機動警察Kanon 第017話










  けろぴーは一台のレイバーと向かい合っていた。



  そのレイバーの名はは菱井インダストリーのタイラント2000。

 重量級作業用レイバーのベストセラー機種である。

 機体の特徴としてはその圧倒的なパワーが上げられる。

 その分細かい作業は苦手ではあったが、ディーゼル駆動によるコストパフォーマンスの良さから

 現用の作業用としては最強を誇っており工事現場では極めて重宝されていた。





  『あー、マイクテストマイクテスト。

 えー、そこのタイラント2000に搭乗してる乗員、速やかに機体から降りなさい。

 強盗の容疑で現行犯逮捕しますよ』

 指揮車から顔をつきだして相沢祐一巡査は犯人に勧告した。

 タイラント2000は、破壊され横転した現金輸送車の前に立っている。

 今なら問答無用で取り押さえられそうだが手続き上必要不可欠なことだって世の中にはあるのだ。

 

  しかし犯人は動こうとはしなかった。

 まあ当たり前といえば当たり前、「逃げるな」といって立ち止まる犯罪者がいないのと同じだ。

 というわけで祐一は名雪に指示を与えた。

 『おい名雪、とっとと取り押さえちまえ。昼食が食べられん』

 「わかったよ。私だってイチゴ食べたいしね」

 そしてケロピーは一歩踏み出した。

 するとタイラント2000は一歩後ずさりした。

 『やつは怯えているぞ。一気にかたをつけてやれ』

 「了解だよ」

 そしてケロピーは風になった(笑)、というのは冗談にしても一気に懐に飛び込んだ。

 あわててタイラント2000はケロピーを近づけまいとその太い腕を振り回した。

 その一撃をひょいとしゃがみ込んでかわすと一気に機体に取り付こうとした。

 しかし犯人は思っていた以上に腕が立った。

 そのままものすごい早さで腕を切り返し、ケロピーを再び殴りつけてきたのだ。

 「わわっ!!」

 あわてて名雪はケロピーを操作したものの完全にはよけきれず右肩についていた回転灯が砕け散った。

 「なにするんだよ〜!!」

 名雪は愛しのけろぴーを傷つけられて怒った。

 そのまま懐に飛び込むとレイバーの掌底でコクピット真下を殴りつける。

 その衝撃でタイラント2000は後に数歩吹っ飛ばされた。

 あわててタイラント5000は機体を立て直そうとするがそのタイラント2000を追って

 ケロピーは再び懐に潜り込んだ。

 そしてようやくバランスを立て直したタイラント2000の右腕をつかむと一本背追いをぶちかました。

 圧倒的な重量差をも物ともせずぶん投げられたタイラント2000はものすごい勢いで地面に叩きつけられた。

 そのあまりの衝撃のためであろうか、コクピット内の犯人は気絶、事件は無事解決した。







 「うぅ〜、壊れちゃったよ〜」

 特車二課に戻ってくるなり名雪はけろぴーの肩にまたがって壊れた回転灯をなで回した。

 「何をしているんですか?」

 キャリアから降りてきた美坂栞巡査がそう声をかけると名雪は嘆いた。

 「ケロピーに傷がついちゃったよ〜」

 「…そんなもんすぐに直せるだろ、部品代だって安いし。」

 名雪の言葉を聞いた祐一はあきれた口調でそう答えた。

 「で、でも…」

 「真琴の222号機にくらべりゃずっとましだろ」

 「そうですよ名雪さん。真琴さんのKanonを見てくださいよ。

 あんまり壊すものですから純正部品尽きちゃったんですよ」

 たしかに真琴のKanonは頭、それに肩など形状がケロピーとは異なっていた。

 「真琴のについている部品はみんなテスト用の試作品なんだぜ。

 それに比べたら回転灯がぶっ壊れたなんてかわいいもんだろ」

 祐一がそう言うと背後から沢渡真琴巡査がひょいと顔を出し、文句を付けた。

 「何よ祐一、文句でもあるの?ははぁ〜ん、私のが最新型を積んでいるからうらやましいんでしょ〜」

 それを聞いた祐一はため息をついた。

 「アホかお前。最新型といえば聞こえがいいが要は動作確認が取れていない爆弾じゃないか」

 「な、何よ。私の分からない難しいこと言って煙に巻こうったってそうはいかないんだからね」

 真琴はあわててオフィスへと駆け込んでいった。






 「……まあ真琴の使い方が良いかという話は抜きにして名雪はけろぴーを大事にしすぎだぞ。

 けろぴーにつく傷は勲章と思わなくっちゃな」

 祐一の言葉に名雪は反論した。

 「で、でも祐一…壊さないほうが……」

「そりゃあそうだ、国民の血税で運用しているんだから壊れないに越したことはないさ。

 でもお前はけろぴーを大事にしすぎる。けろぴーは格闘用パトレイバーなんだぞ。

 壊れる物として覚悟を決めなくちゃいけないぞ」

「うーっ、けろぴーを傷つけたくないよ〜」

 真面目な話をしているのだがけろぴーの名前で雰囲気は台無しだった。

 「まあまあ二人とも、早く昼食食べませんか?」

 二人の雰囲気を察してか栞が二人の話に分け入った。

 「そうだな」

 「そうだね」

 元々単純な性格で、しかもお腹がすいていた二人は即座にうなずいた。

 「それじゃあ食堂に行きましょう」



 というわけで一号機運用班の三人は仲良くハンガーへと降りていったのであった。

 

 

あとがき

あと2.3個エピソードを挟み込んで新メンバーを出したいと思っています。

そしてそれからストーリー展開したいですね。




2001/03/03 雛祭りの日に

2004/10/16改訂


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