「くそっ!! こうなったら思いっきり暴れてやる!!」
テロリストAはすっかりやけになっていた。
やりたくもないのに脅かされてのテロ行為、気に入るわけがない。
そもそもテロリストの彼ではあったが無益な破壊。
ましてや自分の考えでもないのに行うテロ行為が気に入るわけがなかったのだ。
しかしそれは言っても詮無いことであった。
すでに周囲は警察によって完全に包囲されていたのだ。
いくらやる気がないとはいえ捕まるつもりはもうとう無い。
だから彼は派手に、それでいて被害が拡大しないように破壊活動を開始したのであった。
「くそっ!! 我々では歯が全く立たないぞ。特車二課の連中はまだか!?」
現場の責任者を押しつけられた警部補は思わず叫んだ。
いくら機動隊を動員しても、装甲車を用意してもレイバーを阻止することなどほとんど不可能なのだ。
だからこそ編成された特車二課。なのにちっとも現場にやってきてくれないので定年間近の彼は焦ったのだ。
だが部下の巡査部長の言葉に彼は顔を青ざめた。
「あと十分ほどで第二小隊が到着するそうです。」
「そうか第二小隊が来るのか、ご苦労…って第二小隊!?」
「はい…第二小隊だそうです。第一小隊は出動中とかで……」
「俺の警察官人生はたった一つ、それも俺のせいでも何でもないことで終止符を打たれるのか!?」
その場に居合わせた警察官たちは皆一様に同情の視線を彼に向けた。
しかしただそれだけ、誰だって自分の身が一番かわいいというわけで誰もフォローしてはくれないのであった。
そんな状況とはつゆとも知らない第二小隊は定刻通り、十分後に現場へと到着した。
「騎兵隊の参上なんだから〜!!」
ちなみにこの言葉はやる気満々の真琴の言葉だ。
しかし今時騎兵隊…、この由来を知っている人はどれくらいいるのだろうか(笑)。
たぶん古い漫画で聞いたのであろうが……。
ちなみに真琴の隣でキャリアを運転しているあゆにはさっぱり分かっていなかった。
「騎兵隊って何?」
まあそんなことは置いていくとして現場に着いた第二小隊は直ちに二機のKanonを起動させた。
少しでも被害を少なくするために一秒でも早く逮捕するためである。
もっともそれが原因で被害が拡大している、ということを秋子さんを除く第二小隊の誰もが気がついていなかったが。
「お願いだから被害を拡大させないでくださいね!!」
現場責任者の警部補に泣きつかれた秋子さんはあらあらと微笑んだ。
「もちろん私たちだって警察官なんですから被害を出さないようにしますよ」
「本当ですか〜!?」
「ええ、本当ですとも。被害は可能な限り小さくしないといけませんからね」
「ありがとうございます!!」
だが彼は気がついていなかった。
秋子さんはあくまでも「被害を出ないようにします」と言っているだけで「被害を出しません」とは言っていないことに・・・・。
「それじゃあ今回はどうするの?」
一号機ことケロピーのコクピットから名雪は無線を通じて祐一に指示を仰いだ。
しかし祐一もすぐには答えを出すことは出来なかったので傍らにいた美汐に尋ねてみた。
「一体今回はどうする?」
「そうですね…どうしましょうか?」
さすがに才媛と名高い天野美汐でも何でもすぐにアイデアが浮かぶ訳ではないらしい。
二人の指揮者はその場で考え始めた。
するとやる気満々の真琴がきれた。
「あぅ〜っ、難しいことなんか無いわよ!!あんなやつ蜂の巣にしてやるんだから」
そう叫ぶやいなや二号機は37mmリボルバーカノンを取り出し、ブロッケンへと突貫した。
「あの馬鹿野郎!!」
祐一がそう叫ぶと美汐はすかさず名雪に叫んだ。
「名雪さん!!すぐに真琴のフォローを」
「わかったよ!!」
そしてケロピーは左腕に装着されているスタンスティックを引き抜くと二号機の後を追った。
「…名雪を指揮するのは俺なんだが……」
祐一がふてくされたように言うと美汐はかすかに笑い、そして言った。
「どうせ相沢さんも同じことを言ったはずです。でしたら一秒でも早いほうが良いと思いまして」
「それはまあ確かにそうだけど…」
「真琴に罵声をあげる前に指揮しなくては指揮者失格ですよ。」
「はい、わかりました……」
どうやら真琴を馬鹿野郎よばりしたことを怒っているらしい美汐に凹まされてしまった祐一なのであった。
あとがき
次でブロッケン編、おしまい。
その後は何話か本筋とは関係ない話を入れて・・・。
メインストーリーを展開しますね。
2001.08.21