自衛隊所属の二機のヘルダイバーは東京ヘリポートを突き進む。
がやがて先頭をとっていたヘルダイバーが立ち止まり、そして後続の機体に止まるよう指示した。
「何事ですか、神尾一尉?」
部下の問いかけに指揮官神尾晴子一尉は怒鳴りつけた。
「アホなことぬかすな!! 敵に決まっておろうが!!」
そのあまりに馬鹿でかい声に敵も気がついたのであろう、たちまち三機のエイブラハムに取り囲まれた。
「あかん!! 敵に囲まれたやないか!! あんはんがクズクズしているからやで!!」
「…私が悪いのですか?」
部下の言葉に神尾一尉は大きく首を縦に振った。
「そうや!! …それにしてもビーム砲を積んでいるとかいうレイバー、ここでは見かけへんな」
その場にいるあちこち損傷している三機のエイブラハムを見て神尾一尉はそうつぶやいた。
その時、時々ちらついていたもののキチンと作動していたモニターに異常が発生した。
モニターが完全に砂嵐に包まれたのだ。
「いよいよ本命のお出ましやな〜」
神尾一尉は舌なめずりするとシートを移動して目標を肉眼で確認した。
「よっしゃ!!行くで〜!!」
神尾一尉は意気揚々と部下に命令を下すとファントムとエイブラハムとの戦闘に突入した。
「あら?また光ったわね。」
監禁されているホテルの窓から外を眺めていた第一小隊隊長小坂由起子警部補はつぶやいた。
するとその声を聞きつけた一号機指揮者深山雪見巡査部長が声をかけてきた。
「どうしたんですか隊長?」
「どうやらまた始まったみたいよ」
「…またですか」
由起子さんの言葉に深山巡査部長がつぶやいたその時、しっかり錠がかけられていたはずの扉が勢いよく開かれた。
すると特殊部隊御用達のMP−5を装備した黒ずくめたちが姿を現した。
そして一人の特車二課隊員を乱暴に部屋に放り込んだ。
「ちょっと警察官に向かって何するのよ〜!!」
投げ込まれた警察官は拳を突き上げて抗議した。
しかし黒ずくめたちはその言葉を完全に黙殺し、そのまま部屋を出ると再び扉に錠をかけた。
そんな黒ずくめたちの姿に腹を立てたのか警察官は扉をけっ飛ばした。
「公務執行妨害の現行犯なんだからね〜!! 私を解放しなさい〜!!」
その姿を見た由起子隊長と深山巡査部長は顔を見合わせ、そして警察官に声をかけた。
「「沢渡巡査、どうやら無事だったようね」」
その言葉に民間人の前で醜態をさらしていた真琴は振り返った。
「小坂隊長に深山巡査部長!! 無事だったんだ!! そういえば他のみんなは?」
真琴の言葉を聞いた由起子隊長は苦笑いし、深山巡査部長は肩をすくめた。
「…あそこを見れば分かるわよ。」
深山巡査部長の言葉に真琴が示された場所を見るとそこにはテーブルに並べられた料理に群がる第一小隊の面々の姿があった。
「うぅぅ…幸せだよ、雪ちゃん〜」
これは多量のお皿を空にし、現在も食べ続けている一号機パイロット川名みさき巡査部長の言葉だ。
『お寿司がこんなに沢山食べられて幸せなの』
スケッチブックに幸せさをにじませているのは上月澪巡査だ。
「いやー、二課にいるとこんな豪勢な食事は食べられないもんな」
そう言って多量の料理をパクパクと食べている折原浩平巡査。
そんなパクついている折原巡査を冷ややかな目で見ている七瀬留美巡査は
「ガツガツと見苦しいわね、折原」
とのたまわった。すると
「うるさい!!」
その言葉を聞いた折原巡査は思わず叫んだ。
しかし七瀬巡査は余裕綽々といった表情で言った。
「まああなたなら無理もないけどね、私のような乙女ならいざ知らず」
「乙女がそんなに食うんかい!!」
実際のところ七瀬巡査の手にした大皿の上には料理がてんこ盛りになっていたのだ。
「うるさいわね!! お腹が空いていたのよ!!」
「相変わらず甘い物は沢山食べるのね〜」
三号機パイロット柚木詩子巡査の言葉に親友で指揮者でもある里村茜巡査は
「…甘い物は好きですから」
と頷き、大皿に山盛りになっているワッフルに手を伸ばした。
無論、ワッフルには蜂蜜や練乳がたっぷりとかけられている。
「みゅ〜♪」
そんな二人のやりとりと後目に椎名繭巡査はてりやきバーガーをパクついていた。
「何だかみんな楽しそう……」
指をくわえてつぶやいた真琴の言葉に由起子隊長と深山巡査部長はこめかみを押さえた。
「…あなたも食べていて良いわよ」
「本当!? ラッキー♪ 肉まん、いただき〜♪」
由起子隊長の言葉に喜んだ真琴は元気に料理の並ぶテーブルへと突進していった。
「…犯人逮捕出来ますかね?」
「…さあ……」
真面目さゆえに割を食っている二人はため息をつくしかなかった。
あとがき
とりあえず研修中の宿であるホテル内で暇つぶしに書きました。
出だしがうまくいかなかったけど第一小隊の面々の話は一時間で書き上げたものです。
私はこういうのりの話の方がすきだな〜。
2001.04.14