機動警察Kanon第086話




 

 

 Kanon1号機を載せたキャリアはやがて倉庫街の一角に止まった。

 

 プープー

 

 そしてけたたましい警笛が鳴り響く。

すると倉庫の一カ所のシャッターが開いた。

そしてキャリアは18番と大きく書かれた倉庫の中へと入っていった。

 

 

 「あそこが犯人のアジトか」

祐一が呟くと美汐は頷き、言った。

「真琴に連絡を。それと私たちは陽動をかけます」

「了解」

祐一は頷くと無線機を手にした。

「こちら相沢、目標を発見した。18番の倉庫だ。繰り返す、18番の倉庫だ」

『・・・了解だよ。真琴ちゃんと栞ちゃんに伝えるね』

あゆの返事に祐一は頷くと美汐に視線をやった。

すると美汐は頷き、アクセルを一気に踏み込んだ。

 

 

 「上手くいったあるね」

部下はキャリアから飛び降りながらニンマリした。

その手にはKanonの起動ディスクが握られている。

後はこのディスクもろともKanonを彼のボスに手渡せばOKなわけだ。

とその時彼の視界に強力な光が飛び込んできた。

祐一と美汐が乗る車だ。

そのままひるむ部下の前に止まると祐一は車から降りるなり飛びかかった。

そのまま部下のを押さえつけ、関節技を極めると叫んだ。

「名雪はどこだ!? 早くしないとお前の骨は砕けるぞ!!」

そういうや力をさらに加える。

「い、痛いあるね!! 私に何かあったら女の命の保証はないあるね!!」

すると部下の頭上に立った美汐が珍しく叫んだ。

「そっちこそ!! 名雪さんの身に何かあったらただでは済ましませんよ!!」

あまりの出来事に思わず祐一は驚いてしまった。

美汐がこんな声を出すとは思ってもいなかったからである。

「はい、そこまであるね」

だがその時その場に新たな声が響いてきた。

電話の向こう側から聞こえてきた声・・・・ボスのお出ましだ。

その右手にはSIG/ザウエルP228・・・特殊部隊も愛用の優れた拳銃を持ち、さらに左腕には眠りこけている名雪の姿があった。

 

 「名雪!!」

「名雪さん!!」

祐一と美汐は名雪の姿を見て思わず叫んだ。

だが気持ちよく眠りこけている名雪は目を覚まそうとしない。

思わず脱力しかかった二人にボスが声をかけた。

「さあ揚を離すよ。さももないと・・・」

ボスの言葉に祐一は渋々と揚という男から離れた。

すると慌てて揚と言う男はその場を離れ、ボスの隣に慌てて走っていった。

そして傍らに部下がたどり着いたのを確認するとボスは笑いながら言った。

「それにしてもこの女、本当に警察官あるか?私、未だにこの女、寝顔しか見ていないある」

「「そ、それは……」」

ボスの言葉に祐一と美汐は言葉を詰まらせた。

それは否定しようがない紛れもない事実であったからである。

そんな様子を見て取ったのかボスはさらに調子に乗った。

「どうやらこの女も含めてあなた達、皆落ちこぼれのようあるね」

「うぅ〜、何だか酷いこといってるぉ〜」

名雪の寝言がタイミング良く発せられたがそれはボスの言葉を裏付けるにすぎなかった……。

「おい、名雪!! 緊張感がそがれるから起きろよ!!」

祐一はそう叫ぶが名雪は当然のことだが起きようとはしない。

「うにゅ〜、わたしらっきょだって食べられるよ」

完全に寝ぼけている。

祐一は大きなため息をつくと名雪に叫んだ。

「あっ! オレンジ色のジャムが!!」

「うにゅ!!」

祐一の言葉に名雪は飛び起きた。

慌てて目を開けると辺りをきょろきょろ見渡した。

「お、お母さんのアレはどこ!?」

すっかり慌てふためいているがそれ以上に驚いているのはボスだった。

今までさっぱり起きなかった名雪がいきなり飛び起きたのだからそれは無理もあるまい。

「一体オレンジ色のジャムって何あるか?」

そう尋ね来たので祐一は胸を張って言い切った。

「欲しければ後でやろう」

「別に欲しくないある。それよりもあなた達には死んで貰うあるね」

そう言ってSIG/ザウエルP228を祐一に向ける。

「覚悟は出来たあるか?」

そう言うボスをにらみつけながら祐一は呟いた。

「真琴はまだか……」

 

 



 その時倉庫の天窓が砕け散った。

そしてKanon二号機が真琴の雄叫びとともに飛び降りてくる。

「名雪!! あんたの死は無駄にはしないわよ〜!!」

「まだ死んでいないんだよ〜」

名雪の言葉を無視して真琴はKanonの左腕に装着されたスタンスティックを引き抜いた。

そして名雪もろともボスを殴りつける!!

