機動警察Kanon第032話

 

 

 

 特車二課を発した第一小隊は一路、東京テレポートを目指した。

小坂由起子警部補の運転するミニパトに続いて三台の指揮車・キャリアがサイレンを鳴らしながら続く。

いずれの車両も緊急時における法定速度を守ってはいるのだがその迫力は満点。

前にいる一般車両はどんどん避けていく。

やがて東京テレポートまで半分という距離まで来たとき由起子警部補の運転するミニパトの無線が呼び出し音を発した。

「はい、こちら小坂です」

由起子さんがそう答えると無線のマイクから聞き覚えのある声が届いた。

『小坂警部補ですか、こちらは天野です。続報がありましたのでお知らせします』

「天野巡査部長ね。わかったわと言いたいけど秋子隊長はどうしたの?」

『秋子さんは今課長と話しています。何やら手続きが必要らしくて』

「そう、分かったわ。それより天野さん、続報とやらを聞かせてちょうだい」

『分かりました、それでは報告します……』

美汐は遙か遠くにいる由起子隊長に現在の状況を伝えた。

 

 

 『東京テレポートですが今でも相変わらずの音信不通です』

「そうなのって言いたいけどそれは分かっているから新しい情報をお願い。」

由起子警部補のせかした言葉に美汐は気を悪くした素振りも見せずに続けた。

『実は自衛隊が動き出しているという情報があります』

「何ですって!? 自衛隊が動いたというの?」

由起子警備補は驚いた。

自衛隊がこのような状況で動くとは治安出動の悪しき前例になると思ったのだ。

しかし美汐は気にもとめずに話を続けた。

『はい、そうです。

富士で実験中の空挺レイバー隊が出動した、もしくは出動するというのが本庁で話題になっているそうです』

「富士の実験部隊ですって……」

『はい、そうです。後はですね、どうやら東京テレポートには五台のレイバーがいるということです』

「五台のレイバーね。そんな情報どうして分かったの?」

『実は海上保安庁からの通報なんですが海底に何か不審な物体が居たと……。

それがソナーによるとレイバーらしく少なくとも五台、これは間違いないということでした』

美汐の言葉を聞いた由起子隊長は溜息をついた。

『どうなされたのですか?』

「五台のレイバーはきついわよ。うちのONEでどこまでやれるかしら?」

『第二小隊もすぐに追いかけますからそれまで頑張ってくださいというしかありませんね』

「気安く言ってくれるわね」

由起子警部補は声を上げて笑うと真剣に言った。

「…とりあえず第一小隊は東京テレポートに突入します。

定時になったら連絡しますからもし連絡が付かなかったときは……」

『分かりました。秋子さんにそう伝えておきます』

「それじゃあ秋子先輩によろしく。それじゃあこれで交信を終了します。オーバー」

そう言うと由起子隊長は交信を終了した。

そしてしばらく考え込む。

やがて制服のポケットに放り込んでいた携帯電話を取り出しボタンを素早く押した。

 

 

 プルルルー プルルルー

 

 何回かのコールの後 、由起子さんが掛けた電話相手が出た。

『なんや、いったい誰かいな?』

その懐かしい声を聞きつつ由起子隊長は呼びかけた。

「久しぶりね晴子。私、小坂由起子よ」

その言葉を聞いた晴子こと神尾晴子はケタケタと笑った。

『なんや、由起子やないか。ひさしぶりやな。どないしたん?』

「んっ?ちょっと退屈だし久しぶりに貴方の声を聞こうと思って電話したんだけど。おじゃまだったかしら?」

由起子隊長の言葉に晴子さんはまたケタケタと笑った。

『自衛隊はいつも暇やで、ほんま。まあうちらが暇なうちは日本も平和というわけやな』

「それもそうね。ところで……」

由起子隊長はそのまま友人である陸上自衛隊一尉神尾晴子とおしゃべりし始めた。

 

 

 「ところで近頃どうかしら?」

ひとまずおしゃべりが落ち着いたところで由起子隊長は晴子さんにそう持ちかけた。

すると晴子さんから返事が返ってきた。

『そうやなー、ちかごろでかい山踏むかも知れんで』

「…そう。頑張ってね」

『任せておきや、ほんまに。ところでいつまでもおしゃべりしておって構わへんの?』

「そうね、そろそろ仕事に戻るわね。それじゃあ晴子、お仕事頑張ってね」

『そっちこそ気いつけてや。』

別れの挨拶を交わすと由起子隊長は携帯電話の電源を切った。

そして頭の中で思った。

(晴子・・・悪いけど警察の名誉と意地に掛けて自衛隊なんかに行動させないわよ)

 

 

 そのころ富士訓練学校では神尾晴子一尉が萌えていた、もとい燃えていた。

(由起子…牽制のつもりで電話掛けてきたんやろうけどそうは行かないでー。

うちら日陰者の自衛隊にとってまたとないチャンスやんからな)

そこへ部下が声を掛けてきた。

「神尾一尉、準備が整いました。いつでも出撃可能です!!」

「おっしゃ!! それじゃあ行くで〜」

 

 

 こうして東京テレポートに次々と役者が集まり始めた。

 

 

あとがき

とりあえず不破二尉役を「Air」の神尾晴子さんにやって貰うことになりました。

しかし私は「AIR」はやったことがないのでその描写は全くの適当です。

また似非関西弁はいかがだったでしょうか?

これは変だとお思いの方は添削の上管理人にお知らせしてくれると助かるなー。

 

2001.03.23

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