機動警察Kanon第051話

 

 

 

 「第一小隊、突入するよ」

 

 みさきの言葉に七瀬留美巡査と柚木詩子巡査の二人は頷いた。

そして二人は大きなシールドを構えると薄暗い倉庫の中へと突入し始める。

ノッシノッシといった感じはKanonやサターンに比べれば重々しい足取りであるものの、力強い歩みは

見る者を鼓舞する。




 

 「がんばれよ〜!!」

「テロリストなんぞちょちょいのちょいだ〜!!」

「国家権力に刃向かう愚か者に悪夢を見せてやれ〜!!」

現場を取り囲む機動隊員や警察官の声援を受けて三機のONEは倉庫の中へと消えた。




 

 

 「やっぱり暗いよね〜」

ONEの照明をつけながら詩子はそう言った。

すると七瀬もうんうんとばかりに頷いた。

「本当、こういう闇の中って嫌なのよね。どこから敵が現れるのか分からないし」

「そうかな〜?」

みさきは首を傾げた。

「何かおかしいところあった?」

そのの言葉に詩子が尋ねるとみさきは「うん」と頷いた。

「だってこんなに明るいのに暗いっていうから」

「へっ!? だって真っ暗じゃない!!」

七瀬は驚いたように思わずそう叫んでしまった。

まあ実際、照明をつけなければ何も見渡せるような状況ではなかったのだから無理もない。

しかしみさきにはそれが分からなかった。

「そうかな? こんなによく見えるのに真っ暗なんて変だと思うよ」

もちろんこれはかってみさきが経験していた闇に比べれば、の話なのだが健常者である二人には

皆目見当も付かない話なのであった。

「…なんだか話が分からないんだけど。」

「…そうだね。まあこんな話は良いや、奥へ行こう」

みさきの言葉に三機のONEは再び奥へと向かって歩き始めた。





 

 

 三機のONEが倉庫のかなりの奥まで進んだとき、一筋の明かりが見えた。

それもかなり明るい光である。

この倉庫の照明はかなり薄暗いので露骨に怪しい。

そこでみさきは七瀬並びに詩子の二人に待機命令を出すとONEを降り、光の発生源へと一人生身で

近づいていった。

 

 

 「ははははっは!! 警察のイヌどもめ!我が地球防衛軍の実力思い知ったか!!」

そこでは一人の男が笑い、叫び声を上げていた。

その様子はだれがどう見てもまともではなかった。

頭のねじが五六本無くなっているとしか思えない様子なのであった。




 

 「やはり犯人だよ」

みさきは目の前のレイバーを見てそうつぶやいた。

みさきの目の前にいるレイバーは目撃通りヘラクレス21、しかも鉄骨を持っているのだ。

しかも搭乗者は自らをテロ組織地球防衛軍を名乗っているのだ。

これは間違いないであろう。

というわけでみさきはすぐに二人の同僚へと戻っていった。




 

 

 「といわけだから留美ちゃんに詩子ちゃん、一気に片をつけようね」

みさきのことばに七瀬は首を傾げた。

「…一体何がというわけなの?」

すると詩子さんがちょっとだけ口をとがらせていった。

「駄目だよ、七瀬ちゃん。こういう時は頷くのがお約束なんだよ」

「へ!? そうなの?」

するとみさきと詩子は頷いた。

「留美ちゃん、もう少しノリが良くないと駄目だよ。雪ちゃんだってつき合ってくれるんだからね」

「そうそう。乙女への道は遠く険しいものなのよ」




 

 

 まあそんな緊張をほぐすためのスキンシップはすぐに終わり、三人は犯人逮捕への布石を

ちゃくちゃくと進めていった。

すなわち逃げ場がないように逃走経路を取り囲み、一斉に襲いかかる準備をしている訳だ。

これならば第一小隊が使用するのを拒否したサターンよりも性能の劣るONEでも何とか

捕縛出来るであろうと考えたわけだ。

いつの世も戦いにおいては質より量、数に勝る側の方が圧倒的有利なのであるのだから。

「それじゃあ合図を送るから一斉に襲いかかるよ」

「わかったわ」

「わかったよ」

これで準備は完全に整った。 




 

