機動警察Kanon 第019話








  祐一・名雪・栞・真琴・あゆの五人が隊長室に入るとそこには秋子さんと第一小隊隊長の

 小坂由起子警部補がデスクに座って待っていた。

 「何でしょうか、秋子さん」

 祐一が代表してそう声をかけると秋子さんは席を立ち上がった。

 「みんな揃ったわね。実は新しいお友達が仲間に加わることになりました」

 「「「「「秋子さん(お母さん)…転校生じゃないんですから……」」」」」

 五人が同時につっこむと秋子さんはホホホと笑った。

 「そんなこと言われなくてもわかっていますよ。でもこういう場面ではお約束ですよね。

 というわけでちょっと待っていてね」

 秋子さんはそう言うと隊長室を出ていった。






  「小坂警部補、新メンバーというのはどういう人なんですか?」

 ただボーっと突っ立っているのも何なので祐一はデスクで仕事していた由起子さんに声をかけた。

 すると由起子さんは首を横に振った。

 「残念だけど私も知らないわ。先輩、こういうときは隠していて驚かすのが好きな人だし」

 その言葉を聞いた祐一・あゆ・真琴・栞は驚いた。

 「秋子さんにそんな一面があったとは……意外だ」

 「ボク、秋子さんがそういう人だったなんて夢にもおもわなかったよ」

 「真琴も知らなかった…」

「秋子さんって意外にお茶目だったんですね」

 この四人が知らなかったのは無理もない、しかし続く名雪の言葉はその場に居合わせた人間を驚かせた。

 「へー、お母さんにそんな一面があったなんて……私知らなかったよ。」

 「おい名雪……」

 名雪の言葉を聞いた祐一はあきれ、そして言った。

 「お前は自分の母親のことも知らないのか!!」

 「だってお母さん、仕事のことなんか教えてくれなかったし〜」

 「仕事じゃないだろ!!」





  そうこうしているうちに秋子さんが隊長室へと戻ってきた。

 「みんな、待たせたわね」

 「いえいえ、ところで新メンバーの方は?」

 祐一がそう尋ねると他の隊員も同調した。

 「あぅ〜、真琴早く知りたい〜」

 「うぐぅ、ボクも早く知りたいよ」

 「私も早く知りたいです」

 「うにゅ〜、どんな人なんだろ〜?」

 それを聞いた秋子さんはにっこり微笑んだ。

 「それじゃあみんなに紹介しましょうかね。さあ入ってちょうだい」



  カチャ



  秋子さんの声と同時に隊長室のドアノブが回された。

 そしてスーと音も立てずに扉が開け放たれる。

 すると特車二課の制服を着た一人の警察官が入ってきた。

 年の頃は祐一たちと同じぐらいであろうか、比較的小柄だ。

 その女性は祐一たちの前に立つとペコリとお辞儀をし、そして名乗った。

 「天野美汐です。よろしくおねがおいします」 

 無駄のない必要最低限の挨拶だ。

 そこへ秋子さんが付け加えた。

 「天野さんは公安出身の巡査部長さんなの。海外での捜査を終えて帰国したばかりでね。

 みんな仲良くしてあげてね」

 「「「「「えーっ、公安出身!? しかも巡査部長!?」」」」」

 秋子さんの言葉に五人は驚いた。

 天野巡査部長のことを聞かされていなかった由起子警部補も驚きを隠せないでいる。







  公安とは戦前でいえば特高のような組織であり、政治思想犯やテロリストを追う警察内における

 エリート中のエリートなのであった。

 それゆえにこの目の前にいる天野巡査部長はただ者ではないのがすぐに分かったのだ。






  そんな五人+一人の反応に満足してか秋子さんは笑いながら続けた。

 「まあこれで完全にメンバーが揃ったので編成にちょっと手を加えますね。

 というわけで天野美汐巡査部長は本日をもって月宮あゆ巡査と交替、二号指揮車担当任務につきます」

 「「えーっ!!」」

 あうぐうぅコンビの二人が驚きの声を上げた。

 「「あ、秋子さん…今なんと?」」

 さすがコンビだけあってこんな時だけ息はばっちり、きれいにハモって秋子さんに尋ねた。

 「ですから天野美汐巡査部長は本日をもって月宮あゆ巡査と交替、二号指揮車担当任務につきます」

 それを聞いたあゆあゆは秋子さんにすがりついた。

 「あ、秋子さ〜ん!! ボクに何か落ち度でもあったの〜!?」

 ついさっき真琴をしっかり指揮しようと決意したばかりだったから無理もあるまい。

 それにたいして秋子さんは相変わらず笑顔のまま答えた。

 「べつにあゆちゃんは何の落ち度もないわよ、いえむしろよくやったわ。

 でも適材適所を考えるとこういう人事になっちゃうのよ、ごめんなさいね」

 「うぐぅ〜ボ、ボク……」

 あゆは反論しようとしたが秋子さんはそれを遮った。

 「あゆちゃん、あなたこの頃ストレスの影響でたい焼きの食べる量が激増してるでしょ。

 このままじゃコレステロールたまって病気になってしまうと思ったから配置を変えることにしたのよ」

 「うぐぅ〜…分かったよ……」

 自らの健康を持ち出されてしまっては引かざるを得ない。

 あゆは秋子さんに諭されてようやく納得した。

 「…それじゃあボクの今後の配置は?」

 「あゆちゃんには二号キャリアを担当してもらうことになるわね」

 

  というわけでその場は無事収まり、隊員たちは解散したのである。

 ただ真琴だけは

 「あうぅ〜、何か嫌な予感がするよ〜!!」

 と野性の感を働かせ、怯えていたのであった。







あとがき

これで第二小隊の面子は全員揃いました。

アニメのように香貫花から熊上さんのようにチェンジはしません。

というわけでこれが完全に確定メンバーということになります。

残った舞・佐祐理さんは警察関係者以外で出します。

当分先のことになる予定ですが二人のファンはそれまでお待ちくださいね。





2001/03/05

2004/10/16改訂


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