機動警察Kanon 第013話








  「わっ!! 何するんだよ〜」

 慌てて名雪はケロピーを下がらせた。

 犯人のクラブマンの前マニュピュレーターがケロピーを殴りつけたからだ。

 その動作はとても今日初めて(正確には昨夜)乗ったとは思えない機敏な動きだ。

 『上手いぞ名雪!』

 無線から聞こえてくる祐一の言葉に名雪は嬉しそうに笑った。

 「ねえ祐一、上手いって本当?」

 すると無線から慌てたような祐一の声が飛び込んできた。

 『ば、馬鹿!! 犯人から気を逸らすんじゃない!!』

 「へっ!?」

 名雪が一瞬とまどった隙にクラブマンは再びケロピーに襲いかかった!!







 「きゃあー!!」

 名雪は悲鳴をあげながらもさっきと同じようにケロピーを下がらせた。

 しかしさっきとは違い気を他に逸らしていたので若干行動が遅れていた。

 そのためケロピーのボディーの一部には鋭い傷跡が残されていた。

 

  「だ、大丈夫か名雪!!」

 すると名雪から返事が返ってきた。

 『祐一…ダメだよ……』

 その何とも情けない声に祐一は驚くと同時に名雪の身になにか起こったのではないか、そう心配し、尋ねた。

 「どうした名雪!! 怪我でもしたのか?」

 『祐一…わたしもう笑えないよ……』

 そのことばに祐一は恐怖した。

 何でもないように見えるけろぴー内部ではとんでもないことが起こっているのではないか、そう思ったからだ。

 しかし続く名雪の言葉が祐一をほっとさせたというか脱力させた。

 『うぅ〜、けろぴーのボディーに傷が付いちゃったよ〜!!』




 

  「……アホか名雪!!」

 祐一は名雪の言葉に怒鳴りつけた。

 『うぅぅぅ〜、祐一ひどいよ〜』

 「何がひどいんだ、心配かけやがって!!」

 『…嬉しいよ〜祐一♪』

 いきなりの名雪の感謝の言葉に祐一はとまどった。

 「…何がうれしいんだ名雪。」

 すると名雪の心底嬉しそうな声が返ってきた。

 『だって祐一、私のこと心配してくれたんだよ♪』

 「あ、相棒の心配をするのは当たり前…っていいから犯人を捕まえろ!!」

 祐一は照れ隠しに怒鳴りつけた。

 『わかった、それじゃあ犯人捕まえるよ。それなら祐一だって文句ないでしょ』








  「それじゃあ行くよ〜。」

 名雪はケロピーの左腕に装備してあったスタンスティクを引き抜いた。

 それに気がついたクラブマンは慌てたように襲いかかってくる。

 その攻撃を名雪は身をかがませることで攻撃をかわすとそのままスタンスティクの切っ先をクラブマンの右前

 マニュピュレーター関節に突き立てた。

 するとパシッと火花が飛び散ると同時にクラブマンの右前マニュピュレーターは完全にいかれた。

 『よし、上手いぞ名雪!!』
 
祐一は興奮したかのように叫んだ。

 これはまさに絶好のチャンス。

 犯人はもはや高速では移動出来なくなった今、もはや捕り逃す心配は全くなくなったのだから。

 続けざまに祐一は名雪に指示を与えた。

 『名雪!! 目標はがたが来ているぞ!! 速攻でやっちまえ!!』

 すると名雪は情けない声をあげた。

 「でもそんなことするとけろぴーの傷が増えちゃうよ〜」

 それを聞いた祐一は一瞬絶句し、そして怒鳴りつけた。

 『ばかぁ!! レイバーの傷なんぞ修理すりゃあ直るだろうが!!』

 「で、でも……」

 『いいか名雪!! ここでお前が奴を捕らえればお前のかわいいけろぴーの株もあがるんだぞ』

 「あ、そっか。そうだよね」

 『わかったら奴をやっちまえ!! 受けた傷は100倍返しだー!!』

 「わかった、やっちゃうよ〜!」

 名雪は祐一の言葉に発奮、ケロピーを駆ってクラブマンに襲いかかった。









  「どうやらうまくいきそうですね」

 秋子さんは目の前で繰り広げられている光景に満足げにうなずいた。

 いま目の前では名雪のケロピーがクラブマンの関節にスタンスティクを突き立てているところであった。

 そのためクラブマンはもはや歩くことも不可能、かろうじて立っているだけであった。
 
 そこへ全速力で走ってきた真琴が駆る222号機が戦いに参加した。

 『肉まんの恨み、思い知れ〜!!』

 そのままクラブマンに強烈な跳び蹴りを食らわす。

 するとクラブマンは蹴りの一撃に耐えかねひっくり返ってしまった。

 『今だよ〜!!』

 名雪は絶好にチャンスを見逃さなかった。

 そのままマニュピュレーターが集まるクラブマンの腹部部にスタンスティクを突き立てる。

 するとクラブマンは完全にいかれたのであろう、その機体からは完全に駆動音が消えた。









  「ご苦労さん」

 祐一はケロピーから降りてきた名雪にそう声をかけた。

 すると名雪は嬉しそうに笑った。

 「へへー、よくやったでしょー」

 「ああ、見事なものだったぞ、ほめてやる」

 そう言うと祐一は名雪の頭に手を置き、髪の毛をくしゃくしゃにかき回した。

 「も〜う、祐一やめてよ〜」

 名雪は抗議の声をあげるが祐一は無視して名雪の頭をなでくり続けた。

 すると名雪はとろーんとした表情になってきた。

 「うにゅ〜、気持ちいいよ〜」

 そうこうしているうちに名雪は立ったまま寝入ってしまった。







  「全くしょうがない奴だな。」

 祐一は名雪を背負うとキャリアに向かって歩き始めた。

 そんなに離れているわけではないのですぐにキャリアにつく。

 そこで祐一は中にいる栞に声をかけた。

 「お〜い栞、すまないがここを開けてくれ」

 するとすぐに栞がドアを開け、顔を出した。

 「どうしたんですか、祐一さん?って…分かりました。」

 栞は祐一の背中で寝息を立てている名雪を見てため息をついた。

 「すまないな栞。二課についたら宿直室に放り込むからさ」

 「いいですよ、それにしても名雪さん…うらやましいですね」

 「何がうらやましいんだ?」

 祐一の言葉を聞いた栞は苦笑した。

 「何でもないですよ祐一さん」

 その時背後から秋子さんが声をかけてきた。

 「さあさあみんな、って名雪は寝ちゃったんですね」

 秋子さんは苦笑いしている。がすぐに気を取り直した。

 「それじゃあ撤収です、二課に帰りましょう。」

 「「はい」」





  こうしてAV-99 Kanonの初陣はなんとか幕を閉じたのであった。









あとがき

とりあえずここで一くくりつきました。

この次はどうしようかな?

早く舞や佐祐理さんや美汐を出したいですね。





2001/02/22

2004/10/13改訂


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