 

 「それじゃあ行くよ!」

みさきの合図で三機のONEは三方向から一斉にヘラクレス21に襲いかかる。

すると先ほど馬鹿笑いしていた男は慌ててコクピットを閉じるとONE三機を迎え撃つ。





 

 「ちぇすとー!!」

一人突出した七瀬の駆る二号機はそう叫びながらスタンスティックを振り下ろす。

とヘラクレス21はその手にしていた鉄骨でくい止めた。

そしてそのまま二号機を鉄骨で殴りつけてくる。

「こなくそ〜!! させるか〜!!」

二号機は巨大なシールドで受け流そうとしたのだが失敗した。

そのままシールド表面を流れた鉄骨は二号機の頭部を粉砕した。

そしてその勢いで二号機は派手に転倒する。

勝ち誇ったようにヘラクレス21は鉄骨を振り下ろそうとした。

そこへみさきと詩子の駆る二機が追いついた。

「今だよ!!」

「わかっているって!!」

詩子さんはそのまま振り上げていたヘラクレス21の右腕を取り押さえた。

すると犯人は慌てたように三号機をふりほどこうとする。

「そうはさせないんだよ!!」

みさきはそう叫ぶとヘラクレス21の右脇腹にスタンステイックを突き立てた。

たちまち右脇腹からスパークし、ヘラクレス21は動きを止める、はずであった。

ところがヘラクレス21は動きこそ鈍ったものの他は全く支障なく二機のONEを吹き飛ばした。

「「きゃあー!!」」

 

 そしてヘラクレス21は未だに動けないでいる二機のONEに近づいてきた。

どうやらとどめを刺すつもりらしい。

しかし体に強力なショックを受けた二人はまだ上手く機体を立て直すことができない。

まさに危機一髪!!

しかしその時突然ヘラクレス21は動きを止めた。

 

 「あれ? どうしたんだろう?」

「本当だ。どうしたんだろうね?」

マイペースの二人がそんなことを言っているとヘラクレス21は前のめりに倒れた。

その背中というか背骨部分にはスタンスティックが突き刺さっていた。

どうやらヘラクレス21に致命傷を与えたのはこの一撃であったらしい。

そしてその後ろには頭こそ無くなってしまったものの未だ健在な二号機が立っていたのであった。

 

 

 「ほれほれ、きりきりと歩かんかい!!」

駆けつけた機動隊委員にボコボコにされた地球防衛軍のテロリストは手錠を掛けられ乱暴に

護送車へと放り込まれた。

そしてそのまま排気ガスをまき散らしながら護送車は事件現場を走り去っていく。

そんな様子をあちこちぶっ壊されたONEの足下で第一小隊の足下で隊員たちは見物していた。

 

 「みんな、ご苦労様。今日はもう撤収よ」

「は〜い(×9)」

こうして特車二課第一小隊を震撼させた事件は終わったのであった。

 

 

*後日談

どうやって説得したのかは不明だが、サターンの採用は正式に見送られた。

そしてサターンを引き取りに来たトヨハタオートの社員たちの顔は恐怖におののき、青ざめていたという・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

*後日談その2

雪見:「由起子さん、どうやって課長とか上層部を説得したんですか?」

由起子:「…サターンには第二小隊の沢渡真琴がピッタリの人材、って言ったのよ」

雪見:「なるほど。それは上層部も引きますね」

由起子:「でしょう(でも真相は違うのよ…。秋子さんに頼んだ、なんて言えない……)」

 

その結果、謎ジャムが警察上層部・トヨハタオートの関係者に贈られた、などと言うことは企業秘密である……。

 

 

 

あとがき

はっきり言ってこんなに長くなるとは予想もしていませんでした。

本当はこの半分ぐらいの長さを予定していたんだけどな。

 

ちなみにしばらくこの「機動警察Kanon」はお休みさせていただきます。

ちょこっと他のも書きたいし。

なにより今はONEモードなのだ。

 

2001.05.25

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