棒、真琴に銃。この二つが組み合わさったっていうのに敵わない相手だろう。

俺たち程度じゃなあ……」

「そうだよ! それにあゆちゃんの特攻は二課一なんだよ!!」

「そんなこと言う人嫌いです」

四人の言葉に秋子さんはポケットから瓶を取り出しにっこり微笑んだ。

「行ってくれますよね?」

「「「「了解・・・・」」」」

四人は首を縦に振らざるをえなかった。

 

 

 

 「仕方がないので行きますけどね、秋子さん」

祐一は不満ではあったが謎ジャムに屈服したために地下に潜る羽目になった。

しかしこれだけは譲るつもりはなかった。

「ちゃんと装備は用意してもらえますよね? 二重遭難はごめんですよ」

すると秋子さんは頷いた。

「もちろんです、祐一さん。ちゃんとこの通り」

そう言って秋子さんは部屋の片隅にあるロッカーを開けた。

するとそこには想像を絶する光景が広がっていた。

 

 「…米のM−16A2にA3。ロシアのAK−47・AKM−47・AK−74。

ベルギー製のFN FAL、独のH&KG3に、G36、仏のFA MAS。

英のL85A1に、瑞のSIG SG550,濠のAUG、イスラエルのガリル。

M1ガーランドやM1カービン、M1903A1スプリングフィールドに38式に99式。

これらの突撃銃やら小銃は一体なんですか!?」

ロッカーの中にしまい込まれていた銃を見て思わず祐一は絶叫した。

そこには軍隊が使用するべき強力な火器が多量に収容されていたからだ。

しかしそんな祐一に気することなく秋子さんはマイペースだった。

「あら祐一さん、これでは満足いただけません?」

「いや、満足行く行かないの問題ではなくてでですね……」

しかし秋子さんは気にしない。第2・第3・第4ののロッカーを開けた。

「…これはM−4カービンにコルトコマンド。MP−5A2にMP−5D3にMP−5K。

他にはUZIやらベレッタM12,M10イングラムにVz61スコーピオン。

年代物のトミーガンにグリースガン、ステンガンにMP−38/40、バラライカ。

…大戦中のSMGもありますね」

さすがに警察も結構使っているSMGはなら美汐は詳しいようだ。

ちなみに第三のロッカーにはMG−34・M−60・M240G・M249ミニミ・RPDにRPK・PKMなどの機関銃。

第四のロッカーにはM1911A1・M92・Cz−75・H&K/P7M8・グロック17・SIGザウエルP−225/P228・

ワルサーPKK/S、それに警察御用達M38など拳銃がびっしり入っていたのであった。

 

秋子さんはどこでこんな武器を調達したんでしょうね(笑)?

 

 

 

 「はぁ〜、何で俺たちも地下に潜らなくちゃいけないんだろう……」

ポイントマンをやることとなりショットガンに弾を詰めていた祐一はぼやいた。

すると懐中電灯の電池をチェックしていた名雪は首を横に振りながら言った。

「しかたがないよ。お母さんの特製ジャムが出てきたらもう逆らえないもん」

「そうですよね。あのジャムには逆らえません」

救急箱に薬を詰めながらの栞の言葉だ。

これに対し無線機・発信器のバッテリーをチェックしていた美汐も同意した。

「全くです。あんな酷なことは無いでしょう」

しかし四人が四人とも不満を持っていても謎ジャムと秋子さんには逆らえない。

ただ地下に潜るのみなのだ。

「…後ろ向きになっていても事態は解決しません。

こうなれば一刻も早く真琴とあゆさんを救出しましょう」

「そうだな。そうするしかないか」

「だよね〜」

「えぅ〜、仕方がないです」







 

 

 

