機動警察Kanon第023話

 

 

 

 そこでは二台のレイバーがお互いに鉄骨を持って向かい合っていた。

どちらのレイバーも作業用のブルドックだ。

開放式のコクピットに堅牢で使い勝手の良いマニュピュレーターとオプション。

そして値段の割にパワーもある作業用レイバーのベストセラー機種である。




 

 

 「ところで何であの二台はあのようなことをしているのでしょうか?」

工事現場の責任者に天野美汐巡査部長は尋ねた。

すると責任者はばつが悪そうな表情を浮かべつつも何とか口を開いた。

「…実はあの二人兄弟でして……」

「その兄弟が何であのようなことを?」

「…理由は分かりませんが兄弟喧嘩だそうです。周りの連中に話を聞きますと。」

 

 それをそばで聞いた相沢祐一はため息をついた。

「兄弟喧嘩にレイバーを持ち出すとは…呆れて物も言えないな。」

「うにゅ〜、本当だよね祐一。何で兄弟で仲良く出来ないんだろ?」

水瀬名雪の至極もっともな意見に祐一も頷いた。

「そうだよな。でも兄弟のいない俺らには分からない何かがあるんだろうさ」

「そんなものなのかな〜?」

「そんなもんだろ。なあ、そうだろう栞」

「へっ!? な、何ですか?」

突然話しかけられた美坂栞はあわてふためいた。

「だから兄弟喧嘩についてだよ。お前には香里というお姉ちゃんがいるだろ」

「そうだね〜、栞ちゃんと香里の関係聞いてみたいな」

二人にそう言われた栞はちょっと照れたような表情を浮かべつつも言った。

「実は…姉妹喧嘩ってしたこと無いんです。

私、昔から病気がちだったし、お姉ちゃんは昔から大人っぽかったから……」

「「なるほど(だよ)。」」

いかにもな二人の関係に祐一と名雪の二人はただ頷くしかなかった。




 

 

 しばらくして現場責任者から話を聞き終えた美汐が祐一たちのそばにやってきた。

「どうだった?」

祐一が尋ねると美汐はため息をついた。

「一応説得してみますがたぶん駄目だと思います。ですから不意打ちで一気に方をつけます」

「了解」

祐一が承諾すると美汐は名雪と栞にも声をかけた。

「水瀬さん・美坂さん、準備よろしくお願いします」

「分かったよ!!」

「分かりました!!」

さらに美汐は真琴・あゆにも声をかけた。

「二人とも出番です、準備してください」

「分かった、ボク頑張るよ」

「美汐、私に任せなさい!!」

という訳でレイバーを使って兄弟喧嘩をしている馬鹿二人を取り押さえる作戦に目処が立った。







 

 

 「……というわけですがこれでよろしいでしょうか?」

作戦が決まったので美汐と祐一は秋子さんにその内容を伝えたのだ。

それに対して秋子さんの返事は「了承」と頷いた。

そこで早速作戦は発動された。





 

 

 「そこのお二人さん、聞こえるかしら?」

秋子さんは拡声器を片手にレイバーに乗っている馬鹿兄弟に声をかけた。

しかし馬鹿兄弟は秋子さんの呼びかけに一切答えようとせず相変わらず喧嘩状態のままである。

それでも秋子さんは二人に呼びかけ続ける。

すると二三分後のことである、とうとう二台のレイバーが秋子さんの方に視線を向けた。

 

 「今だ!!」

「今です!!」

祐一と美汐の合図で名雪のケロピーと真琴の222号機がその二台の背後から襲いかかった。

二機はともにスタンスティクを持ち、その背中に接近する。

しかし完全に虚をつかれた二台のレイバーは全く反応する事が出来ない。

ケロピーはそのまま目標レイバーの腰にスタンスティクを、222号機は目標レイバーの首筋にスタンスティクを突き立てた。

すると激しいスパークとともに二台のブルドックは完全に沈黙した。 

 

 

 「あー、終わった終わった」

犯人を無事取り押さえ、222号機をキャリアに戻した真琴は手をパンパンたたきながら下りてきた。

その顔は満足げな笑顔でいっぱいだ。

「真琴、ご苦労様です」

それを出迎えた美汐は真琴の頭をなでくり回す。

すると真琴は何かくすぐったような、それでいて照れたような表情を浮かべつつも大人しく美汐になでられている。

そしてそのなでている美汐は小さい子供をあやしているような、そんな表情であった。

(天野にもああいう表情が出来るんだな。)

祐一は美汐の意外な一面を見てニヤニヤしていた。

だが突然祐一は背後に異様な気配を感じたのでその場をちょこっと横に動いた。

 

 ズシャァー

 するとそこには見事な顔面スライディングを決めたうぐぅの姿があった。

「よう、うぐぅじゃないか。どうしたんだ?」

「うぐぅ、よけるなんて酷いよ祐一くん。それにボクはうぐぅじゃないよ」

「おう、そうだったな、すまんすまん。お前はあゆあゆだった」

「ボク、あゆあゆじゃないよ〜」

(毎度のやりとりとはいえあゆをからかうのは本当におもしろいな)

祐一はそんなことを思いつつも笑顔であゆに尋ねた。

「ところで何のようだ?」

「あっ、そうだった。秋子さんが撤収するって言ってたよ」

「そう言うことは早く言えよ」

「うぐぅ、祐一くんがボクをからかうからいけないんだよ〜」

「お前がからかいがいがあるからいがあるからいけないんだ。

それよりさっさと天野と真琴に伝えろよ。二課に帰るんだろ」

「あ、うん。そうだね。」

 と言うわけで第二小隊はいつものように仲良く埋め立て地へと帰還したのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「どうしますか?奴らをまだ追いますか?」

小型の高感度カメラを担いだ男の言葉に○○○は首を横に振った。

「…とりあえず本社に戻る。課長も待っていると思うし」

「分かりました。それでは本社に戻ります」

運転席にいた男は上司の命令に頷くとその場を後にした。

 

 

 

あとがき

とりあえずストーリーを早めて展開させることにしました。

理由はネタ不足です。

ただの一般の事故・犯罪・出来事だけで物語を進めるのは大変なものですから。

というわけでこれからファントム編に突入したいと思います。

 

最後に出てきたキャラはあの人です。

次回には完全に姿を現す予定です。

 

2001.03.11

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