機動警察Kanon第087話

 







 

 

 ジオフロント。

地上に土地が足りないため、都市空間を有効活用するために地下に設けられた居住空間である。

そしてここ東京都心部でその第1号・・・東京ジオシティが建設中であった。







 

 

 ズガガガガガ

 

 ほとんど閉鎖された縦抗の底にて。

十数台の作業用レイバーが作業中であった。

旧式ながら現場では根強い“大将”、Key重工最新モデルで暗闇での作業に強いの“ボクサー”、

菱井インダストリーのベストセラー機“ブルドック”、同じく菱井の最新モデル“ヘラクレス21”。

これらが確実に掘削作業をこなしていく。

と突然掘削している岩盤が砕け散った。

そしてそれまで完全に空気の流れの無かった縦抗に強い空気の流れが発生した。



 

 「おい、一体なんだ!?」

突然の出来事に作業員は叫んだ。

そして慌てて現場へと急ぐ。

そこで作業員がみた光景は…広大な暗闇が広がっていた。

 

 

 

 ほぼ同刻。

東京ジオシティ建設現場から数キロ離れた高層ビルに取り囲まれたある神社で異変が起こっていた。

 

 「こ、これは大変じゃあ〜!!」

そう叫んだ神主の目の前には一つの空井戸があった。

ぱっと見た目には普通の空井戸。

しかしそこには確かに神主がたまげるだけの理由があった。

なぜならば井戸の底から風が流れていたからである。

無論それだけではない、何かの咆哮らしき音まで。

「一大事じゃて〜!!」

神主はそう叫ぶやその場を駆け足で立ち去ったのであった。










 

 

 

 それから数日後。

東京ジオシティの作業現場、監督室では現場責任者が本社からやって来た上司に愚痴を漏らしていた。

 

 「あの鍾乳洞にはほんと参りましたよ。学術調査とか言って学者の先生が行ったり来たり。

おかげでこっちの作業は遅々として進まず……。何で塞いでしまわないのです?」

すると上司は上から言われたことを現場責任者に伝えた。

「ああそれはだな、未知なる地下空間に広がる大自然の驚異。

大地下ネットワークの神秘のオアシス東京ジオシティ」

「…何ですそれは?」

上司の言葉現場責任者はきょとんとした表情を浮かべた。

すると上司は苦笑いしながら言った。

「災い転じて福となす。会社はあの鍾乳洞を観光スポットにしてしまおうと言うことなのさ」

その時、監督室の電話が鳴り響いた。

慌てて現場責任者は受話器を取った。

「はい、監督室だが」

すると受話器の向こう側からは驚くべき事態を告げてきた。

「何!! 新しい横穴だと!? しかも今度のは前のよりも大きいだと!!」

あまりの事態に現場責任者は頭を抱えつつ、上司に報告した。

「…また新しい鍾乳洞が発見されたそうです。こんどのは前以上にでかいとか」

その言葉に上司は無感動に頷いた。

「これで東京に新たな名所が出来るな」

「…そう言う問題ですかね?」

上司の言葉に半ばあきれ顔の現場責任者なのであった。

 

 

 その頃縦抗内の搬入用エレベーター上に一台のレイバーがいた。

ちょうど昼時で休憩中と言うこともありその姿は目立つ。

だから弁当を食べている作業員たちは口々に声をかけてきた。

「おい、兄ちゃん。昼飯はいいのか?」

「しっかり休憩しないと作業効率悪くなるぞ!!」

「働き過ぎはよくないぞ〜!!」

だがコクピット内の男は気にしなかった。

にやりと笑うとエレベーターを動かし、奈落の底のような暗闇の底へと消えていった。

 

 そしてその直後…ジオフロント作業現場内のあちこちで同時に爆発が起こった!!

 







 

 

 東京ジオシティ内での爆破テロ事件。

そのために特車二課第二小隊は現場へと直行していた。

その道中、第二小隊の面々は緊張感の欠片もなくおしゃべりしていた。

 

 「へ〜、地底都市。何だか昔のSFみたいだね〜♪」

名雪の言葉に祐一は補足した。

『東京ジオシティ。

都心の100mから200m地下にいくつもの拠点を設置、それらを結んだ直径40Kmもの巨大地下ネットワーク。

まあこれからの東京の目玉商品といったところだな』

「これから行くところはその中心となる都市のコアブロックですよ」

キャリアを運転中の栞の言葉に名雪は目を輝かせた。

「何だか冒険の匂いがするよね〜。宝物とか出てこないかな〜? タイムカプセルとかさ」

「タイムカプセルですか。何だか素敵ですよね。私も昔、埋めましたよ」

「栞ちゃんも? 私もやったんだよ〜。祐一はやった〜?」

すると笑いながらの祐一の言葉が聞こえてきた。

『あれって忘れちまうんだよな、埋めた場所とか埋めた物』

祐一の言葉に名雪は頷いた。

「そうなんだよね〜。あ〜本当、何か出てこないかな?」

『何も出てこないと思いますが』

名雪の言葉に美汐はこっそり呟いたのであった。

 