 それから30分後。

完全武装した4人は真琴とあゆが降りていったマンホールの前に立っていた。

ちなみに祐一の装備はレミントンモデル870P、サイドアームにSIG/ザウエルP228。

それに主に生き物を探知することが出来るセンサーだ。

2番手の名雪はタフさが売りのスタンダードUZI、サイドアームは祐一と同じP228である。

ちなみに射撃が下手な栞はワルサーPKK/S、その代わりに背中には医薬品・食料を詰めた背嚢を背負っている。

そして公安時代、ならびに海外勤務の長かった美汐は特殊部隊御用達のMP−5Kを選択。

サイドアームは祐一と名雪と同じP228、そして無線機と発信器を持っている。

 

 「みなさん、準備はよろしようですね」

四人の姿を見た秋子さんはそう言った。

すると四人は無言で頷いた。

それを確認すると秋子さんは四人に指令を出した。

「真琴とあゆちゃん二人との連絡が途絶えてもう2時間が経ちました。

しかし未だに連絡を取ることが出来ません。これは容易ならざる事態が発生した物と思われます。

たんなる無線機の故障かそれとも事故か、それとも……」

そこで秋子さんの言葉がいったん途絶える。

そこで四人はそれぞれ色々なことを考えた。

(…地下に潜むモンスター・・・。う〜ん、RPGの世界だぜ)

(うにゅう、なにがおきているんだろうね〜?)

(地下に消えた仲間を救う為に突入する美少女。はぁ〜、映画みたいで素敵です)

(真琴…無事でしょうか? 被疑者にあんな事やこんな事されていなければよいのですが……)

「とにかく最優先事項は真琴とあゆちゃんの救出です。慎重に行動してください。

それと連絡は欠かさないように。以上です」

「天野美汐巡査部長以下四名、これより捜索に向かいます」

捜索班責任者である美汐の言葉に一斉に敬礼する。

それに対して秋子さん、由起子さんを始めとして整備員の面々も敬礼する。




 

 「よ〜し、縄ばしご下ろせ!!」

「お〜う!」

今度はしっかりした縄ばしごを地下へと下ろす。

その様子を見た祐一・名雪・栞・美汐の四人は順番に縄ばしごを降りていく。




 

 「頑張れよ〜!!」

「しっかりしろよ〜!!」

「生きて帰れよ〜!!」

「しっかりなー!!」

整備員達が口々に四人を励ます。

そんな中、由起子さんはぼっそり呟いた。

「やはり開けるべきではなかったのでしょうか?」

すると秋子さんは真剣な表情で頷いた。

「世の中には知らなくても良い物、触れてはいけないものも存在しますからね」

「…そうですね、そうかもしれませんね」

由起子さんは目の前の先輩の作るオレンジ色のジャムを思い出し、沈痛な面もちで頷くのであった。

 

 

 

 「ここの施設で大丈夫ですかね?」

起動しているパソコンの画面を前に不安げに呟く情報処理担当の沢口。

すると北川は首をひねった。

「さあな、はっきり言って微妙だ。しかしやらなければならない、そうだろう沢口」

「…俺の名前は南なんだが」

「些細なことは気にするな」

「名前は些細なことか?」

その時無線機に張り付いていた整備班紅一点の広瀬真希が北川に報告した。

「入電しました」

「よし、回してくれ」

その言葉に広瀬は頷き、北川に無線を回した。

『…こちらフォックスハント、聞こえるか?』

祐一の言葉に北川は頷いた。

しかし頷いてもマイクの向こう側にいる祐一達には伝わらない、そこで北川は言った。

「感度良好。どうぞ」

『…入り口から北へ20m、東西にのびる私道らしきところへ出た。これより東へ向かう』

「了解」

こうして北川は地下に潜った面子からの声を頼りにパソコン上に地下の地図を書くのであった。




 

 

 

