機動警察Kanon第061話

 






 

 

 「わっ!! な、何よ!!」

真琴はブロッケンの攻撃を左腕に装着した二号機の盾で受け止めてそう叫んだ。

なんせ盾で完全に受け止めたはずなのにそのまま10メートル以上もぶっ飛ばされてしまったのだ。

そこへ美汐からのアドバイスの声が届いた。

『真琴!! いつものように戦っては危険です!! 受け止めるのではなく避けなさい!!』

「あう〜っ、分かったよ美汐……」

真琴は素直に美汐からのアドバイスを受け入れた。

いつもなら繊細な操作を要求されるこの手の指示を真琴はいやがるというかめんどくさがるのだが

今回ばかりはそうも言ってはいられない。

なんせ今まで相手にしてきた作業用レイバーとは格が違う。

正真正銘の軍用レイバー、それも最新鋭機なのだから。

そこで真琴はブロッケンの攻撃をかわしつつ戦う羽目に陥ってしまったのであった。





 

 

 「あう〜っ、何てこいつは固いのよ〜!!」

真琴は何度目かの攻撃の結果に思わずそう言葉を漏らした。

すでに37mmリボルバーカノンの弾丸は撃ち尽くしきっている。

そのうちの何発かは間違いなく直撃しているのだが効果はさほど出ていない。

今はスタンスティックを使用しているのだが急所に鋭い一撃を加えなければ効果は出そうもない。

さすがに軍用だけはありその装甲は破格、今のままではどうしようもない。

真琴はギリギリと歯ぎしりした。

とその時二号機の手にしていたスタンスティックがもぎ飛んだ。

ブロッケンの攻撃に耐えかね、手からすっぽ抜けてしまったのだ。

「あう〜っ、しまった〜!!」






 だが嘆いてばかりではいられない。

真琴は二号機を操ると迫り来るブロッケンとがっちり組み合った。

そして力をあらん限り振り絞って押し合い、そして足を払おうとする。

まるで柔道か何かの試合のようだ。

しかしそこで行われているのはレイバーによる無差別級、しかもルールは存在しない死合なのだ。

そこへあゆから二号機の状態を告げる報告が届いた。

『真琴ちゃん!! もう二号機のモーターに限界が来ているよ。 いったんブロッケンから離れて!!』

だが真琴にはそれどころではなかった。

今、一瞬でもブロッケンから離れようとしたらたちまち反撃に合い二号機はズタズタにされてしまうであろう。

だから真琴は頷かなかった。

そして思わず叫んだ。

「名雪はまだなの〜!?」

 



 

 「何か呼んだ〜?」

そこへ名雪の乗るケロピーがタイミング良く姿を現した。

まるで計っていたかのような絶妙なタイミングだ。

「名雪!?」

そのの絶妙のタイミングに真琴は思わず状況を疑ってしまうが間違いなくそこにケロピーはいた。

そして真琴と同じくケロピーの登場に驚いた犯人は慌てて二号機から離れようとする。

このままでは良い的になってしまうからである。

だが真琴はブロッケンに必死になって食らいつき離れようとはしない。

その状況にいらだったのかブロッケンは真琴の乗る二号機を力づくで振りほどくとケロピーめがけて放り出した。

 

 「きゃぁっ!!」

「あう〜っ!!」

突然の出来事に二人は全く対処できなかった。

二人は可愛い悲鳴声を上げ、そして折り重なるように倒れてしまった。

慌てて二人は機体を起こそうとするのだがお互いの機体が邪魔し合い、起きあがることが出来ない。

「ちょっと邪魔よ、名雪!! 早くどいてよ!!」

「うぅ〜、私を押し倒したくせに真琴、なんだか威張っているよ〜!!」







 そんな二人の醜態を目にしたブロッケンのコクピット内にいた犯人ことテロリストAは鼻で笑った。

「けっ!!馬鹿が二人、じゃれてやがるぜ」

その言葉を聞きつけた真琴はますますいきりだった。

名雪の乗るケロピーを一切合切無視して無理矢理立ち上がろうとする。

しかし当然の事だが上手くいかない。

ますます焦る真琴の耳元に美汐の声が飛び込んできた。

『真琴、落ち着きなさい!!焦れば焦るほど上手くはいきませんよ!!』

だが真琴はその言葉にますます焦ってしまい、どうしても落ち着くことは出来ない。

その結果、二機のKanonは降りしきる雨の中仲良くじゃれ合っているのであった。





 

 

 無論テロリストAはそんな隙を見逃そうとはしなかった。

すぐさま機体を駆ってその場を離れる。

かって名雪のケロピーに痛い目に遭わされているので2対1ではやり合う気にはならなかったのだ。

むろん理由はそれだけではない、バッテリーの心配がもっと大きかったのだ。

そしてテロリストAの載るブロッケンは堤防から片足を下ろして海の中へと足を踏み入れる。







 

 「奴は海の中へも入れるのか!?」

その姿に祐一は思わず叫んだ。

たしかに汎用機の中には水陸両方活動できる機体も存在することは存在する。

しかしまさか重装甲のブロッケンがそのような行動が出来るとは思わなかったのだ。

だがブロッケンはそんな祐一のとまどいを無視してどんどん海の中へと潜っていき、やがてその姿は

完全に見え無くなった。

 

 

 

 

 

 

 「…逃げられたか」

祐一は雨の降りしきる夜の岸壁の上でそうつぶやいた。

まるで映画のワンシーンのように渋い場面である。






 そこへあゆと栞が声をかけて来た。

「祐一さん、現実逃避はいけませんよ」

「そうだよ。あの二人をなんとかしないと」

祐一は二人の言葉に溜息ついた。

せっかく見たくもない現実から目をそらしていたというのに……。

祐一は気が進まなかったものの振り返ってそこで繰り広げられる光景を目にした。

そこには第二小隊の二機のKanonが見事に折り重なって倒れたまま、そしてその機体の前では名雪と真琴が

真剣に口論していたからである。

ちなみに口論の原因は…お互いに相手が邪魔でブロッケンを取り逃がしてしまったというものであった。

そのせいか、秋子さんも美汐もあきれ果てたようにみているだけ。





 

 

 結局今回の出動は第二小隊の評判を落とすだけ落として幕を閉じたのであった。





 

 

あとがき

パソコンが修理から戻ってきてからの第一作目です。

どうもお待たせして申し訳有りませんでした。

今後は少しでもペースを上げて、といいたいのですがAirの発売日、延期したからな。

ちょっと一時、お休みするかも知れないですね。

 

 

2001.07.21

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