機動警察Kanon第047話






 
 
 
 サターンが特車二課に運用試験のために仮配属されて一週間が経った。

この間はずっと第二小隊が当直であったので第一小隊は事故処理ぐらいしか出動することはなく

その正価を発揮することはなかった。

だがとうとう第一小隊当直の出番がやってきた……。




 
 
 「はぁ〜、当直ってやっぱり暇だよね、雪ちゃん」

当直室で多量に買い込んだ夜食を食べながら川名みさき巡査部長は言った。

すると雪ちゃんこと深山雪見巡査部長は大きなため息をついた。

「みさき、あんたね……」

「あれ?どうしのかな。お腹が空いたの? それなら私のお夜食、ちょっと分けてあげるよ」

そういうとみさきは色々詰まったコンビニの袋を突きだした。

その中には菓子パン・おにぎり・お菓子などなど色々な物がてんこ盛りに入っていた。

雪見はまた大きなため息をつくとその中に入っていたおにぎりを一個取り出した。

「みさき、これ貰うわ……」

そうつぶやくとさっそくおにぎりを開封してかぶりつく。

そんな二人の上司の美味しそうにたべる姿に上月澪巡査は物欲しそうに眺めている。

とその様子に気が付いたみさきは澪に声を掛けた。

「澪ちゃんも食べる?」

すると澪は激しく頷き、さらさらとスケッチブックに何かを書いた。

『ありがとうなの。遠慮なくいただくの』

そして澪は袋の中に入っていたサンドウィッチを取り出してかぶりつく。

『おいしいの〜♪』

このときはまだ特車二課はきわめて平穏無事なのであった。




 
 
 だがそんな平和な時間は長くは続かない。

パトライトが点滅し回転、そして警報が流れ出したのだ。

慌てて三人の当直組は靴を履き、当直室を飛び出す。

そしてそのまま一気にハンガーへと走る。

その間中、スピーカーからは事件のあらましを告げ続けていた。





 
 
 「北川くん!! 一号機の準備は?」

一番最初にハンガーにたどり着いた雪見は整備員たちを指揮していた北川に怒鳴った。

すると北川はビクつきつつも頷いた。

「一号機はいつでも出撃可能!! 出せます!!」

その言葉を聞いた雪見は振り向きざま走ってきたみさきと澪に叫んだ。

「早く乗り込みなさい!! 一分で出るわよ!!」




 


 二課を飛び出した一団は一路、現場を目指して突っ走る。

やがて十数分後には事件発生現場に三人はたどり着いた。

そこでは一台のヘラクレス21が鉄骨を持って暴れているところであった。

ちなみにこのヘラクレス21,菱井インダストリー製でありこの春生産が開始されたばかりの新型なのであった。




 
 

 「みさき!! 周りに被害を出す前に速攻でしとめるわよ」

『わかった、がんばるよ』

みさきは雪見の指示に元気よく頷いた。

みさきの返事に満足した雪見はただちにキャリア担当の澪に指示した。

「上月さん!! 準備でき次第起動してちょうだい」

『分かったの!!』

澪は無線のスイッチをカチャカチャと二回押し、了承の合図を雪見に送った。

「それじゃあ起動!!」

『はいなの!!』

澪は運転席の下についているデッキアップ用のスイッチを入れた。

するとたちまち油圧ジャッキが荷台を跳ね上げる。

そしてサターンがその勇姿を犯人や見物している市民にまざまざと見せつけた。

いままでのONEとは違うその姿に市民達は歓声を上げる、


「それじゃあ行くよ〜」

みさきはフットレバーを踏み込むとサターンをヘラクレス21へと近づけた。





 
 

 「そこのレイバーの搭乗員!! 機体を停止して速やかに投降志しなさい!!」

雪見は強圧的な態度で犯人に臨むが犯人は投降素振りも見せない。

それでも何度も呼びかけているとやがて外部スピーカーから犯人が怒鳴りつけてきた。

「うるへ〜ぞ〜!! 俺は今気持ちよく運転しているんで〜!! 邪魔する奴は容赦せんぞ〜!!」

「…どうやら酔っぱらい運転ね」


雪見はイヤそうな表情を浮かべた。


ちなみにレイバー犯罪の大半は事故及び今回のような酔っぱらい運転がかなりの割合を占めている。

そして雪見は今までの豊富な経験で酔っぱらいの引き起こす事件の質の悪さを重々承知していた。

「みさき!! やりなさい!!」

「分かったよ」

雪見の指示にみさきは一気にヘラクレス21の懐に潜り込んだ。

そしてヘラクレス21の腕を取り押さえようとした。

だが犯人というか酔っぱらいは鉄骨を振り回して逃れようとする。

「甘いんだよ!!」

みさきはヘラクレス21の持っていた鉄骨をとっさの動作ではじき飛ばした。

すると鉄骨は二機からかなり離れた地面に突き刺さった。





 「いい加減に投降したほうが良いよ」

みさきはそう勧告するが酔っぱらいは聞く耳を持たないでなおも暴れようとする。

そこでみさきは指揮を執っている雪見にある許可を求めてみることにした。

「ねえ雪ちゃん、せっかくだから銃を使ってみたいんだけど良いかな?」

すると雪見はちょこっと考え込んだ後、頷いた。

「わかった、良いわよ。でも周りに被害は出さないようにね」

「了解だよ、雪ちゃん」

みさきはそう叫ぶとサターンの装備する42mmオートカノンを抜いた。

そして素早くヘラクレス21に狙いを付けた。
 
 「おうぅ!?」

42mmオートカノンに狙いを付けられた酔っぱらいは思わず腰を抜かしそうになった。

ちなみに小便は即座に漏らしている。

とみさきは42mmオートカノンを空に向け、そしてぶっ放した。
 

 ズギューンー
 
 派手な銃声とともに銃弾は空高くに消えた。

そしてみさきはすかさずヘラクレス21に再び狙いを付ける。

「投降しないと今度はあなたを撃っちゃうよ」

みさきの二度目の勧告に酔っぱらいはとうとう投降を決意したのであった。






 
 
あとがき
今回のこのエピソードが終わるのはあと三回ぐらいではないでしょうか?

本当予定を超過する・・・。
 
 
2001.05.06
 

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