「うにゅ〜!!」

「あれ〜ある!!」

しかし幸い真琴の行動は阻止された。

ボスが用意していたレイバー・・・クラウベアが二号機に横からショルダータックルをかましたからだ。

不意を付かれた真琴の駆る二号機はは完全に吹っ飛ばされた。

そしてそのままクラウベアは二号機を羽交い締めにした。

 

 「よくやったある。これで奴は手も足も出ないあるね。

揚、私たちもKanonを起動させて奴にとどめを刺すあるね」

「OK,ボス!!」

ボスの言葉に部下は頷くとキャリアに飛び乗った。

そしてKanonを覆っているシートの下へと潜り込む。

その様子を見た名雪は思わず叫んだ。

「やめるんだよ〜!! 私のケロピーに手を出すと酷いんだよ〜!!」

 

 

 だが名雪の言葉もむなしくケロピーは起動した。

そして右足に装備された37mmリボルバーカノンを取り出すとケロピーは正面に構えた。

その先には…クラウベアに羽交い締めされた二号機の姿があった。

 

 「ケロピーに酷いことをしないでよ〜!!」

名雪のその言葉と共に37mmリボルバーカノンが火を噴いた。

たちまち二機のレイバーは煙に包まれる・・がすぐに煙は晴れた

するとそこには・・・両腕を粉砕されたクラウベアの姿があった。

てっきり二号機がやられたと思っていただけにボスと名雪は目を丸くして驚いた。

だがすぐにその原因は判明した。

「先輩!! 今助けるよ♪」

 

 その声は…二課で留守番をしているはずの佳乃の声であったからだ。

「佳乃ちゃん♪」

名雪は歓声をあげるがボスはまだ驚いたまま。

「一体何がおこったあるね?」

惚けてそんな事を口走っている。

その状態に気が付いた名雪は自分を拘束しているボスの左腕にかみついた。

「うぎゃ〜ある!!」

悲鳴を上げるとボスは思わず名雪を離してしまった。

あわてて名雪は祐一と美汐に駆け寄った。

「祐一〜!! 美汐ちゃ〜ん!!」

 

 

 そしてその状況を確認した佳乃は犯罪者どもに見得を切った。

「え〜い、ひかえひかえ〜い。この紋所が目に入らぬか〜!!」

そう言ってケロピーが指さした先には警察の桜の代紋が光り輝いていた。

これが水戸黄門なら悪人一同ひれ伏せるところだ。

「尋常にお縄につくんだよ〜♪」

そしてキャリアの荷台からあゆと栞が顔を突き出した。

二人ともその顔は笑顔で、そして栞の手にはオレンジ色のアレが握られており、荷台には泡を吹いて

気を失っている揚の姿があった。






 

 「これはまずいあるね」

現在のやばい状況に気が付いたボスは慌てて身を翻すとその場を逃げようとした。

「逃がさないよ〜」

佳乃はそう叫ぶとケロピーを駆ってボスを追いかけようとした…が床に転がっているシートにつまずいた。

そしてそのまま転倒する、がボスの洋服を器用につまんだ。

このためボスはもう逃げられない。

慌てて両腕を失ったクラウベアがボスを助けようと転んだままのケロピーに迫る。

しかしこの場には真琴の二号機がいた。

「私を忘れるんじゃないわよ〜!!」

真琴はそう叫ぶとスタンスティックをクラウベアの足下に投げつけた。

するとスタンスティックは見事にクラウベアの足に絡まった。

そのまま思いっきり転倒する。

「日本の警察をなめるんじゃないわよ〜!!」

そう叫ぶと真琴は見事なまでに37mmリボルバーカノンをぶっ放した。

すると弾丸は見事にクラウベアに直撃、そのまま大爆発を引き起こした。

 

 「あ〜あ、真琴の奴派手なことしやがって。これじゃあ秋子さんに隠すの、大変だろうが」

「お母さんに言ってないの!?」

祐一の言葉に名雪が尋ねると祐一は頷いた。

「…秋子さんに言えるか?」

「…うにゅ〜、言いにくいよね、やっぱり」

名雪は決まり悪さにうつむいた。

すると祐一は名雪のつややかな髪の毛にポンと手を置くと笑った。

「でもお前が無事で良かったよ。」

「…ありがと」

 

 「あわわ〜、高くて怖いあるよ〜」

ボスは佳乃の乗るケロピーにつり下げられ、ボスは情けない言葉をあげていた。

「レイバーにパイロットを乗せておくなんて卑怯あるよ〜」

その言葉に真琴が叫んだ。

「やかましいわよ!! 正義のためにきれい汚いは関係ないわよ〜!!」

 

 

 

 かくして特車二課を襲ったアクシデントは無事解決した。

事件も無事解決、そして残り数日間を無事佳乃の訓練で過ごし、予定日にきちんと佳乃を

パレードへと送り込めたのであった。

ちなみにパレードは・・・雨のため中止になってしまったが(笑)。

 

 

 

あとがき

佳乃編これで終了です、がやはり佳乃の出番は少なかったですね。

それ以上に聖の出番はほとんど無かったけど(笑)。

ちなみにこの二人の出番はもうありません。

 

 

2001.11.18

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