機動警察Kanon第024話

 

 

 

 「佐祐理、ただいま」

SEJ(シャフトエンタープライズ日本支社)企画7課に三人の男女が戻ってきた。

それは先ほどまで特車二課第二小隊を監視していた彼らだった(*第23話を参照)。

 

 「あはは〜、舞、お帰りなさい〜」

いつも明るい笑顔で何かを企んでいる課長倉田佐祐理は部下の川澄舞を出迎えた。

「それで首尾はどうでしたか?」

「首尾は上々」

舞の言葉に佐祐理さんはまたあはは〜と笑った。

「それじゃあ舞、さっそく編集お願いしますね。佐祐理はお仕事が詰まって居るんですよ」

「分かった、ちょっと待ってて…」

そういうと舞は二人の部下とともに編集室へと入っていった。

そんな三人を見送った佐祐理さんはデスクに置かれていたティーカップに手を伸ばした。

そこには紅茶がなみなみと注がれている。

佐祐理さんはその紅茶に飲みつつ、この後すぐに使う書類に目を通し始めた。

 

 

 「佐祐理…」

「あれ? 舞、どうしたんですか?」

突然声をかけられたので佐祐理さんはびっくりして聞き返した。

すると舞は無表情のまま一枚のMOディスクを手渡した。

「これ…佐祐理に頼まれていたやつ。」

それを聞いた佐祐理さんは満面の笑みを浮かべた。

「あはは〜、ありがとうございます舞。これで佐祐理の準備は完了です」

そう言うと佐祐理さんは書類とMOディスクを手にして企画7課を後にした。

 

 

 


 「あはは〜、みなさんお待たせしました〜」

佐祐理さんが会議室にはいるとそこでは社長・専務・常務を筆頭とする取締役たちが雁首そろえて

大型液晶ディスプレーに写された映像に見入っているところであった。

ちなみにディスプレーには特車二課第二小隊のKanonが映し出されている。

「遅いぞ倉田君」

簾頭の常務がちょこっとばかり遅れて入ってきた佐祐理さんに文句を付けたが佐祐理さんは気にも止めなかった。

「今は何処まで見ていますか?」

「…5月分までは見た。」

佐祐理さんが聞くとM字はげの専務が重苦しい口調で答えた。

それを聞いた佐祐理さんはあはは〜と笑いながら言った。

「それじゃあこれは最新版です。みなさん見てくださいね♪」




 

 というわけで上映会はほんのちょっと延びた。




 

 「倉田君、この件については君の口から直接説明を聞きたいのだがね」

今まで黙っていた社長がそう発言したので佐祐理さんは頷いた。

「このレイバーはKey重工業が警察用に開発した99式『Kanon』です。見ての通りの高性能ぶりでして。

軽量ながらもそれを補うパワーと運動性、様々なオプションを自在に扱う器用さ、警察という組織によって

運用されるだけあって桁外れの運用データを持っています。
思わず欲しくなっちゃいますよね〜」

佐祐理さんの言葉を聞いた社長は腹立ちげに言った。

「…君の能書きなど聞く気はない。私が聞きたいのは今日、このような集まりを君がたてたことなのだよ。」

「Kanonの能力はお分かりになりましたよね?」

「それはまあな」

「では話は簡単です。ようはKanonの能力を我が社の新型に投入したい、それだけのことなんですよ〜」

佐祐理さんの言葉に社長は苦り切った表情を浮かべた。

「倉田君、君はこの件に関して簡単に言ってくれるな。我々とて常に高性能な新型の開発に勤しんではいる。

しかしそれにどれだけ莫大な費用がかかるか、君とて分かっているはずだぞ。」

それを聞いた佐祐理さんはあはは〜と笑い、そして言った。

「誤解しないでくださいね、開発の促進は佐祐理たちのお仕事じゃありませんから。

思わず欲しくなっちゃいますね〜って佐祐理は言ったはずですよ〜」

「…何を考えたのかね倉田君」

社長のことばに佐祐理さんは懐から一枚のMOディスクを取り出した。

「今度はこれを見てくださいね。佐祐理が本社の人から預かったものですよ〜」

そう言って佐祐理さんは先ほどと同じようにMOディスクを開いた。




 

 「「「「「「こ、これは……」」」」」」

佐祐理さんが見せたディスクの中身は取締役たちを驚かせた。

「いかがですか? これらをKanonにぶつけてみようということになったんですけど」

「こいつをぶつけるだと?」

佐祐理さんの言葉にM字型はげ専務は驚きの声をあげた。

もちろん他の取締役たちも同様の表情を浮かべている。

「倉田君!! 君は警察に喧嘩を売るつもりか!! それはれっきとした犯罪だぞ!!」

「そうだ。ここは君が以前いた国じゃない。日本なんだぞ!!」

「企画7課のやり口は乱暴すぎる!!」

そんな取締役たちにお非難の声を佐祐理さんは笑って聞き流し、そして言った。

「これはもう本社で決定事項なんですよ。そのために佐祐理がここ日本支社に派遣されたんですかね」

これで会議は決した。

いくらなんと言おうとも所詮日本人は日本人。

「長い物に巻かれろ」の精神は今でも彼ら取締役たちの頭の中にびっしりとこびり付いていたのであった。




 

 

 

 「佐祐理、お帰り」

企画7課に戻ってきた佐祐理さんを舞は出迎えた。

「首尾は上々?」

先ほどのやりとりのようなことを舞が尋ねたので佐祐理さんは言った。

「あはは〜、上手くいきましたよ。という訳で後のことは舞にまかせますね」

「…佐祐理はどうするの?」

「佐祐理はですね、ちょっと本社とヨーロッパ支社等に用事があるんですよ。

ですから半年ばかりは企画7課のことは舞に任せますね」

「分かった、でも佐祐理。早く帰ってきて」

「あはははー、それはもちろんですよ。舞をひとりぼっちにはさせていたくはありませんからね」

 

 

こうして特車二課を巻き込むことになる大陰謀の幕が切って落とされたのであった。

 

 

あとがき

川澄舞と倉田佐祐理、この二人の登場です。

これでレギュラーは勢揃いと言いたいですがじつはまだ一人欠けています。

それはズバリ『松井刑事』です。

彼とその相棒、誰か良いキャスティングいないかな?

 

P.S 

佐祐理さん、あははははーと言ってばかりのような気が・・・。

 

2001.03.12

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