機動警察Kanon第068話

 

 

 

 「覚悟〜!!」

真琴はそう叫びながらブロッケンに37mmリボルバーカノンを向けた。

そして照準を合わせるとすかさずトリガーを絞る。

それと同時にブロッケンは左腕を機体の前で構えた。

すると37mm弾はその強固で流線型の腕にはじかれ、すぐ側に駐車されていたタンクローリーに突き刺さった。

それと同時にタンクローリーに積まれていた化学燃料に引火、たちまち大爆発を引き起こした。

そしてたちまち周囲に延焼、あたりはたちまち熱と光で包まれた。

 

 

 

 「ぐわぁ〜!! 何て言うことを〜!!」

ちなみにこの台詞は現場の責任者(犠牲者ともいう)の警部補の言葉である。

彼の将来はこれで完全に途絶された(笑)。

 

 

 「何て無茶しやがる。本当に奴は警察官なのか!?」

これはテロリストAの言葉だ。

何せ自分がここで30分近く使って起こした破壊活動よりも、警察官である二号機のパイロットが

一瞬に引き起こした損害の方が大きかったからである。

あまりの事態に戸惑っているとどこかから偵察、警察の動きを伝えていたテロリストBから無線が届いた。

『驚いている場合じゃないぞ!! 相手はあの第二小隊なんだ!!

いかなる手を使ってくるのか分からないぞ!!』

「それもそうだな」

テロリストAは仲間の言葉に我を取り戻した。

考えてみれば「警視庁のお荷物」「金食い虫」「猫の手より役に立たない」の異名を持つ第二小隊が相手なのだ。

常識的であるはずがない。

すぐに彼はブロッケンを駆り、飛び来る37mm弾をかわしつつ二号機を殴りつけた。

 

 

 「あう〜っ!!」

ブロッケンの攻撃に二号機のコクピット内にいた真琴は思わず叫んだ。

全長8m近い巨体が二機、ぶつかり合って地面にぶち倒されればその衝撃は半端なものではないのだ。

 


 「あいたたた……」

真琴はすさまじい衝撃に頭を横に振りながら呟いた。

すると無線で美汐の声が飛び込んできた。

『真琴!! 避けなさい!!』

反射的に機体を操作、その場を転がって避けた真琴の視界に飛び込んできたのは今まで二号機がいたところに

肘打をかましているブロッケンの姿であった。





 

 「美汐、ありがとう。」

『…いいえ、どういたしまして。それよりも油断は禁物ですよ』

ちょっと照れたように返してきた美汐の言葉に真琴は頷いた。

「任せておいてよね。今度こそわたしが奴を仕留めてやるんだから!!」

そう叫ぶなり真琴は再びブロッケンにつっこんだ。

そしてあっさりかわされた……。





 

 「避けるなんて卑怯よ!!」

真琴はそう叫ぶものの万有引力の法則には逆らえない。

そのまま多量の鉄骨やらコンクリートが積み込んである資材置き場へとつっこんだ。

たちまち積んであった鉄骨は崩れ落ち、袋に詰められていたコンクリートは辺りに舞い散り視界を遮る。




 

 「あたたたたた、失敗した〜」

『真琴!! はやく態勢を整えなさい!! 次が来ますよ!!』

美汐の言葉にもうろうとする意識の中、真琴は二号機を立ち上がらせようとした、が上手くいかない。

「あうっ〜、立ち上がれないよ〜」

『真琴!! オートバランサーがいかれたようです。手動に切り替えなさい!!』

「あうっ〜、わかったよ」

真琴は必死になって手動でKanonの姿勢を整えようとするが上手くいかずよろめくばかり。





 

 「へっ、何をやってやがるこの馬鹿が。」

テロリストAはそんな真琴の二号機を鼻で笑うとにやりとした。

そして大声で叫んだ。

「これで終わりだ!!」

 

 

 「そうはいかないんだよ!!」

そこへ拡声器を通して若い女性の声が響いてきたのだ。

「だ、誰だ!?」

お約束通りの言葉を発しながら振り返るとそこには一号機ことケロピーがスタンスティックを構えて立っていた。

 

 

 「馬鹿か、名雪!!これから行きます、って大声で宣告する必要なんかないだろ!!」

「だ、だってまずは真琴から矛先を変えようと……」

祐一の叱咤に名雪は反論しようとするが上手くはいかなかった。

「あいつが危機に陥ったのは全て自業自得だ。

それよりも二号機に気を取られているうちにブロッケンを背後から一撃かました方がよほど楽だろ!!」

「で、でも何か卑怯だよ〜」

「卑怯も何もあるか!俺たちがやっているのはスポーツなんかじゃない。

とにかく目標を鎮圧すればいいんだよ!!」

「うぅ〜」

 


 