 真っ暗な地下道、祐一・名雪・栞・美汐の四人はクリアリング・フォーメーションを組んで進んでいた。

先頭の祐一は右手にショットガンを、そして左手にはセンサーが有る。

続く名雪は両手でしっかりとUZIを構えている。

ちなみに三番手の栞はちょっと大きめの大型の懐中電灯を両手でしっかり持っている。

そして最後尾の美汐はフラッシュライト付MP−5Kで後方警戒中だ。

「…いやな雰囲気だな」

緊張感あふれる地下道の雰囲気に思わず漏らす祐一。

しかし名雪は図太かった。

「そうかな? たしかにじめじめして真っ暗だけど地下ってこんなものじゃないかな」

「…名雪さんは怖くないんですか?」

栞の質問に名雪は首を傾げた。

「うにゅ? 何に?」

名雪の言葉に思わずこける祐一。

「…呆れた奴だな」

「そ、そうかな?」

「…たしかにここで緊張しないというのは人として不出来ですね」

「うぅ〜、美汐ちゃん酷いよ……」

美汐の言葉に落ち込む名雪なのであった。

 

 

 

 捜索は順調に進んでいた。

当初予想されていた何かは全く出てこない。

そこで祐一たちは今は放棄された扉を開け、段差を上り下り、上から降りしきる汚水を避けてグングン奥へと突き進む。

 

 

 「思ったよりも広いですね」

プリントアウトした地図を見るなり香里は呟いた。

そして脇からのぞき込んだ由起子さんも頷いた。

「これは想像以上ですね。これはいったん撤収させるか増援を送った方が良いのでは?」

「そうですね……」

秋子さんが考え込んだまさにその時、警報音が鳴り響いた。

慌てて振り返ると秋子さんは北川に尋ねる。

「一体何事ですか!?」

すると北川は即座に秋子さんに報告した。

「センサーに反応有り。前方50m、何かが接近中の模様」

 

 

 ピー ピー ピー

 

 センサーの反応に四人の間に緊張感が走る。

「栞、これ頼む」

「は、はい」

祐一はセンサーを三番手の栞に手渡す。

そして名雪と共に銃口を前方に向ける。

「相沢さん、名雪さん。発砲の指示は私が出します」

「OK」

「了承だよ」

美汐の言葉に頷く二人。

そしてそれはいきなり現れた。

 

 「げっ!?」

「わっ、ビックリ」

「えぅ〜!」

思わず短い悲鳴を上げる祐一・名雪・栞の三人。

そして美汐は一人

「はう…」

と気絶してしまう。

「ちょ、ちょっと天野さん……」

慌てて栞が美汐を抱きかかえる。

しかし二課でもトップクラスに力のない栞だ。

思わず美汐につぶされそうになる。

「こんなことする人嫌いです」

しかしそれどころでは無かった。

なぜならば数え切れないほどのネズミ、それも体長20cmはあろうかという巨大なのが四人に殺到したのだ。

「「「………!!」」」

思わず漏れそうになる悲鳴を必死に堪える三人(美汐は気絶中)。

そんな三人+気絶中の美汐の上を多量のネズミが駆け抜けていく。

やがて十数秒後、ネズミたちは完全にいなくなった。





 

 

 「はぁ〜、ビックリしたぜ」

大きなため息をつき呟く祐一。

すると名雪と栞も同意した。

「うぅ〜。あんなネズミぐらいネコさんがいればみんな捕まえてくれるのに〜」

「あんなネズミ、岩見銀でも食べさせたら良いんです」

しかしこんな軽口をたたけるのも無事だからこそ。

ほっとした祐一は地下道の壁に寄りかかった。

といきなり背後の壁が崩れた!

「うわぁー!!」

思わず叫び声を上げる祐一。

「危ないんだよ、祐一〜!!」

思わず祐一の手を掴む名雪。

しかし重力に引かれた祐一の体重を名雪の力では支えきれない。

名雪も一緒に暗闇の中に吸い込まれる。

「祐一さん!! 名雪さん!!」

慌てて美汐を抱えたままの栞は名雪に手を伸ばす。

しかし非力な栞に祐一と名雪の二人を支える力は全くなかった。

そのまま栞は美汐ととも暗闇にの中へと吸い込まれていったのであった。

 

 

 

あとがき

引っ越して第一弾目のお届けです。

環境の変化がこの話に影響していますかね?

とにかく将来を考えないと行けないな。

 

 

2002.02.27

 

 

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