「祐一たち、大丈夫かな〜?」
名雪はケロピーを走らせながら必死になって逃げまくっていた。
その後を二機のエイブラハムがやはり必死になって追ってくる。
とはいえ名雪が駆るケロピーは軽快さが売りの最新鋭99式「kanon」だ。
重装甲でハイパワーの軍用機、それも一昔前のものでは足の速さが全然違う。
それゆえグイグイと追っ手を振り切っていく。
やがて二機のエイブラハムは完全に姿が見えなくなった。
そこで名雪は走るのを止め、ゆっくりと歩き始めた。
バッテリーの残量が少しばかり心許なかったからだ。
というわけで暗闇に包まれたビルの中を名雪とケロピーはガシャガシャと歩いていく。
もちろん周囲は厳重に警戒しながらだ。
まったく増援が期待できないので奇襲されるわけには行かないからだ。
それが功を奏したのであろう、名雪は何者かの気配を察知した。
「そこにいるのはいったい誰だよ〜!!」
名雪は外部スピーカーでそう叫んだ。
しかしそこに潜んでいる謎の気配は全く動く素振りを見せない。
(うぅ〜、困っちゃったよ。どうしたらいいんだろう?)
そのとき、ビルの陰からゆっくりとレイバーが二機、姿を見せた。
その機体は暗緑色で塗られており、腕には強力な機関砲が装備されていた。
それはkanonと同時に自衛隊に配備されたばかりの軍用レイバー「ヘルダイバー」であったからである。
(何でこんなところに自衛隊のレイバーがいるんだぉ〜!?)
動揺を隠しきれないでいる名雪にヘルダイバーのパイロットがコクピットから顔を見せた。
しかしその顔はヘルメットとバイザーで皆目見ることが出来ない。
とパイロットはバイザーを跳ね上げ、そして名雪に向かって言った。
「あんさんは特車二課の人間かや?」
その言葉に名雪は思わず頷いた。
「そうです。特車二課第二小隊の水瀬名雪といいます」
その言葉を聞いたパイロットはうんうんと満足げに頷いた。
「やはりそうやったんか。この後はうちらに任せておき」
「は、はい!! よろしくお願いします!!」
パイロットの言葉を聞いた名雪は頷いた。
正直言ってたった一機で四機もの軍用レイバーを相手にする自信など全くなかったからだ。
そして名雪は秋子さんたちが待っている場所へ向かおうとしてはたと気が付き、そして叫んだ。
「まだ四機のレイバーが残っているよ〜。三機がエイブラハムで一機が正体不明のビームとECMを使う奴!!」
名雪のその言葉にパイロットはニッコリ微笑み、頷いた。
「ありがとうな。そうそう、うちの名前は神尾晴子って言うねん。ぎょうさん気を付けてな」
「はい!!」
名雪は元気よく返事をするとその場を走り去った。
名雪を笑顔で見送った神尾一尉はその姿が見えなくなるとキッと表情を引き締めた。
そしてふたたびバイザーを下ろすと傍らの部下に命令した。
「これより状況を開始するで〜。しっかりついて来な」
「わかりました」
「ちなみに銃器の使用は厳禁やで。もみ消すのが大変やさかいな」
そう命じると神尾一尉は部下の操るヘルダイバーとともに東京テレポート中心へ向かって走り出したのであった。
あとがき
晴子さんの部下、はじめ観鈴にしようと思っていたのですが止めました。
だってこの話、女性の割合が大きすぎるんだもん。
2001.04.08