機動警察Kanon 第018話








  警視庁特殊車両二課第二中隊、通称パトレイバー中隊。

 その第二小隊二号機指揮者月宮あゆ巡査は悩んでいた。

 「うーん、ボクじゃ真琴ちゃんを押さえられないのかな?」

 今までがむしゃらにがんばってきたあゆではあったが先日の出来事は自分の適正についてとても

 考えさせられる出来事だったのだ。

 全く押さえることが出来ずに真琴は暴走、37mmリボルバーカノンをぶっ放してしまったのだ。

 まあ真琴の指揮者担当になってからはほとんど毎日の出来事ではある。

 しかしはっきり言ってこういうことは慣れたくなかった。

 自分のミスをミスと思わなくなるということだったからだ。





  「何か悩み事ですか、あゆさん」

 あゆがハンガーの屋根で一人、ウジウジと悩みながらたい焼きを食べていると栞が声をかけてきた。

 「あ、うん、そうなんだよ栞ちゃん」

 あゆは栞の言葉にうなずいた。

 すると栞はあゆの隣に腰掛けた。

 「よろしかったら相談にのりましょうか? 悩み事は人に聞いてもらうことで半分になるといいますし」

 「そうなんだ…、ボク知らなかったよ。そういうことなら栞ちゃん、聞いてくれるかな?」

 「はい、もちろんです」

 そういうわけであゆは栞に自分の悩みをうち明けた。






  「なるほど、そうだったんですね」

 栞はあゆの悩み事を聞くなりそう頷いた。

 「そうなんだよ。ボク、どうしたらいいかな?」

 栞はちょっとだけ考え込み、そして言った。

 「今はあゆさんだけに出来ることをやるべきだと私は思いますよ」

 「ボクだけに出来ること?」

 「ええ、そうです。今、真琴さんの指揮をとれるのはあゆさんだけです。

 なんと言っても人手不足なんですからね。しばらくはがんばってやり続けるのが良いのではないでしょうか」

 「うぐぅ、ボク自信ないなぁ……」

 「でも大丈夫ですよ。あの秋子さんがいつまでも手をこまねいているわけないですからね」

 「そうだよね!!」

 あゆは栞の一言を聞いて顔を輝かせた。

 「ええ、そうです。秋子さんならあゆさんが指揮者として不適格なら新しい人を連れてきてくれますよ。

 もしそうでないのならあゆさんに指揮者としての適正がある、そういうことだと思いますよ」

 なにげにひどいことを言っているのだがあゆは気がつかなかった。

 「ボクに指揮者の適正があるかは疑問だけど…やってみるよ!!」

 あゆはやっといつもの調子を取り戻した。

 「それでこそあゆさんです。さあ元気をだしてがんばりましょう」

 「うん、ボクがんばるよ。真琴ちゃんをしっかり押さえるんだ!!」





 

  「お〜い、あゆと栞〜!!」

 「あゆちゃんに栞ちゃ〜ん!!」

 「あゆあゆ〜、栞〜!!!」

 突然の呼びかけに二人がベランダを見るとそこには祐一と名雪、それに真琴がいた。

 「あれ?どうしたんですか」

 「ホントだ、三人そろってここに来るなんて珍しいね」

 のんきにそんなことを話しているのを聞いた祐一はため息をついた。

 「おい二人とも、秋子さんがお呼びだ!! 隊長室まで行くぞ!!」

 「「は〜い」」

 二人はそろって返事すると三人のいるベランダへと下りていった。






  「一体秋子さん、何の用なんだろう?」

 あゆが頭に思い浮かべたことを述べると祐一はぶっきらぼうに言った。

 「秋子さんのやることに無駄なんかないさ。きっと重要なことでもあるんだろうさ」

 「そうだよね〜、お母さんはすごいもんね〜」

 「秋子さんは完璧なのよ〜」

 「そうですよね。秋子さんはすごい人ですから、いろいろな意味で」

 栞の言葉に全員黙り込んでしまった。

 いろいろと過去にあったことを思い出してしまったからだ。
 
 「…行くか」

 ようやく気を取り直した祐一がそう言うとみんなは頷き、そして隊長室へと歩いていった。







あとがき

次回で6人目の隊員が登場します。

よって前回の予告は破棄させていただきます。




2001/03/04

2004/10/16改訂


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