機動警察Kanon第030話

 

 

 

 プォー プォー

 

 

 夜の波止場に貨物船の汽笛が鳴り響く。

昼間は運ばれてくる貨物の取り扱いで大にぎわいの波止場も深夜の今では人影すら見れない。

そこへどこでも見かけることが出来るような特徴のない一台のバンがやって来た。

するとそのバンはキッとブレーキをかけると波止場に停車した。

そしてそのまま何事もなかったかのようにバンはライトを消した。

 

 

 「川澄さん、そろそろ時間です」

運転席に座っていた男の言葉に川澄舞は頷いた。

「…ブツは出たの?」

舞が尋ねると後部座席で無線を操作していた男が頷いた。

「はい、時間通りに実験機、および護衛4機が出たそうです」

「…それならいい」

舞はそう言うと目を閉じた。





 

 そして沈黙に包まれたまま時間だけが過ぎていく。

と後部座席にいた男が叫んだ。

「ソナーに接近物体を発見!! 実験機と思われます」

「わかった……」

舞は目を開けると真っ暗闇の海面へと視線を向けた。

すると海面からニョキっと巨大な手が突き出された。

そして続いて頭、そして胴体と海面から姿を現す。

そしてやがて全くの同型機4機が波止場に上陸した。

そしてそれに続いてもう一機、何やら異様な形をしたレイバーが波止場に上陸した。

その五機を確認すると舞は表情も変えずに無線のマイクを取り、言った。

「実験機は確かに受領した。これより状況を開始する。

なおこの交信以後、実験機はファントムと呼称する。繰り返す、実験機はファントムと呼称する。以上…」

無線のマイクを置いた舞は後部座席の男に合図を送った。

すると男は頷き、バンに搭載されたコンピューターにプログラムを打ち込んだ。

そして五機のレイバーとバンは暗闇の中へと消えていった。

 

 

 

 

 それから数時間後。

 

 「こちら警邏524号、現在の所在は東京テレポート入り口。今のところ異常なし。

繰り返す、今のところ異常なし。」

助手席に座った警察官は交信を終わらせると運転席の同僚に話しかけた。

「ところでどうだ、この後一杯やりにいかないか?」

「おっ、良いね。この頃勤務の関係で飲めなかったからな」

「それじゃあ決まりだな」

二人の警察官がペラペラおしゃべりしていると突然目の前に何かが立ちはだかった。

「な、何だ!?」

あわてふためきつつも警察官はブレーキを重いっきり踏み込んだ。

 

 キキィー

パトカーが騒音をたてて急停車する。

「一体何なんだ?」

二人の警察官が窓から顔を突き出して外を見るとそこには全身を真っ黒に塗り潰したレイバーが突っ立ていた。

なぜこのような場所にレイバーがいるのか分からない二人は思考を停止してしまった。

と黒塗りのレイバーが腰をかがめパトカーに手を掛けた。

「な、何だこいつ!!」

すると黒塗りレイバーはパトカーを持ち上げたではないか。

あわてた運転席の警察官はホルスターからM60を取り出した。

そして無警告のまま、ガラス越しに発砲する。

しかし強靱な装甲で覆われているらしく38口径の弾丸はあっさりはじき返されてしまう。

「ク、クソッ!!」

その間に助手席の警察官は無線で事態を報告しようとする。

しかしさっきは通じたにもかかわらず全くつながる気配がない。

ただマイクからは意味のない音が聞こえてくるだけである。

そこで身の危険を感じた二人の警官は持ち上げられたパトカーから飛び降りた。

そしてそのまま走って逃げようとする。

しかし

「何だ!?貴様らは!!」

おそらく随伴していたのであろう、謎の特殊部隊風の格好をした男に二人の警察官は当て身を食らわされ気を失ってしまった。

 

 

 

 これが真夏の東京を震撼させた恐るべき事件の始まりとなったのであった。

 

 

 

あとがき

やっとファントム編らしくなってきました。

が、特車二課の面子が全く出てこない・・・。

舞が出てこなかったら機動警察Kanonなんて名乗れないぐらいですね。

 

なおアニメだとこの話、クリスマスイヴなんですがこちらでは7月と言うことにしてありますのでご了承のほどを。

それにしてもTV版アニメ、設定が違いすぎて参考にならない・・・。

 

2001.03.20

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