「失礼します」
ドアをノックすると深山雪見巡査部長は隊長室へと入った。
するとそこには書類と格闘する第一小隊隊長小坂由起子の姿が見えたのであった。
「あら、どうしたのかしら?」
由起子さんが書類から目を離したので雪見はさっきみさきと話すことで固めた自分の意見を由起子さんに話した。
すると由起子さんは大きく頷いた。
「私も貴方の意見に同感、というか今上申書を書いている意中なのよ」
「そうだったんですか、良かったです」
由起子さんの言葉を聞いた雪見は安心してそう言った。
すると由起子さんはとたんに険しい顔をした。
「でもこの上申書、提出しても聞き入れてもらえるかどうか……」
「そ、それは……」
一番あり得る可能性に二人は黙り込んでしまった、がやがて由起子さんはキッとした表情を浮かべた。
「なんとしなくても説得しなくちゃね」
「はい、そうですね」
それから数時間後、由起子さんはトボトボと課長室を後にした。
案の定いうべきだろうか、課長の説得に失敗したのだ。
というよりも説得する方がはるかに難しかったのだが。
「どうでしたか?」
出迎えた雪見に由起子さんは淋しい笑顔を見せた。
「やはり駄目だったわ。色々、言ったけどてんで聞き入れてもらえなくて」
「そうですか…、となったら私たちの手で何とかしなくてはいけませんね」
「ええ、そうね」
そしてこの日はには何事もなく過ぎていった。
翌日も第一小隊がまだ当直というか当番であった。
それ故に第一小隊の面々はいつでも出動出来る態勢で日々の業務を遂行する。
そこへ突然出動を知らせるサイレンが鳴り響いた。
どうやらテロ事件が発生したらしい。
机に向かっていた隊員たちは一斉に立ち上がるとハンガーへと駆けだした。
第一小隊の面々がたどり着くとそこには意外な光景が目に飛び込んできた。
それは出動準備の整ったレイバーがONEであり、サターンは整備体制のまま放置されていたからである。
「ちょ、ちょっとこれは一体何なのよ!」
二号機パイロット七瀬留美がそう叫ぶと三号機パイロット柚木詩子もうんうんと頷いた。
「たしかに七瀬ちゃんの言うとおりよね。これは一体どういう事なのかな?」
すると整備班班員たちを指揮していた美坂香里班長が振り向きざま叫んだ。
「それは由起子さんの指示なんだから文句があったらそっちに言ってね!!
もっとも私も今回の処置は賛成だけど」
「一体どういう事なんだよ?」
「俺が知るか!!」
折原浩平と長森瑞佳の二人がいつものようにやっているとそこへ由起子さんが現れた。
「はいはい、みんな静粛に。色々と話を聞きたいでしょうけど時間がないから後にしてね。
というわけで出動!!」
理由も分からず疑問点だらけであったがとりあえず第一小隊は事件現場へと向かって出動した。
現場へ着く途中に今回の件についての事情を聞いた隊員たちは現場に着くと非常に燃えていた。
なんせプロ意識を持って頑張っていた仕事を汚い手段で利用していたというのだ。
これに憤慨しない者はいない、というわけで現場の隊員たちの志気は非常に高かった。
「隊長!! 早く突入しましょう!!」
なかでも特に燃えていた七瀬は第二小隊の誰かのように興奮しながら叫んだ。
もちろんその姿は完全に体育会系のノリ、乙女らしさはみじんも感じられなかった……。
そんな七瀬を浩平はからかうように宥めた。
「おいナナピー、そんなに鼻息荒くするなよ。鼻の穴が大きくなるぞ」
「やかましいわー!!」
「浩平も七瀬さんも止めてよ〜!!」
…まあこれは現場でよく見られる光景ですね……。
アホなことをやっている者は無視しておくとして現場は非常に緊張していた。
「特車二課第一小隊の方々ですね」
レイバーの準備・指揮の準備をしていると現場の責任者とおぼしき人物が由起子さんに声を掛けてきた。
「はい、そうですが何か?」
すると現場の責任者は現在の状況を話し始めた。
犯人はレイバーを使って工事現場を破壊したこと、そのレイバーは菱井のヘラクレス21であること。
そして今犯人は目の前の巨大な倉庫内に立て籠もっていることなど。
そして現場の状況を懇切丁寧に教えてくれた現場責任者は話し終えるとスタスタとその場を去っていった。
現場の状況を聞いた由起子さんは各指揮者を呼び集めると相談し始めた。
突入し、犯人を捕らえる算段を練り上げるためである。
しかし今回の件ではなかなか状況が厳しく、犯人逮捕は非常に困難そうであった。
が、やがて方策を決定したためその場に第一小隊の面子が全員集められたのであった。
「さて今回の件ですが指揮車が一緒にあの倉庫の中に突入するのは非常に危険なので
一号機パイロットの川名みなき巡査部長に任せます」
由起子さんの言葉にその場にいた全員が頷いた。
なんせパイロット三人の中で一番、指揮が執れそうな人物といったらみさきぐらいしかいなかったからである。
七瀬はちょっと血の気が多いところがあるし詩子はお調子者であったからである。
「それじゃあ留美ちゃんに詩子ちゃん、準備良いかな?」
両脇に立つONEのコクピット内にいる二人にそう呼びかけると二人から返事が返ってきた。
「了解よ」
「任せておいてよ」
その返事を聞いたみさきは大きな声で叫んだ。
「第一小隊、突入するよ!!」
あとがき
後一話で今回のエピソード終了です。
まさかこんなに延びるとは思ってもいなかった・・・・。
2001.05.22