ピ ピ ピ ポーン
ガタガタガタ
時報の合図と共に第二小隊の面子はみな立ち上がった。
「よっしゃー、これで今週の勤務はお終いだ!!」
祐一が力強く叫ぶと美汐を除く四人の隊員たちもうんうんと頷いた。
「長かったよね〜、本当」
名雪がそう言うと真琴が叫んだ。
「何で私たちは一週間ごとにしか休みがないのよ!!」
「うんうん、ボクもそう思うよ」
あゆがこう言えば栞も同感とばかりに
「まったくです。ちゃんと毎週お休みが欲しいですよね」
と言った。
そこへ美汐がいつものように落ち着いた口調で言った。
「みなさん、そのようなことは言うものではありませんよ。
首都圏の安全は私たちの双肩にかかっているのですからね」
「相変わらず天野はおばさんくさいよな」
もっともではあるが出来すぎている美汐の言葉に祐一はそう反応した。
すると美汐は祐一をジト目でにらんだ。
「失礼な。私は物腰が上品なだけです」
まあこんなやりとりはあったものの第二小隊の面々はさっさと私服に着替えた。
「「「「「「それではお先に失礼しま〜す」」」」」」
第二小隊の面子は第一小隊や整備班の人間に挨拶すると二課を後にした。
そしてそのまま正門の脇に立っているバス停に並ぶ。
そしてバスが来るまでのしばらくの時間をおしゃべりして過ごすのがいつもの常であった。
「ねえ祐一、明日一緒にイチゴサンデー食べに行かない?」
名雪がそう言ってきたので祐一が答えようとすると栞が叫んだ。
「名雪さんだけ抜け駆けなんて狡いです!! ここは私とバニラアイスを……」
「うぐぅ〜、栞ちゃんだって狡いよ〜。ボクだって祐一君とたい焼きを…」
「 あう〜、祐一は真琴と肉まんを食べるの〜!!」
名雪の一言が原因で誰と祐一が明日食事に行くのか、祐一の意志に関係なく争い始めた。
そんな四人を祐一が止められるわけがない。
というわけでどうしようもない祐一は大きな溜息をついた。
すると美汐がくすくす笑いながら言った。
「相変わらず大変ですね、相沢さん」
それを聞いた祐一は沈痛な面もちで頷いた。
「全くだ。少しは俺の意見を聞いて欲しいものだよ」
「ならそう言ったらどうですか?」
「…言ったことがあるが誰も聞き入れてくれなかった。」
「そうでしょうね。みなさん、社会人になっても童心を忘れない純真な心の持ち主ですから」
「…お前、何げにきついこと言うな……」
祐一が苦笑いすると美汐は微笑んだ。
「さて、マスコミの方々にこんな場面を見られたら特車二課の評価がますます落ちてしまいますね」
そして四人の仲裁に入った。
「まあまあみなさん、落ち着いてください」
美汐がそう言うと四人はとりあえずにらみ合いを止めた。
しかしすぐにでも勃発しそうな雰囲気だ。
そこで美汐は四人に尋ねた。
「…みなさんは一体どうなされたいのですか?」
すると四人は口をそろえて叫んだ。
「「「「私と一緒にイチゴサンデー(バニラアイス・たい焼き・肉まん)を食べるんだよ(です・んだもん)」」」」
その言葉を聞いた美汐はある提案をした。
「…みんな一緒に行ったらどうですか? そうすれば問題ないのではないでしょうか?」
美汐の提案を聞いた四人は考え込んだ、しかしすぐに頷いた。
「それで良いんだぉ〜」
「分かりました、それで良いです。」「うぐぅ、二人っきりのほうが良いけど仕方がないからそれで良いよ。」
「あう〜、真琴も仕方がないから良いよ〜」
それを聞いた美汐は祐一の方に振り返り、言った。
「というわけですから明日はがんばってくださいね」
「…誰も俺の話を聞いてくれないのかよ」
祐一は愚痴ったものの無駄な抵抗ということは充分承知していたので仕方が無く頷いた。
「わかった、明日はみんなにつきあってやる。」
というわけで無事その場も収まり後はバスが来るのを待つというだけになったとき、彼らの背後でサイレンが鳴り響いた。
「「「「「ギクッ」」」」」
あわてて五人の耳に二課のアナウンスが届いた。
「第一小隊、全機出動せよ。繰り返す、第一小隊、全機出動せよ」
とたんに二課はバタバタと忙しくなった。
「…もしかしてまた待機任務?」
名雪の言葉に真琴がまた叫んだ。
「何か真琴に恨みでもあるの!!せっかく休みだと思ったのに!!」
だが他の二人はすぐに諦めてしまった。
「うぐぅ〜、ボクってついていない……」
「こんな時に犯罪を起こす人、嫌いです!!」
その時隊長室の窓から秋子さんがハンドマイクを手に叫んだ。
「名雪・祐一さん・栞ちゃん・真琴・美汐ちゃん・あゆちゃん!!
待機命令がでたから二課に戻ってきてください!!」
そこでやもえず泣く泣く祐一たちは待機任務についたのであった。
あとがき
これも一応ファントム編です。
ただの導入編ですけどね。
2001.03.19