機動警察Kanon第078話



 

 

 

 89式小銃を構えた自衛官と警察官が睨み合っていた。

そこは一般地区と自衛隊の演習地区の境目。ここを境にして管轄が違うのである。

自衛官側としては自らのメンツを守るためにここから先に警察官を進めるわけにはいかない。

警察側としてはすこしでも影響力を拡大したいためにこの件に介入したい。

それ故に両者の間には非常に緊迫感が漂っていた。

 

ギャシャンギャシャンシャシャン

 

 そこへある音が響いてきた。

どこかで聞き覚えのある音である。

とすぐにその音の発生源が姿を現した。

99式Kanon・・・・真琴の乗る二号機である。

その後には美汐の乗る指揮車とあゆの乗るキャリアが続く。

そして三台はまったく止まる気配を見せない。

 

 「…まさか突っ込む気じゃあ……?」

一人の自衛官のつぶやきをきっかけに硬直したように突っ立っていた自衛官と警察官はあわててその場を飛び退いた。

するとその場を一機のレイバーと二台の車両が通り抜けていった。

 

 

 

 「あははは〜、あんな程度で進行を阻止しようなんて甘いのよ〜」

真琴は激しく揺れるKanonのコクピット内で笑った。

その間もKanonは演習地区内を爆走している。

すると無線から声が届いてきた。

『真琴!! 何で勝手に演習地区内に入るんですか!!』

しかし真琴は悪ぶれた様子を欠片も見せずに返した。

「秋子さんの指示は目標を演習地区に誘いこむこと。それなら目標を演習地区内から出さなきゃいいのよ〜」

『…全然違います』

「あははは、もう手遅れだもんね」

 

 そうもはや手遅れであった。

3人は完全に演習地区内に入り込んでしまっていたのだから。

真琴の言葉に美汐はため息をつくと言った。

「…仕方がないですね。このまま行きましょう」

『うぐぅ、美汐ちゃん本気?』

あゆはおびえたようにそう言葉を返してきた。

むろん美汐とてこの展開は本意ではない。

しかし仕方がないではないか。

やもえず真琴に引っ張られる形で第二小隊二号機クルーは闇の森の中へと突入していった。

 

 

 

 

 暗闇の中、一台のレイバーが木立に紛れて潜んでいた。

今やすっかり話題の謎のレイバー・・・ファントムである。

するとファントムの頭部に装備されたビーム砲が瞬き始める、とその砲口からビームが放たれた。

 

 

 『真琴!!』

「任せなさいよ〜!!」

美汐の言葉に素早く反応した真琴は二号機を横っ飛びにした。

すると一瞬の後に二号機のいたところをビームが通過する。

そしてはずれたビームは・・・あゆの乗る二号キャリアに直撃した!!

『うぐぅ!!』

あゆは悲鳴を上げるが真琴は全く気にしなかった。

そのまま37mmリボルバーカノンを取りだして構えた。

「一体どこにいるのよ〜!?」

すると美汐が叫んだ。

『真琴!! 一カ所にとどまらないで!! それに飛び道具は相手の方が有利ですから接近戦に!!』

「わかった!!」

美汐の言葉に真琴は二号機を駆って森の中へと突入した。






 

 

 「あうーっ、これじゃあ役にたたないわよ〜」

真琴は目の前の光景に嘆いた。

その目の前には砂嵐しか映し出していないモニターがある。

がすぐに真琴は気を取り直した。

「こんなの邪魔〜!!」

そう叫ぶと真琴はモニターのスイッチを切った。

そしてハッチを開けると頭を突き出す。

とその目の前にはファントムがいた。

しかもビーム砲は今にも発射されんばかりの状況である。

あわてて真琴は地面に転がった。

するとさっきと同じようにビームは虚空を突き抜けた。

そして真琴は反撃、37mmリボルバーカノンを発砲する。

しかしその弾丸はすべて弾かれた。

そして真琴は目の前にいるレイバーの姿を見て呟いた。

「やっぱりあのときの……、今度はやられないんだから!!」

その時ファントムは腹部に装備されたECMジャミング装置を作動させようとした。

「同じ手なんか効かないんだから〜!!」

そう叫ぶと真琴はスタンスティックを引き抜き、ファントムに向かって突進する。

するとファントムは慌ててECMジャミング装置をしまい込む。

そして真琴の攻撃を受け止めるかのように身構える。

しかし真琴は一切気にしなかった。

そのままスタンスティックを構えて突進する、とスタンスティックは音を立てて吹き飛んだ。

しかしファントムは完全に態勢を崩してしまう。

そこへ真琴の体当たりが決まった。

そしてそのまま背後に回り込むとファントムを羽交い締めにした。

「あははは、真琴をなめるとこういうことになるんだから!!」



 

 

 その様子を見ていたあゆは呟いた。

「真琴ちゃんも意外とやるんだね」

その言葉に美汐は当然と言った感じで言った。

「いくら何でも二回目なんですから。真琴でもやれますよ」

褒めているようだが二人の言葉は単純にはそうは思えない。

その時、あゆがふと気がついたように呟いた。

「…でも二回目なんだから向こうの方も当然かしこくなっているんだよね?」







 

 「あうーぅ〜!!」

その時不意に真琴の悲鳴が上がった。

慌てて二号機を見るとファントムに見事なまでに投げ飛ばされた姿があった。

「…一号機と同じ動きですね」

美汐はファントムの動きを見て思わずそう呟いた。

その間にもファントムは真琴の乗る二号機をおもいっきりけっ飛ばす。

「あうーぅ〜!!」

真琴の悲鳴とともに二号機はごろごろと転がっていった。

そして…二号機はぴくりとも動こうとしない。

「真琴!!」

「真琴ちゃん!!」

美汐とあゆはそう叫ぶと二号機のもとに駆け寄ろうとした。

するとそこにはコクピットの中で完全に気を失っている真琴と、頭部が完全に破壊されてた二号機の姿があった。

そしてファントムは…その二号機にとどめをさそうとしてだろうか。

二号機の側に寄ると指先をそろえ、構えた。

そしてそのまま突き下ろそうとして…止まった。

そしてファントムは暗闇の中を凝視すると・・・真琴と二号機にはそれ以上手を出そうとはせずに暗闇へと消えていった。




 

 

 「真琴ちゃん!! 真琴ちゃんったら!!」

あゆは気を失っている真琴の肩を揺すった。

しかし完全に気を失っている真琴は目を開けようとはしない。

そしてあゆの背後から落ち着いた物腰で美汐は二号機に近づいた。

そして美汐は暗闇の中の何かに気がついた。

あわててそっちの方向に視線をやると…二機のヘルダイバーがいた。

そしてパイロットは二号機と美汐・あゆに目をやると…ファントムが消えた方向へと走り去っていった。

 

 

 

あとがき

ようやくファントム編も調子が乗ってきました。

けどあと少しで終わっちゃうんだよね。

まあ来週には完結させたいな。

 

 

2001.10.13

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