機動警察Kanon 第008話













  「おい七瀬、目標が接近中だぞ」

 「うるさいわね、そんなことわかっているわよ」

 折原浩平巡査の言葉に七瀬留美巡査は苛ただしそうに反応した。

 「おい七瀬、何をいらついているんだ?」

 「……いらついてなんかいないわよ」

 「そうか?俺はてっきりあの日だと……」

 「黙れ折原!! 乙女にそんなこと言うんじゃないわよ!!」

 「おうおう、怖いね〜。さすが乙女だな」

 「うぅ〜」

 二人がそんな馬鹿っ話をしているとキャリア担当の長森瑞佳巡査が鋭く叫んだ。

 「二人とも!! レイバーが接近するよ!!!」

 「「はっ!?」」

 思わず気を逸らしてしまっていた二人は慌てて反応しようとした。

 しかしそれは遅かった。

 不審レイバーは七瀬巡査の乗る98式をぶち倒すとそのまま一気に駆け去った。

 「何やってるんだ、お前は!! 漢がそんなにあっさりやられるな!!」

 「誰が漢よ、誰が!! 乙女に向かって失礼でしょ!!」

 「二人ともそれどころじゃないよ!!」

 瑞佳の指摘にあわてて指揮車の無線のマイクを取った浩平はマイクに向かって叫んだ。

 「目標は第一線を突破!! 進路を変えて進行中!! なお目標を確認!! 

 機種はKey重工業社製『クラブマン』と判明!! 繰り返す……」






  その一報を受けた各警察部署は一斉に犯人を包囲すべく動き始めた。

 もちろん特車二課第一小隊もそうだった。





  「七瀬さんたち、うまくやったようね。」

 小坂警部補は霞ヶ関を目指していた犯人の進路が大幅に変更された状況を一号機指揮官深山雪見巡査部長と

 交信しながらそう言った。

 「まさか犯人の進路を変えさせられるなんて…。とてもそこまで期待していなかったのだけれど」

 『そうですね』

 実際は単なる偶然にしかすぎなかったがまあ結果ALL RIGHTSというやつであろう。






 そのころ特車二課本部では…必死になって立ち上げを急いでいた。







  「おい名雪、後少しだからな。がんばれよ。」

 『分かったぉ〜、グゥ〜』

 恐ろしく眠たそうな声というか眠っている声が帰ってきた。

 すでに時計の針は午後十一時を回っている。いつもの名雪ならとっくに寝入っている時間だ。

 それでも名雪はかろうじて起きたままというか眠ったままというか返事を返してきたのである。

 (まったくあいつは……)

 その時指揮車の外から秋子さんが声をかけてきた。

 「ずいぶん時間かかっているみたいだけどあの子まさかコクピットで眠っているんじゃないでしょうね?」

 「…よく分かりましたね。」

 無線のマイクから流れてくる定期的な寝息を聞きつつ祐一がそう答えると秋子さんはため息をついた。

 「まったくあの子にも困った物ね。レイバーの操縦は上手いのに……」

 「どうします?」

 祐一が尋ねると秋子さんはきっぱりと言った。

 「第二小隊は設定終了次第、第一小隊の応援に向かいます。

 ですからあの子を起こして設定を完了させてちょうだい」

 秋子さんはそう言うと二号機の方へと歩いていった。

 そこで祐一はインカムを指揮車に残すとケロピーの元へと向かった。








  祐一がケロピーの元にたどり着くとコクピット内からは無線でも聞こえた寝息が聞こえてきた。

 祐一はため息をつくとコクピットを解放、中の名雪に声をかけた。

 「おい名雪!! さっさと起きろ!!」

 「うにゅ〜、わたし好き嫌いなんかないよ〜。にんじんだって食べられるんだから」

 すっかり寝ぼけている。

 いつものように長々と起こし続けるわけにはいかない。

 やもなく祐一は最終奥義を使うことにした。

 「なあ名雪…」

 「うにゅぅ…何だぉ〜?」

 「眠っているお前に特別に良い物をやろう」

 「良い物って何だぉ〜?」

 「秋子さん謹製の謎ジャムだ。うれしいだろう?」




ガバァ!!!




  そんな擬音が聞こえてくるぐらいの勢いで名雪が飛び起きた。

 その額からは冷や汗がだらだらと垂れている。

 「祐一ひどいよ〜」

 名雪はをとがらせてそう言うが祐一はどこ吹く風といった感じだ。

 「仕事中に寝るお前が悪い。ほれ、さっさと立ち上げ完了させるぞ」

 「うぅ〜…分かったよ、祐一の意地悪……」







あとがき

とりあえず篠原重工をKey重工と表記することにしました。

他はそのままの予定。

それとも変えた方がいいのかな?



2001/02/16

2004/10/09改訂


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