機動警察Kanon第066話

 

 

 

 二機目のブロッケンが海底から引き上げられて三週間あまりが流れた。

その三週間の間、東京はきわめて平和であった。

これはテロが都内で全く起こっていなかったのだ。

いつもならば環境テロや政治テロが頻発するのだが今回は全くなし。

出動するのは事故処理やちょっとした軽事件だけ。

その結果、特車二課の出動件数が前月に比べて半分に落ち込んでいたからである。






 

 

 

 「この頃平和ですよね。」

二課の屋根の上でひなたぼっこしていると栞が呟いたので祐一と名雪は頷いた。

「確かにこの頃は平和だよね〜。三機目のブロッケンも出てこないし」

「全くだ。だがこれも嵐の前の静けさでなければいいがな」

すると栞はうれしそうに笑った。

「なんだか祐一さんの言葉、ドラマみたいで格好良いですね」

「…栞、恋愛ドラマだけでは飽きたらずにそんなものまで手を広げたのか?

忙しくて堪らないはずなのによくそんな時間あるな」

「そんなこと言う人、嫌いです」

そう言って栞は頬を膨らませた。

 

まだまだ平和な特車二課であった。

 

 

 だがそんな平和な時間は長くは続かなかった。

突然サイレンが鳴り響いたからである。

 

 「307発生! 307発生! 第一小隊、出撃せよ!!」

このアナウンスとともにたちまち特車二課は騒がしくなった。




 

 「急いでキャリアに載せなさい!! ぐずぐずしていると東京湾にたたき込むわよ!!」

整備班長美坂香里の言葉に整備班の面々は無駄ないてきぱきとした行動を取る。

そのためあっという間に出撃準備が整った。

それと同時にブリーフィングを終えた第一小隊の面々がそれぞれ自分の担当に乗り込み、出撃していった。

 

 

 「これで俺たちは準待機から待機に繰り上げか」

祐一は立ち上がりながらそう呟いた。

すると渋々といった感じで名雪・栞も立ち上がった。

「これからさんさんと照りつける太陽の下でバニラアイスを食べようと思っていたのに……」

栞の言葉に名雪はうんうんと頷いた。

「栞ちゃんの言うとおりだよ。私もせっっかくひなたぼっこしていたのに〜、お昼寝しようと思っていたのに〜!!」

名雪の言葉に祐一は泣きつかんばかりに頼み込んだ。

「お願いだから勤務中に寝るのだけはやめてくれ!! 出撃の度に体力を使い果たしていては体が持たない!!」

それを聞いた名雪はむっとした表情を浮かべた。

「ねえ祐一、そんなに私を起こすのって大変?」

「その通り(一秒)!!」

秋子さん譲りの言葉に名雪は一瞬沈黙した。

そしてうにゅ〜とむくれた。

「祐一だけ今日のご飯は紅ショウガだよ!! ご飯もみそ汁もおかずも紅ショウガ!!」

だが祐一も負けては居なかった。

すかさず名雪に反撃したのである。

「お前がそのつもりなら起こすときはいつもアレ(オレンジ色の邪夢)を使うぞ!!」

「う〜っ、祐一極悪人だよ〜」

 

アレの恐怖に名雪は耐えられず、結局この勝負は祐一の勝ちとなった。

 

 

 

 そしてそれから数十分後。

再び特車二課のサイレンが鳴り響いた。

今度は第二小隊の出番だ、というわけで第二小隊の面々は集合した。

するとみんなの前に立った秋子さんがとうとうそのときが来たことを伝えた。

 

 「とうとう三機目のブロッケンが現れました」

その言葉に第二小隊の面々は感嘆というか驚きの声というか…まあ声を上げた。

 


 「うぐぅ、とうとう現れたんだ……」

「見ていなさいよね、こんどこそ私が仕留めてやるんだから!!」

「ケロピーが壊されちゃうよ〜」

「テロを起こす人、嫌いです」





 もちろん優秀な隊長である秋子さんは少女たちの言葉を無視して続けた。

「目標はバビロンプロジェクト構内で建設中のビルの工事現場で破壊活動を行っています。

そこで第二小隊はただちに出動、これを捕縛します。それでは出撃です!!」

「「「「「「はい!!」」」」」」

秋子さんの号令で第二小隊は直ちに出動した。

 




 

 

 

 「それにしてもとうとう現れたんだね〜。」

指揮車の助手席に座っている名雪の言葉に祐一は頷いた。

「ああ、たしかに。それにしてもいつも俺らがこういうのは相手にしているよな」

過去に戦った強敵たちの姿を思い浮かべながら祐一はそう言った。

謎のレイバー(ファントムのこと)にブロッケン二機、そして今回の三機目のブロッケン。

すべて第二小隊が相手にしていたからである。

すると名雪は笑いながら行った。

「だって第一小隊じゃきっと止められなかったよ。そのせいでブロッケンの動きが良くなっているんだと思うけど」

「それはそうだよな。旧式のONEじゃあ三機がかりでもブロッケンを止められないだろうしな」

 

 そう言ったところで祐一はあることに気がついた。

(まさか奴は第二小隊・・・いやKanonとやりたがっているのか!?)

そんな祐一の心のとまどいが出ていたのであろうか?

名雪が心配そうに顔をのぞき込んだ。

「どうしたの祐一? なんか顔色悪いみたいだけど……お腹でも痛い?」

「いや、なんでもない」

祐一は頭に浮かんだ考えを振り払うと笑った。

「何でもないから気にするな。それより運転しにくいから顔をどかしてくれ」

「わかったよ」

 

 こうしてサイレンを鳴らしながら第二小隊は三度目のブロッケンとの戦いへと赴くのであった。

 

 

 

あとがき

三機目のブロッケン編、突入です。

といってもすぐに終わらせる予定だけど。

そしてその後はファントム編二回目、そしてグリフォン編、そして廃棄物13号編に行きたいですね。

 

 

2001.08.18

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