機動警察Kanon 第020話









  天野美汐巡査部長が加わったことによって特車二課第二小隊は変わった。



  なんせ祐一・真琴は決められたことを律儀に守るのが嫌い、どちらかといえば悪戯好きだったし、

 あゆは失敗ばかり、名雪は寝てばかり、栞は病弱、とよくもまあ警察官になれたよなというような面子ばかり。

 そんな隊員たちを本来指導すべき秋子さんはおおらかというか放任主義というか、まあ隊員たちの自主性を

 つねに尊重していたので隊員たちの行動に対し口を挟んでこなかったし、もう一人の隊長小坂由起子警部補は

 管轄が違うからと第二小隊には口を挟んでこなかった。

 しかも先輩であるはずの第一小隊の面々も整備班の面々もみんないい加減というか何というか、

 まあ第二小隊に対して口を挟んでこなかったのだ。

 まあこれは特車二課特有の問題であったかもしれない。

 ごく一部の良識ある人間(由起子隊長・深山巡査部長・美坂整備班長が筆頭)はここ特車二課に蔓延る

 規律性の無さを『埋め立て地症候群』と呼んでいたのだ。

 そんな中に新たに加わったのが天野巡査部長なのであった。









  「さて沢渡巡査、いえ真琴と呼ばせてもらいますね」

 天野巡査部長は真琴を前にそう話し始めた。

 「まずはこれを見てもらいます」

 美汐は真琴にプリントアウトした書類の束を手渡した。

 「あぅ〜、これは一体何?」

 「これは一号機と二号機のプログラムパターンの解析図です。

 見れば分かると思いますがあなたの二号機は名雪さんの一号機に比べて相当劣っています」

 「そうなの?」

 どうやら真琴には分からなかったらしい。

 「…とにかくしばらくは特訓です!!」





 というわけで真琴と二号機のスキルアップのために特訓を行うことになったのであった。






  「ほらっ、足さばきが悪いですよ」

 美汐は指揮車に乗って真琴の駆る二号機を追いかけていた。

 「あうっ、あうっ、あう〜っ!!」

 それに対して真琴はうめきながら必死に頑張ってレイバーを走らせている。

 しかし美汐にとってその走りは満足いくようなものでは無かったらしい。

 「一号機に比べて力配分に無駄が多すぎます!! 今の半分にしなさい!!」

 「あう〜っ!!」








  「スラロームはもっと小回りに!!」

 「あう〜っ!!」




 

  「コーンポストをけっ飛ばしたら駄目です!!」

 「あう〜っ!!」









  というわけで真琴は今までのつけが祟ってとことん絞られた。







 

 

  「何か真琴可哀想だね〜」

 ハンガーの屋根から二人の様子を見下ろしていた名雪がポワーンとした口調で言った。

 そのせいか全然可哀想、と感じられない。

 「そうですよね。いくらなんでも可哀想という気がします」

 これは栞の言葉だ。

 「本当だよ、あれじゃあ真琴ちゃん可哀想だよ」

 真琴にいろいろと虐げられていたはずのあゆまで真琴をかばった。

 色々と迷惑を被っていただろうに優しいというかお人好しというか。

 「というかあれは自業自得だろ。日頃暴走しているから悪いんだぜ」

 祐一がそう言うと名雪・真琴・栞がジト目でにらんだ。

 「祐一ひどいよ……」

 「祐一くんっていじめっ子だよ」

 「祐一さん意地悪です」

 「オレか? オレが悪いのか?」

 そこへ秋子さんがやってきた。

 「あらあら、みんなこんな所にいたのね」

 「「「あ、秋子さん」」」

 名雪を除く三人はそう声を上げた。

 名雪は秋子さんのことをお母さんと言いそうになってあくせくしている。

 秋子さんはそんな名雪をほほえましそうに見、そして言った。

 「みんな、こんなところで何ボヤーッと見物しているの?

 真琴や美汐ちゃんのように特訓しなくちゃ駄目でしょ」

 「えっ!? 俺らもやるんですか?」

 驚いた祐一が尋ねると秋子さんは頷いた。

 「当たり前でしょ。こんな所でボケーッと見物してたら真琴に追い抜かれるわよ」

 「…それはいやだな」

 祐一は真琴にでかい口をたたかれる場面を想像してつぶやいた。

 他の三人もさっきはあんなことを言っていたものの真琴に追い抜かれるのはおもしろくないらしい。

 複雑な心理だ。





 そこで四人は各々の技能を高めるべく特訓することになったのであった。






あとがき

 一日開いちゃいましたがここに「機動警察Kanon第20話」無事お届けいたしました。

 実はまだ美汐のキャラをつかみ切れていません。

今のところただの厳しい人間といった感じでしか書けていないという……何とかしたいですね。





2001/03/07

2004/10/18改訂


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