機動警察Kanon第028話

 

 

 

 相沢祐一素行調査隊は次の行動に入った。

それは件の小屋の監視である。

しかし勤務の関係上、四六時中監視し続けることは難しい。

そこで捜査機材の監視カメラを持ち出し、小屋を見張ることが出来るポイントに据え付けたのだ。

これで24時間常に出入りする人間を監視することが出来るようになった。

 

 

 「状況はどうですか、栞さん?」

延々と撮りためられた画像をチェックしている栞に美汐は声を掛けた。

すると栞は一枚の紙切れを手渡した。

「これはあの小屋を出入りした人のリストです」

そこには祐一以外にも北川や他の整備員たちの名前があがっていた。

「……整備員の方が多いですね」

紙切れを見た美汐はそう感想を漏らした。

すると栞も頷いた。

「はい、私もそう思います。職員の方はほとんどいませんからね。

ところでこの人たちはあそこで何をしているんでしょうか?」

栞の言葉に美汐は首を横に振った。

「それは分かりません。それよりそろそろ踏み込むべきかもしれませんね」

「いよいよですか!!」

「ええ。これだけ状況が整っていれば秋子さん・美坂班長も動かせると思いますし」

「祐一さんたちがあの中で何をしているのか楽しみです♪」

 

 

 そのころ祐一たちは件の小屋の中で最後の仕上げをしつつあった。

 


 「もう、まもなく完成だな」

祐一の言葉に北川は頷き、そして言った。

「苦節3週間と4日、とうとうこの日が来ようとは……まさに感動ものだ」

北川の言葉に他の整備員たちも一斉に頷いた。

みんなこの日を待ち望んでいたのだ。

漢の浪漫を達成するためのここ一ヶ月近くの間。

彼らはみな非番であろうともこの小屋に集まり、そして熱心に仕込んだのだから。

そしていよいよその時がやって来た。

 

 

 「後はこのボルトを締めるだけで完成です」

整備員の一人の言葉にその場は沸いた。みな心なしか興奮している。

するとその中の一人が北川に言った。

「最後の締めは北川さんがやってください。ここまでやって来れたのもみな北川さんのおかげですし」

それを聞いた他の整備員たちも激しく同意した。

「そうだな、北川さんがここはやってくださいよ」

「同感だ。ここは同志北川に締めてもらわないと」

その言葉を聞いた北川は猛烈に感動した。

「お前ら…、本当にオレでいいのか?」

北川の問いかけに祐一と整備員たちはみな頷いた。

「よし、それでは……」

北川は最後の締めをしようとスパナを手にした。

その時突然小屋の扉が蹴開かれた。

「「「「何っ!?」」」」

男たちがあわてふためく中小屋の中に何かが放り込まれた!!

 

 ブハァン!!!

 ものすごい煙とともに小屋の中は煙とものすごい音が鳴り響いた。

「ゴホンゴホン!!」

煙に喉と目をやられ、男たちはあわてて小屋の中から外へ飛び出した。

そこで男たちが目にしたのは秋子さん・美坂班長そして第二小隊の隊員たちであった。

 

 

 「さて北川君に相沢君、それに他のみんなも一体ここで何をしていたのかしらね?」

香里の言葉に小屋のにいた男たちは皆震え上がった。

ただ仁王立ちしているだけなのだがその迫力は並大抵のものではなくまるで鬼か怪物かと言わんばかりだったのだ。

「そ、それはですね……」

それでも北川は震える口調ではあったものの何とか弁解しようとした。

しかし香里の一睨みでその弁解は終わってしまった。

「秋子さん、小屋の中確認しませんか?」

「了承(一秒)」

秋子さんの了承が出たこともあり小屋に閃光音響弾を放り込んだ面子は小屋の中へと入っていき、後には

涙でボロボロ、咳をゴホンゴホンやっている薄汚れた男たちだけが取り残された。

 

 

 「わぁ〜、中は煙だらけだよ〜」

小屋の中に入るなり名雪は叫んだ。

なるほど、小屋の中は煙だらけであった。

これはすべて彼女たちが放り込んだ閃光音響弾の影響である。

そこでさっそく換気しようとしたのだがこの小屋、窓は一つもなく扉が一つあるだけ。

そのために換気には非常に時間がかかったのであった。

 

