機動警察kanon第038話
 
 
 
 
 「連絡、ありませんね……」

暗闇に包まれた東京エアポートシティーをじっと見つめながら一号キャリア担当美坂栞はつぶやいた。
 




 二機のkanonが東京エアポートシティーに突入してから一時間余り…。

その間、予想されていたこととはいえ全く連絡が付かないのだ。

不安の声を漏らした栞の言葉に二号機キャリア担当月宮あゆもうんうんとうなずいた。

「本当、祐一君や名雪さん、天野さんに真琴ちゃん、大丈夫かな……?」

「そうですよね! 本当心配です……」

そんな二人のやりとりを聞いた秋子さんにっこり微笑み、そして二人に言った。

「あの子達なら大丈夫ですよ。なんといってもみんな腕利きなんですからね」

「それはそうですけど……」

「うぐぅ、秋子さんはそう言ってくれるけどやはり心配だよ〜」
 





 その時、橋の向こうの暗闇の中に白い影が映った。

「ひっ! あ、あれ何なんだろう?」

幽霊やらお化けやら怖い物が苦手のあゆは一瞬ビクついた。

やがてその白い影は秋子さん・栞・あゆの三人の元へと近づいてくる。

「こ、怖いよ〜」

あゆは秋子さんと栞の陰に隠れた。

そんなあゆの様子に栞は笑いながら言った。

「大丈夫ですよあゆさん。あれはkanonです。」

「へっ!? そうなの?」

近づいてくる白い陰の正体がkanonと聞いてあゆは顔を上げた。

するとそれは確かに99式「kanon」であった。

「本当だ〜。あれは名雪さんのケロピーだよ」

あゆのその言葉とともにケロピーは立ち止まると名雪がコクピットから飛び出してきた。

そして名雪は叫んだ。

「お母さん!! 大変だよ、祐一と真琴と天野さんが!!」

その言葉を聞いた秋子さんはにっこり微笑み、そして言った。

「真琴はどうかははっきりしないみたいだけど祐一さんと美汐ちゃんは無事なようね」

「へっ!?」

戸惑う名雪の耳元にサイレンの鳴り響く音が聞こえてきた。

あわてて振り返るとそこには指揮車の赤色灯が点滅しつつも四人のいる方向へ近づきつつあったからであった。

そして指揮車は名雪達四人の前に来るとキッと止まった。

そして中からはいつものように笑っている祐一と表情をこわばらせた美汐を顔を出した。

「よう名雪、無事だったな」

祐一の言葉を聞いた名雪はやっとほっとしたような表情を浮かべた。

「良かったよ〜、祐一と天野さん、無事だったんだね〜」

その言葉に祐一は笑いながら頷いた。

「当たり前だろ。ちゃんと『俺らも何とかする!!』って言っただろうが」

「そうだね〜」

そこへ栞とあゆも加わった。

「うぐぅ、祐一君無事で何よりだよ」

「良かったです、心配したんですよ」
 
 






 そんなほのぼのした雰囲気を無視して美汐は秋子さんにくってかかった。

「秋子さん!! 今すぐ真琴の救出を!!!」

それを聞いた秋子さんはニコニコしながらも首を横に振った。

「駄目です。今すぐ許可するわけにはまいりません」

「どうしてなんですか!!」

いつもの沈着冷静な態度は一体どこへ行ったのやら。

そんな美汐の様子に祐一・名雪・あゆ・栞は驚きの表情を隠しきれないでいた。

しかし秋子さんはそんな美汐の様子を気にもせずに続けた。

「今の一号機の状況であそこにまた送り込むわけには行きません」

「し、しかし真琴が!!」

「今すぐに救出に行けないだけです。

現在ここに整備班の方々が急行中ですからその到着を待ち、きちんと整備してからです。」

「………」

秋子さんの言葉に美汐はうなだれた。

秋子さんの言葉に理があることに納得したからであろう。

というわけで秋子さんをのぞいてはみんな気が沈んだまま整備班の到着を待つこととなったのであった。
 
 








 それから十数分後、ようやく待ち望んでいた整備班の面々が現場に到着した。

機動性を重視してかトラックではなくヘリコプターでの到着だ。

ヘリからおりた整備班長美坂香里はキャリアに駐機してあるケロピーを一瞥すると叫んだ。

「とっとと一号機の電池載せ替えなさい!! それと電子回路のチェック忘れないで!!

ぐずぐずしていると東京湾にたたき込むわよ!!!!」

場所が場所だけに北川を筆頭とする整備班班員たちは香里の言葉をマジに受け取ったらしい。

あわてふためきつつも必死に整備を開始する。

そんな班員たちの様子を見た香里は満足げに頷くと秋子さんに話しかけた。

「秋子さん、状況はどうですか?」

その言葉を聞いた秋子さんは隊員達には見せなかったため息をついた。

「状況は最悪ね。第一小隊とは全く連絡が付かないし真琴が捕まってしまったし」

「…実はさらに悪い知らせがあるんですけど構いませんか?」

「…聞かないことにするわけには行かないもの。教えてちょうだい」

「わかりました。それでは……」

香里は秋子さんに現状を話したのであった。
 
 
 




 「そう、東京で同時爆破テロが発生したというね」

香里の話を聞いた秋子さんはさっきにもまして大きなため息をついた。

「そうです。ですからこの現場に増援はまず無いものと……」

「犯人達は準備周到に今回の事件をおこしたというわけね」

「…そういうことになりますね。」

秋子さんと香里はため息を漏らしながら顔を見合わせたのであった。
 
 



あとがき

とりあえずあと三回ぐらいでファントム編おわるかな〜と思っています。

…頑張ろう。
 
 
2001.04.08

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