機動警察Kanon第088話



 

 

 

 「あっ!」

 

 とある大きなフロアに入ったところで名雪はある物を見つけた。

それは直径30cm程、長さ2m程のボンベ状の何かである。

普通ならば工事用と思うかもしれないが場所が場所だけに怪しかった。

それはフロアのど真ん中にちょこんと置かれていたからである。

「見つけたよ〜♪」

名雪はうれしそうに言うとケロピーをその爆弾らしき物に近づこうとした。

すると美汐の乗る二号機がケロピーの肩をつかんで止めた。

「待ってください、名雪さん」

「何なんだよ〜」

名雪が不満げに文句を言うと美汐は黙って床を指さした。

するとそこには無数のワイヤーが張り巡らされており、そのワイヤーは爆弾らしき物へとつながっていた。

「こ、これは?」

「トラップです。そのまま向かっていたらドカンでしたよ」

「だ、だぉ〜」

美汐の言葉に名雪は汗だらだらなのであった。





 

 『目標発見……これより解体作業に着手します』

「了解」

監督室で指揮を執っていた祐一は美汐の言葉に頷いた。

そして秋子さんに振り返ると笑いながら行った。

「思いのほかあの二人、上手くやっているようですね」

すると秋子さんは微笑んでいった。

「祐一さんはあの二人、上手くいかないと思っていた?」

「いや、そういうわけじゃないんですけど」

「そんなことより犯人逮捕よ!! 犯人逮捕こそが真の目的なのよ!!」

真琴が会話に割り込んできて叫んだ。

が秋子さんは真琴の言葉をあっさり受け流した。

「まあそうですね」






 

 美汐はモーショントレーサーを使って真琴には出来ない繊細な動きで、名雪には無い知識を

駆使して爆弾を解体していた。

その側で名雪は警戒し続ける。

「動体反応なし、熱センサー反応なし、近くには人の気配はないんだよ〜」

その言葉に美汐は黙って頷き解体作業を続ける。

やがて爆弾処理は完了、爆弾のタイマーが刻み続けていた時間は止まった。

「爆弾処理完了しました」

美汐が無線でそう報告すると秋子さんの返事が返ってきた。

『…ご苦労様です。ところで無理しなくて良いですよ』

「…犯人逮捕も任務ですから」

美汐はそう言うと警戒中の名雪に声をかけた。

「名雪さん、これから鍾乳洞の中も捜索しますよ」

「わかったよ〜」

かくして二機のKanonは鍾乳洞へと向かって動き始めた。

 




 

 

 「ところでさっき最下層部に横穴が、って言っていましたよね?」

美汐からの報告を受けた秋子さんは現場責任者に尋ねた。

すると現場責任者は頷いた。

「ええ、そうです。今回の騒動でまだ確認はしていませんけどね」

その言葉に秋子さんは頷くと立ち上がった。

「祐一さん、この場はお任せしますね」

「あ、秋子さん!! 一体どうしたって言うんです?」

すると秋子さんは微笑んだ。

「ちょっと心当たりがあるので。あゆちゃんに栞ちゃん、ついてきて」

「うぐぅ、わかったよ」

「はい、わかりました」

慌てて秋子さんの後を二人が追う、と真琴が秋子さんに叫んだ。

「秋子さん!! 一体どこへ行くの?」

すると秋子さんは振り返り、にっこり微笑んで言った。

「あゆちゃんと栞ちゃんとお散歩ですよ」

そして三人は監督室を出ていった。

そしてその様子を見送った現場責任者は不思議そうな顔で祐一に尋ねた。

「あの人…本当に隊長さん?」

「あははは…一応」

困った祐一は適当に答えるしかなかった。

 






 

 

 「他に考えようがありません。犯人はこの奥です」

確かにもう他に考えようはなかった。

ここ以外の所はすでに捜索済みだったからである。

「どうするの?」

名雪の言葉に美汐はきっぱり言い切った。

「もちろん突入します。犯人逮捕が私たちの責務ですから」

そして鍾乳洞へと足を踏み入れる。

「で、でもいったん引き上げてからの方がいいんじゃ……」

名雪は不安げにそう言うが任務に燃えている美汐を止めることは出来なかった。

「現場の指揮権は私にあります」

「うぅ〜、そうだけど」

「なら黙って付いてきてください」

「…了解」

 

 だがその時名雪はある物に気が付いた。

それは美汐の乗る二号機の足に絡みついているのを。

その異様さに名雪は思わず息をのんだ。








 

 

 

 

 その頃テロリストはレイバーを乗り捨てて鍾乳洞の中を懐中電灯片手に歩いていた。

任務達成したこともあり口笛を吹きながらの気楽さだ。

と突然目の前にぼっと明るい光が現れた。

その光の中にはぼやっとした人影が浮かんでいる。

絶対に人がいないはずの鍾乳洞での出来事だけにテロリストは驚愕した。

慌ててきびすを返してその場を逃げようとする、がそうはいかなかった。

あゆと栞が待ち受けていたからである。

「えい」

「うぐぅ、ごめんね」

二人に殴られたテロリストはそのまま気絶した。

「はい、逮捕ですね♪」

秋子さんは微笑みながらテロリストに手錠をかけた。

 

 

 「あれ? 秋子さん、方向ちがうけど」

栞と二人がかりでテロリストを抱えていたあゆは秋子さんが出口とは違う方向に向かうのに気が付き尋ねた。

すると秋子さんは言った。

「ちょっと冒険しようと思いまして」

そして秋子さんは数歩歩き何かを踏み砕いた事に気が付いた。

「あら?一体なにかしら?」

そして足下に視線を向けるとそこには人骨があった。

その白骨は一体だけではない。

無数に辺りに散らばっているのだ。

「あらあら、これは困りましたね」

秋子さんはそれで済んだがあゆはそれでは済まなかった。

「うぐぅ〜、白骨だよ〜」

そう言うや気を失ってしまった。

そしてそのあとには

「えうぅ〜、あゆさん気を失うなんて酷いです〜」

支えているもう一人のあゆが気を失ってしまったためテロリストに押しつぶされた栞が残されたのであった。





 

 

 

 

 

 ズキューン  ズキューン  ズキューン 

 

 ケロピーの37mmリボルバーカノンが火を噴く。

が美汐の乗る二号機にとりついた何かに直撃を浴びせることは出来ない。

本体が見えずにただ触手?が見えるだけだからだ。

それ故に威嚇射撃程度しか効果はない。

であるから何かは二号機を水中に引きずり込んだ。

「美汐ちゃん!!!」

『名雪……何があった!?』

状況の急変を把握できないのであろう、祐一が無線で問い合わせてくる。

しかし名雪にはそれに対して答えるゆとりはなかった。

 

 ズキューン  ズキューン

 

 さらに銃弾を浴びせ美汐と二号機を助けようとする。

その時、名雪の乗るケロピーの背後で大爆発が起こった!!

「うわぁ〜!!」

名雪の叫び声と共に辺りは爆風に包まれた。

 

 

 

あとがき

Airキャラは次回に出ます。

それだけ(笑)。

 

 

2001.11.25

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