東京ヘリポートでの騒動から一週間、ようやくと特車二課は平穏な生活に戻った。
第一小隊の装備する98式ONEが復帰したのだ。
これによって滅茶苦茶になっていたシフトが元に復帰。
やっと第二小隊の面々はお休みをもらえることになったのであった。
「それにしても今回の修理は時間かかったよね〜」
名雪は修理を終えて戻ってきた第一小隊の三機のレイバーを見下ろしながらそうつぶやいた。
すると隣にいた祐一が頷き、そして言った。
「確かな。だが無理もないだろ。
Kanonは純警察用だから修理しやすいように出来ているがONEは元は作業用の試作機だからな」
量産機ではない試作機の整備性の低さは言うまでもないことなのだ。
当然そんなことはわきまえている名雪はうんうんと頷いた。
そして黙ったまま三機のONEを見下ろし続ける。
とパタパタパタと二課構内を走っている音が聞こえた。
その音はだんだん近づいてくる。
やがてハンガーに姿を見せたのは第一小隊の川名みさき巡査部長であった。
「わっ!みさきさんだよ〜」
「ああ、みさき巡査部長だな」
みさき巡査部長の突然の登場に驚いた二人が声を上げるとみさきはにっこり微笑んで言った。
「あれ? なゆちゃんに祐一ちゃんも来ていたんだ〜」
すると名雪はかしこまって返事した。
「はい! ONEの修理が終わって二課に戻ってきたって聞いたものですから」
「なゆちゃん、返事が固いよ〜」
「で、でも……」
陸上部出身の名雪には先輩に対しては気楽な口の利き方ができないのだ。
名雪が困っているので祐一は仕方が泣く助け船を出した。
「みさき巡査部長、名雪の奴は体育会系なもんで先輩にはため口がきけないんだよ」
「そうなんだ、残念だよ……」
しょんぼりしてしまったみさきに名雪は慌ててしまい何とかフォローしようとした。
が、その前にある声が聞こえてきた。
「みさきっ、どこよっ!!」
「あっ、ゆきちゃんだよ」
みさきは自分を呼ぶ声の主を一発で当てた。
さすがに長年親友をしていたのは伊達ではないようだ。
やがてゆきちゃんこと深山雪見巡査部長が三人の前に現れた。
「あら、みさきったらこんな所にいたのね」
そこまで言ったところで雪見巡査部長は名雪と祐一の二人に気が付いた。
「あら、あなた達もこんな所にいたのね。秋子さんが探していたわよ」
「「そ、そうですか!?」」
「ええ、そうよ」
「ありがとうございます。それでは私たちはこれで……」
雪見の言葉に祐一と名雪の二人は第一小隊のハンガーを出ると第二小隊のオフィスへと急いで駆けていったのであった。
「あ〜あ、行っちゃったよ。」
祐一と名雪を見送ったみさきは残念そうにつぶやいた。
もう少しおしゃべりしたかったのだ。
「はいはい、おしゃべりはあとにしてちょうだい。小坂隊長が呼んでいるのよ」
「そうなの?」
みさきの問いかけに雪見は頷いた。
「わかったよ。それじゃあ行こ!!」
みさきは駆け出し、その後を雪見は追いかけたのであった。
みさきと雪見両巡査部長が第一小隊オフィスに入るとそこにはすでに全隊員が集まっていた。
もちろん隊長の小坂由起子警部補もいる。
「すいません。みさきを見つけるのに手間取ったものですから」
雪見がそう謝るとみさきは頬をふくらませた。
「ひどいよ雪ちゃん。私のせいにするなんて」
「あんたは黙っていなさい」
雪見はみさきの口を閉ざさせるとそのまま引きずって整列させた。
「さて全員集まって貰ったのはほかでもありません。
実はこのたび第一小隊に新型機が導入される運びとなりました」
由起子さんの言葉に第一小隊の面々にどよめきが起こった。
「それ本当なの? だよもん」
「みゅ〜♪ みゅ〜♪ みゅ〜♪」
「ほんとうですか?素晴らしいです」
『新型うれしいの』
他の隊員達も次々とうれしさを言葉にした。
すでに採用されて一年以上経つONEの限界をひしひしと感じていたのだ。
当然の事ながらうれしい雪見が皆を代表して由起子さんに尋ねてみた。
「一体何処のメーカーの何という機体を導入するのですか?」
すると由起子さんはちょっと残念そうな顔をして言った。
「…残念だけど本採用ではないの。試験運用してみてその結果次第、ということね」
由起子さんの言葉を聞いた隊員達に一瞬落胆のため息が漏れた。
しかし由起子さんは続けた。
「今度、試験運用する機体はトヨハタオートのSRX−70」
『「「「「「「「「トヨハタオートのSRX−70!?」」」」」」」」』
9人?の言葉が思わずはもった。
「ええ。通称はサターンよ」
あとがき
予告通り第一小隊ネタです。
実は一度書き直してしまいました。
プロットと滅茶苦茶はずれてしまい、続かなくなってしまったものですから。
またここまで書けば分かると思いますが今回のネタはTVアニメ版「栄光の97式改」です。