機動警察Kanon第056話

 

 

 

 真っ暗闇で汽笛が鳴り響く深夜の埠頭。

シャフトエンタープライズジャパン(SEJ)企画七課課長代理川澄舞はそこにいた。

今、目の前では非合法で世間には公に出来ない取引を行っている真っ最中なのだ。

「…これが例のブツなの?」

舞の言葉に取引相手というか別の支社勤務の同僚が頷いた。

「ああ、これが倉田課長からのお届け物だ」

「そうなの。それで佐祐理は何て言っていた?」

「倉田課長は私には何も。ただこれを川澄さんに渡せと」

そう言うと同僚の男は一枚のCD−ROMを取り出した。

一見するとただのCDなのだが中身はとことんやばいネタでいっぱいのはずだ。

舞はCD−ROMを受け取ると素早く内ポケットへとしまい込んだ。

そしてこの取引のメイン……商品の確認をすることにした。





 

 

 「…中身を確認するから開けて」

舞はブツがしまい込まれている巨大なコンテナの前に立つとそう命じた。

すると男は頷き、透明のアクリル板を端末にはめ込んだ。

そして12桁の暗証番号をすばやく打ち込む。

すると巨大なコンテナが開きだした。

あわてて舞と男はその場から少し離れる。

やがて完全に開ききったコンテナの中には三台の巨大なレイバーが収容されていた。

そしてその姿を確認した舞はニヤリと、他の者には分からない程度はあるが笑ったのであった。





 

 

 

 荷物を受け取った舞はそのまま高速を使ってブツを企画七課が置かれている土浦研究所へと運び込んだ。

ここでは他にも先だっての戦闘で破壊されたファントムも運び込まれ、現在修理中なのである。

そして三台のレイバーを研究者たちに任せると舞は自室に立て籠もった。

そして先ほど受け取ったCD-ROMの内容をチェックすることにした。

そこでCDをパソコンへと入れる。

するとたちまち画面には「パスワードを入力してください。」という文字と問題が表示された。

そこで舞は定められたパスワードを入力することにした。




 

 問1:「舞の好物は牛丼か? Yes/No」

この問題に舞は「はちみつくまさん」と打ち込んだ。

単純にYesと答えただけではこのCDは自動的に消滅してしまうのだ。

問2:「舞の誕生日に佐祐理が上げたのは大きな熊のぬいぐるみか? Yes/No」

「…ぽんぽこたぬきさん」

問3:「舞の愛刀は日本刀? Yes/No」

「…ぽんぽこたぬこきさん」

 

 こんな具合に舞は数十問に及ぶ問題を間違いなく入力していった。

するとやがて「パスワード入力確認」という画面が表示され、そしていよいよ本題の画面が映し出され始めた。

それはいつも朗らか笑顔のアップが映し出された所から始まった。

「あははは〜。舞、お元気ですか?」

舞の上司倉田佐祐理の話はこうして始まったのであった。

 

 

 

二時間経過……





 

 「それじゃあ舞、今度の計画、頑張ってくださいね。佐祐理、楽しみに成果を待っていますから♪」

ようやくと佐祐理さんの話は終わった。

というかCD−ROMの中身は佐祐理さんから舞宛ての私信でしかなかった。

殆どが近状報告であり、今度の計画については全くではないにせよ殆どふれられていなかったのである。

他の者が見たら非常に戸惑っていたことであろう。

しかし佐祐理と長い間組み続け、会社の上下関係を抜きにして無二の親友となっていた二人にはこれで

充分だったのである。

とりあえずCD−ROMを引き出しの中にしっかりしまい込むと舞はさっき運び込んだばかりのレイバーの

状況をチェックするために整備室へと向かって歩き始めたのであった。

 







 

 

 

 そしてそれから三日後。

舞は下手くそな変装をして深夜の公園で二人組の男と会っていた。

だからといって別にデートとかそう言うわけではない。

ただ単に取り引きする、それだけの関係であった。





 

 

 「本当にこいつを貰っても構わないのか?」

舞の話を聞いた男は公園の片隅に置かれているレイバーに目をやりながら尋ねてきた。

ちなみに男はそのレイバーの偉容さにちょっぴりというかかなり興奮している。

そこで舞は黙ったまま頷いた。

するともう一人の男も言った。

「…しかもこんなに報酬まで貰って。本当に良いのか?」

その言葉に舞はもう一度頷き、そして言った。

「…別に構わない。ただしデータだけは必ず持ち帰って。それだけが絶対条件。」

そう言って舞は起動ディスケットを内ポケットから取り出して二人組の男に差し出した。

すると二人組の男は一瞬顔を見合わせたものの、すぐに舞の手から起動ディスケットを奪った。

「今更返せなんて言っても返さないからな」

男の言葉に舞は頷き、そして言った。

「それじゃあ地球防衛軍らしくいっちょバァ〜っと暴れて。アドバイスはするから」

「「おう、分かったぜ」」

二人のテロリストたちは満足げに頷き、一人はレイバーへと乗り込んだ。

そしてその様子を見ていた舞は人知れず口端をゆがませていたのであった。

 

 

 

あとがき

漫画ではお馴染みのブロッケン編です。

ただし一話一話を長くする気はないしぱっぱと終わらせてファントム編第二部にいきたいですね。

 

2001.06.24

 

 

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