 

 「こ、これは……」

煙も換気終了し、小屋の中に入った彼女たちを待ち受けていたのは黒光りする鉄の固まりであった。

その威圧感に秋子さんと香里班長・美汐を除く四人は圧倒されてしまっていた。

「…ショットガン、いえライアットガンですねこの場合は」

美汐の言葉に秋子さんと香里は頷いた。

「あいつら私に隠れてこんなおもちゃを作っていたのね…」

どうやら美坂班長はこのおもちゃが気に入らないらしい。

しかし秋子さんはそう思ってはいなかったようであった。

「香里ちゃん、この銃試し撃ちしてみない?」

「本気ですか秋子さん?」

香里の言葉に秋子さんは頷いた。

「ええ、もちろんです。これなら威嚇効果は高そうですからね」

「それはまあ威圧効果は高いと思いますがね、一体誰がこんなの撃つんですか?」

それを聞いた真琴はハイハイ手を挙げ、自推した。

「はいはい!! 真琴、真琴が撃つよ!!」

それを見た香里は秋子さんに視線を向けた。

すると秋子さんは「了承」と言わんばかりに頷いたので香里はため息をついた。

「北川君!!弾は用意してあるんでしょうね」

香里の言葉に北川はコクコクと頷き、言った。

「もちろんだとも。弾はバードショットからOOバックショット・スラッグも用意してあるぞ」

その一言によって特車二課謹製ライアットガン試射が行われることが決定した。





 

 

 

 特車二課謹製ライアットガンを持って真琴が駆る二号機が射撃訓練所(単なる岸壁だ)に現れた。

そこにある標的は赤い旗がつけられ海面をプカプカ浮いているドラム缶である。

 

 「真琴、準備は良いですか?」

「OK〜。いつでもいけるんだから!!」

インカムに向かってそう話しかけた美汐に真琴は返事をそう返した。

それを聞いた秋子さんは頷き、それを確認した美汐は命令を下した。

「目標は赤い旗の付いたドラム缶!! 撃て!!」

すると二号機は素早い動きで装填し、トリガーを引いた。

 

 ズガァーン

 

 すると37mmリボルバーカノンの音など物ともしないしないものすごい轟音とともにOOバックショットの9発の弾が

ドラム缶を一瞬にしてハチの巣に変えた。

ドラム缶はそのままズブズブと改訂へと沈んでいく。

その威力に二号機の周りでのんびり見物していた隊員・整備員・職員たちはみな言葉を失った。

あまりにもその威力がでかかったからだ。

しかしそんなことに全くお構いなしの人間もいた。

 

 それはずばり真琴である。

真琴はすっかりライアットガンの威力に惹かれてしまったらしい。

Kanonのハッチを開けて体を乗り出し、秋子さんにむかって叫んだ。

「秋子さ〜ん、これすごく使えるよ〜!! これからこいつ真琴に標準装備させてよ〜!!」

しかし秋子さんはそんなアホな言葉には乗らなかった。すぐ隣にいた美坂班長に声を掛けたのだ。

「香里ちゃん、これ危なすぎるから封印ね」

「そうですね、封印しましょう」

それを聞いた北川は思わず叫んだ。

「そんな〜!! 制作に一ヶ月近くかけたのに〜!!」

しかし美坂班長はその言葉にまったく耳を貸さず、うるさく騒ぐ北川の首筋に手刀を食らわせた。

「あぅ!!」

北川は一瞬にして気を失った。

 

 

 こうして男たちの浪漫はあっさり封印されことが決定し、一ヶ月近くに及んだ作業は無為に終わったのであった

 

 

あとがき

今回からIMEがATOK12から14に変わりました。

あんまり変わった様子は感じられないんですがまあましになっているはずですよね。

 

さて今回の話はOVA第1期第3話の冒頭部をみて思いついたネタです。

これから何かと強敵と遭遇する特車二課のために新兵器登場というわけです。

でもこいつが活躍した話って無いような気がするなぁ。

 

2001.03.17

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