「ええ。通称はサターンよ」
由起子さんは通称名を隊員達に教えるとさらに詳しく機体について説明を開始した。
それはもう機体について色々と詳しくだ。
例えば装備品に42mmオートカノン・20mmバルカン砲・スタンナイフ等を装備していること。
kanonにはかなわないもののONEを遙かに凌駕する運動性を保有していること。
さらにKanonを上回るパワーを保有していること。
それらはいずれも旧式のONEを運用している第一小隊の隊員達にはうれしい話であった。
なぜならば第二小隊が新設され、そのめざましい騒動(良いことだけではないということだ)によって
第一小隊の影がすっかり薄くなってしまっていたからである。
しかしこれで日陰者扱いもこれでお終いだ!!みんなそう思うとうれしくたまらなかったのだ。
だがその中には当然心配性の者もいるわけで由起子さんに突然の今回の件について尋ねてみた。
「…すいません。今回試験運用ということですが当然採用されないこともあるんですよね?」
この言葉はもちろん特車二課第一小隊の良心、深山雪見巡査部長の言葉だ。
すると由起子さんは笑いながら言った。
「確かに試験運用だから採用されないことだってあるけどほとんど採用決定よ。
だってすごい条件が良いんだから」
そこで由起子さんはさらに今回の運用試験のいきさつについて話し始めた。
「つまり今回の運用試験ではお金が全くかからないからということですか?」
由起子さんの説明に雪見はそう反応した。
すると由起子さんはええと頷いた。
「その通りよ。しかももし本採用するのなら半年間の修理用のパーツ代は半額ですって。
でなければ金食い虫の特車二課が一年に二機種も変換できるわけないでしょうけどね」
それを聞いた隊員達は何とも言えない表情を浮かべた。
「天下の警視庁がせこいな」
「で、でも安くあげるのは良いことだよ」
「…私たちにはその程度の価値しかないのでしょうか……」
「みゅ〜(哀)」
『けちくさいの』
「もうちょっと奮発してくれても良いのにね♪」
まあみんな色々けちもつけたものの新型を使えるのはうれしいことなのでみんなその場は喜び勇んで解散したのであった。
そしてそれから数日後。
第二小隊の休暇も明けたよく晴れた日、隊長室で由起子さんはそわそわしていた。
いよいよ新型の運用試験は今日から、というわけで新型レイバーが二課に来るのを今か今かと
待ちわびていたのだ。
「ずいぶん落ち着きがないわね」
隊長室をうろうろ歩き回っている後輩の姿を見て秋子さんは微笑んだ。
すると由起子さんは秋子さんに尋ねた。
「やはりそう見えますか?」
それに対して秋子さんは頷いた。
「まるで奥さんが分娩室に入っていつ子供が生まれるか? って廊下で待っているお父さんみたいよ」
秋子さんの言葉を聞いた由起子さんははぁとため息をついた。
「…先輩、私は独身ですし第一女なんですけれど」
「わかっているわよ。でも隊長さんなんだからもう少し落ち着かないとね♪」
「…はい、分かりました」
やはり由起子さんでは秋子さんにはかなわないようである(笑)。
「はぁ〜、第一小隊良いなぁ〜」
真琴はデスクに俯してつぶやいた。
いつもの真琴らしからぬ反応に祐一が声を掛けた。
「おい真琴、一体どうしたんだ?」
祐一だけでなく他の隊員達も真琴の周りに集まってくる。
そこで真琴は顔を上げると憂鬱の原因を話した。
「今度第一小隊に配備されるサターンって……」
真琴の話を聞いた祐一達は一斉に真琴の周りを離れた。
「ちょ、ちょっと何で真琴の話を無視するのよ!!」
真琴がそう叫んだので仕方が無く祐一は応えてやった。
「当たり前だろ!! 42mmオートカノンと20mmバルカン砲が羨ましいなんてぬかしやがって!!」
「何でいけないのよ!! そんなすごいのぶっ放したらストレス発散に良いでしょ!!」
「任務でストレス発散するな!!
第一20mmバルカン砲なんぞぶっ放したらFRPのレイバーなんぞ跡形も無くなっちまうぞ」
「別にいいじゃない!! 犯罪者なんてポポイのポイよ」
「真琴、その辺にしておきなさい!!」
さすがにやばい話になってきたので美汐が真琴を止めた。
すると祐一相手には反発してきていた真琴も美汐には素直に従う。
「あうぅ〜、美汐ごめんなさい……」
「わかればいいのです。そんな娑婆の人様に聞かれたらクビが飛ぶようなことは言ってはいけませんよ」
これで真琴はようやくとおとなしくなってくれたのであった。
あとがき
なんか今回のこのお話、長くなってしまいそうな予感の今日この頃です。
さて今回第一小隊の事を書いていて思ったこと、それは七瀬と詩子の二人が書分けられん、というか他のキャラと区別がつかない・・・。
というわけで出番がありません。
こんなに沢山出すのが大変だとは思ってもいなかったわ。
2001.05.04