機動警察Kanon 第009話
「それではみんな、準備はいいかしら?」
整列した五人の隊員の目の前で秋子さんはそう言った。
すでに221・222号両機の立ち上げは完了、いつでも稼働可能状態にある。
「「「「「はい!」」」」」
「はい、よろしい♪」
五人の元気の良い返事に秋子さんは満足げにうなずくと状況を説明し始めた。
「犯人の進行ルートは今までの経緯からこのようであると思われます」
秋子さんはホワイトボードに書かれた簡単な地図を指し示しながらそう説明した。
その進行ルートは都内主要地区を次々と突破、最終的には霞ヶ関を目指していた。
「本庁では今回のこの犯人の目的をバビロンプロジェクト(*1)を阻止せんがための破壊活動と位置づけて
いますがそんなことは私達には関係ありません。ただ犯人を汚なかろうと何だろうとお縄にするだけです。
幸いなことに私達に与えられたKanonは新型、力も技も一級品です。
それにいろいろとやばい武器も積んでいますからね。」
そう言う秋子さんの視線の先には37mmリボルバーカノンが今まさに搭載されようとしているところであった。
「秋子さん、いい?」
「はい、何でしょうか?」
促された真琴は秋子さんに訊ねた。
「えーっと犯人を見つけたらやっちゃっていいのかな?」
「やっちゃっていいのかな? とは何なんでしょう?」
「えーっと、あの鉄砲をぶっ放していいのかなぁということなんだけど……」
チラチラと横目で37mmリボルバーカノンを見ながら尋ねる真琴。
すると秋子さんはにっこり微笑んだ。
「危険ですからむやみに発砲しないで、と言いたいですが構いません。
現場の判断にお任せします。必要とあらばガンガン撃っちゃって下さい」
そう言うと秋子さんはたおやかに微笑んだ。
今後はもう二度とそのようなことを言うことはなかったが、この時の秋子さんはまだ知らなかったのだ。
真琴の性癖というか、趣味というか、まあそのやばさを……。
「それでは第二小隊出撃です。みなさん、がんばって下さい!!」
秋子さんの号令で隊員たちは一斉に各車両に乗り込んだ。
そして秋子さんの運転するミニパトに先導される形で現場へと向かったのであった。
(*1バビロンプロジェクト:
温暖化による水没から東京を守りために東京湾に作られた巨大な防波堤建造プロジェクトのこと。
この事業によってレイバーの必要性が増加、同時にレイバー犯罪も増加することとなった。)
そのころ第一小隊は……高速で逃げる犯人を必死になって追いかけているところであった。
『待ってよ〜。待ってったら〜』
そう叫びながら犯人を追いかけているのは川名みさき巡査部長操る211号機だ。
しかし重装甲・ハイパワーというスタンスで開発された98式「ONE」では高速移動可能な四脚レイバーである
クラブマンには到底追いつけそうにない。
「何をやっているのよ、みさき!! ちゃんと指示したでしょ!!」
指揮車から深山雪見巡査部長がそう叫ぶと無線のマイクから声が漏れてきた。
『だって雪ちゃ〜ん、お腹が空いていたもんだからつい……』
「あんたは任務中についでコンビニにしけ込むのか!!」
『腹が減っては戦は出来ないんだよ〜』
「ならアンタはいつも戦が出来ないでしょ!!」
まあそんなやりとりはどうでも良いとしてテロリスト乗り込むクラブマンは第一小隊の阻止線を突破。
確実に霞ヶ関に近づきつつあった。
あとがき
なんか今回は秋子さんの独壇場ですね。
2001/02/17
2004/10/13改訂