 

 

 現場に第二小隊が到着するとそこはおびただしい黒煙が上がっていた。

そして消防庁所属の消防レイバーが火災消化のために現場へと突入していく。

この手の現場ではおなじみの光景が広がっていた。

 

 

 「これが犯人の残した犯行声明文ですか」

監督室で現場責任者から受け取った紙を読みながら秋子さんは言った。

そこにはおきまりの文句がずらずらと書き並べられていた。

「…つまり下に閉じこめられているのはこちらの作業員ではなくテロリストであると?」

「ええ、そうです」

秋子さんの言葉に上司は頷いた。

それを聞いた秋子さんは顔色一つ変えずに頷いた。

「嫌な予感していたんですよね。ただの災害救助なら消防庁のレイバーで十分事足りますから。

それなのにうちに声がかかったんですからね。変な気はしていたんですよ」

「…テロリストは最下層にいて、しかも強力な爆弾を持ち込んでいるらしいですよ」

上司の言葉に現場責任者はパソコンのキーボードを叩いた。

すると東京ジオシティの詳細図が映し出された。

「ここで爆弾が爆発しようものなら東京ジオシティ建設計画は根底から崩れてしまいます

「あれは何ですか?」

秋子さんはあることに気が付き尋ねた。

そこには不規則な空洞が広がっていたからだ。

すると上司は答えた。

「あれですか。工事中にでかい鍾乳洞にぶちあたりまして。

東京の地下にもこんな鍾乳洞があったんですね」

 

 

 

 「というわけで今回のお仕事はかなりの危険が予想されます」

秋子さんの言葉に六人の隊員たちは頷いた。

「その場の状況如何によってはドカーンもありますので」

「…ドカーンは嫌だよ」

名雪がそう呟くと真琴が笑い飛ばした。

「なにびくついているのよ、名雪」

すると美汐が名雪の顔を見ながら言った。

「大丈夫です。今回は私が同行しますから」

「「へっ!? それってどういうこと?」」

名雪と真琴の言葉がはもった。

すると秋子さんはにっこり微笑みながら言った。

「美汐ちゃんはね、公安にいたころ爆破物処理の訓練を受けているの。

いわば爆破物のエキスパートなのね。それに今回は現場指揮を二機のうち片方が指揮執らなければいけませんから」

秋子さんの言葉に祐一とあゆ、栞は頷いた。

「確かに名雪にも真琴にも人を指揮するなんてできないしな」

「うぐぅ、そうだね」

「確かにその通りですよね」

三人の言葉に名雪と真琴は反発した。

「祐一にあゆちゃんに栞ちゃん、もしかして酷いこと言っている〜?」

「なによ〜!! 真琴のどこがいけないの!?」

「沈着冷静な状況判断がお前らに出来るか?」

祐一の言葉に名雪と真琴は「あう〜っ」も「うぐぅ」も「えぅ〜っ」の音も出なかった。



 

 「それじゃあ名雪は美汐ちゃんの二号機を支援してあげてね。それじゃあ任務開始よ」

秋子さんの言葉に第二小隊は行動を開始した。






 

 

 最下層に到着した名雪と美汐はさっそくテロリストの捜索を開始した。

しかしその作業現場は非常に広い。

たった二機のレイバーだけで探すのは非常に困難だ。

だからといって手分けして探すわけにも行かない。

常にお互いに援護できるように一ブロックごとに捜索するしかない。

それ故犯人の所在は遅々として進まなかった。





 

 

 「あれ?」

最下層捜索中、名雪は何かに気が付いたようで声を上げた。

すると美汐が尋ねてきた。

「どうしたんですか名雪さん?」

そこで名雪は自分の聞いた何かについて言った。

「何か今動物か何かの声が聞こえたんだけど」

名雪の言葉に美汐はため息をついた。

「…名雪さん、ここはジューヌ・ベルヌの話の中でも将門の首塚でもありませんよ」

「美汐ちゃん…たとえが古いよ…」

「何か言いましたか?」

「何もいっていないよ!!」

慌てて美汐の言葉をうち消した名雪は再び捜索を再開した。

 

 

 

あとがき

実は今回もAirキャラ登場させます。

もっともほんのちょこっとだけですけど。

さて誰が出てくるんでしょう?

 

 

2001.11.24

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