機動警察Kanon第034話

 

 

 

 カシャーン カシャーン カシャーン

 

 人気が全くなく、静寂に包まれた東京テレポート内を二機のKanonが歩いていく。

先頭にいるのはライアットガンを構えた二号機、後衛には両手を開けたままのケロピーが続いている。

その足下には二台の指揮車がちょろちょろとついてくる。




 

 やがて真琴の駆る二号機が動きを止めた。

そして左手でライアットガンを保持しながら右手を使って合図をする。

どうやらレイバーらしき存在を確認したらしい。

名雪はケロピーをビルの影に潜ませながら真琴が発見したレイバーらしき存在に接近し始めた。




 

 

 『名雪、気をつけろよ』

「わかったぉ〜、気をつけるよ〜」

名雪は眠気を堪えながら祐一の言葉にそう反応し、そして慎重にケロピーを操作する。

やがて目標であるレイバーらしき物体に近づいた時、思わず名雪は眠気も忘れうめき声を漏らしてしまった。

「なんて酷い……」

そこにあったのは第一小隊所属のONEであったのだ。

その機体の左肩には212号機と描かれている。

この機体は自称乙女こと七瀬留美巡査の機体だ。

その機体も今は無惨にも破壊されしまっている。

それもただ破壊されたのではなく、まるで十字架にかけられたかのような格好で放置されている。

これは明らかに後から来るであろう第二小隊の隊員たちに見せつけるためであろうと思われた。






 

 『名雪!! コクピットをすぐに確認するんだ!!』

とっさの時の判断力の欠如が名雪の欠点だ。

一瞬呆然としてしまった名雪に祐一は力強く命令した。

すると我に返った名雪は頷いた。

「分かったよ、コクピットだね!!」

あわてて名雪は212号機の正面に立たせると座席を上昇させ上部ハッチから顔を突き出した。

そしておそるおそるONEのコクピットをのぞき込む。

やがて名雪は安堵の息を漏らした。

「良かった〜。七瀬さん、コクピットの中にはいないよ〜」

その言葉を聞いた祐一も安堵の息を漏らした。

『そうか……、ところでコクピット内に血とかはないよな』

「もちろん無いよ〜」

『そうか……』

祐一は名雪の言葉に頷くと無線で美汐と真琴に呼びかけた。

すると雑音混じりではあったものの無線はつながり、すぐに二人はケロピーの元へとやって来た。

 

 

 「これは複数のレイバーによる攻撃の結果ですね」

美汐の言葉に祐一は頷いた。

「俺もそう思う。なんせあの七瀬巡査がひとたまりもなくやられてしまったんだ、一機であるわけがない」

「そうですね。ところでこの後どちらの方向へ進みましょうか?私は中心部を目指すのが良いと思うのですが」

「それで良いと思う。ところで秋子さんに連絡入れてみようか?」

祐一の言葉に美汐は頷いた。

「そうですね。無線があそこまで届くかどうか試してみる価値はあると思います」

 

 というわけで祐一は秋子さんに無線で呼びかけてみた。

しかしと言うべきかやはりと言うべきか全く連絡することが出来なかった。

「やはり駄目でしたね。とりあえず電波障害が酷くなる方向に向かいましょう」

「そうだな」

美汐と祐一はそれぞれ真琴・名雪に指示を与えると212号機の前を立ち去ろうとした。

その時真琴が叫んだ。

「そこにいるのは誰!!」

その言葉に反応した三人は慌ててその方向に目をやった。

するとそこには四台のレイバーが万全の態勢で待ち受けていた。

「あれは…SEUSAのM5エイブラハムです」

美汐の言葉に祐一・名雪・真琴の三人に衝撃が走った。

それは現在米軍が使用している主力軍用レイバーの名前であったからだ。

最新型ではないとはいえ軍用は軍用。

そのパワーと装甲は最新鋭のKanonを遙かに凌駕しているであろうことはまず間違いなかった。

しかし真琴はすぐに立ち直った。

「ふん、何がエイブラハムよ!! あんなの真琴の手にかかればちょちょいのちょい何だから!!」

そう叫ぶとライアットガンをぶっ放した。

これが東京エアポートの戦いの火ぶたを切ったのであった。

 

 

 

あとがき

久しぶりに名雪たちが出てこられました。

でも秋子さん・栞・鮎は出てきませんでしたが。

ところでシャフトエンタープライズUSAのM5ってエイブラムスで良かったでしたっけ?

昔は設定集を持っていたんですが捨てちゃったからもう持っていないので調べられないよ。

 

 

2001.03.25

2002.09.21   エイブラムス→エイブラハムに訂正

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