 そんな二人に反してテロリストAは燃えてた。

「お、お前は一番最初の機体の顔に警棒を突っ込んでくれた……。

おもしろい、今度こそギタンギタンに熨してやる!!」

そう叫ぶなりブロッケンは二号機を無視してケロピーに襲いかかってきた。

 




 

 「おらおらおら!!くたばりやがれ!!!」

テロリストAはそう叫びながらケロピーを次々と殴りつけてくる。

しかもただ力任せに殴りつけてくるわけではない。

タイミングやバランスも兼ね備わった完璧な連続攻撃だ。

さすがの名雪もこれには辟易したようで防戦一方、後退しながら勝機を伺う。

 

 

 「さすがにあいつ、動きが良くなってきているな」

指揮車の中からケロピーとブロッケンの格闘を眺めながら祐一は呟いた。

それほどまでにブロッケンの動きは前二回に比べて良い動きをしていたのだ。

力に装甲、さらに技まで加わってしまってははっきり言って勝ち目はなさそうだ。

しかしだからといってこの場を逃げ出すわけには行かない。

この辺は軍隊とは違う警察の立場というものがあるのであった。

 

 「わっ!?危ないんだよ〜」

緊張感の欠片も感じさせない口調で名雪はそう呟きながらブロッケンの攻撃をかわし続けていた。

すでに左腕に装着されたシールドはベコベコ、見るも無惨な姿である。

だがそれも長くは続かなかった。

やがてケロピーは建設中のビルに追い込まれてしまったのだ。

これでもはや後退は不可能となってしまった。

 

 その様子を見たテロリストAはニンマリ笑った。

「くっくっく……ついに追いつめてやったぜ。それでゃとどめと行こうか」

そして思いっきりフットレバーを踏み込むとケロピーに向かって突進してきた。

そして非常に力のこもった渾身の一撃をケロピーへと放つ。

 

 だが名雪はひるまなかった。

「まだ甘いんだぉ〜!!」

そしてケロピーを素早くしゃがませる。

するとブロッケンの放ったパンチはケロピーの頭の上を空振りした。

「いくんだよ〜」

ケロピーはその空振りした右腕をつかむとさらに腰に手を回した。

そして相手の力を利用してぶん投げた。

そして右腕に持ったままのスタンスティックをブロッケンののど元に突き立てようとした。

 

 

 だがそうは上手くいかなかった。

戦線復帰した真琴の二号機が突進、名雪のけろぴーを無視して鉄骨でブロッケンを乱打し始めたのだ。

いくら強固な装甲を持つブロッケンとはいえ内部の精密なシステムは衝撃にはもろい。

こうしてブロッケンはたちまちその戦闘力を損失、犯人逮捕は確実な状況となったかに見えた。

しかしそうは問屋がおろさなかった。

ブロッケンが一回目の時と同じように煙幕をはき出し始めたのだ。

それを見た名雪は思わず叫んだ。

「このままじゃまた犯人逃げちゃうよ!! 早く機動隊を突入させて!!」





 

 だがこの言葉に第二小隊隊長の秋子さんも一号機指揮者の祐一も即座に否定した。

「ダメです。ブロッケンの動きを完全に止めるまでは危なくて機動隊を近づけさせられません」

「秋子さんの言うとおり。

いくらぼこぼこにされてまともな動きがとれなくても生身の人間にはまだ十分驚異なんだぞ!!」





 二人の言葉に名雪は「うぅ〜」とうなったもののどうすることも出来なかった。 

 





 

 それから一時間後。

ようやくとブロッケンの動きが完全に止まったことを確認すると機動隊は一斉にブロッケンに突入した。

しかしそこはもうもぬけの殻、人っ子一人残っていなっかったのだ。

 

 

 

 

 「くそっ!逃げられちまったな」

ブロッケン捜査専従班の国崎往人部長刑事の言葉に相棒の神尾観鈴刑事は「にはは〜」と笑ってこたえた。

「残念だったね、往人さん。せっかく犯人を捕まえるチャンスだったのに逃げられちゃって」

すると国崎往人部長刑事は黙って神尾刑事の頭をポカっと殴った。

「が、がお。どうしてそんなことするかな?」

「やかましい。お前も専従班の一員なんだから少しは悔しがれよな」

そう言うと国崎部長刑事はブロッケンのコクピットの中をのぞき込んだ。

そこは人影は全くない。

ただ空っぽのコクピットがあるだけである。

しかし彼はあることに気がついた。

たちまち顔が険しくなる。

「…まさかまだあるのか?」

 

 

 こうして二ヶ月近く首都圏を騒がしたブロッケン事件はここに終幕したのであった。

まだ明らかにされていない陰謀とともに・・・。

 

 

 

あとがき

おもいっきり久しぶりの「機動警察Kanon」をお届けします。

近頃仕事が大変でなかなかSS制作の時間がとれないんですよね。

先週は休日出勤だったし平日も残業は当たり前だし。

まだ寮が会社から近いだけましなんですけど。

 

2001.08.29

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