機動警察Kanon 第006話












  「ようやく来るんだね祐一〜」

 ハンガーの二階から下の整備所を見下ろしながら名雪はご機嫌そうに言った。

 ちなみに一階では整備班の人間が今日出動したレイバーの整備を行っている。

 「ああ、ずいぶん待たされたけどな」

 ぶっきらぼうに返事する祐一ではあったがその実嬉しそうだった。

 まあ男なら誰だってメカとかに興味があるものだ。

 「ところで名雪…お前大丈夫なのか?」

 祐一は心配そうに尋ねた。

 すでに時計の針は午後八時を回っている。

 「うぅ〜、実はあんまり大丈夫じゃないかも〜」

 すっかり睡魔に取り憑かれられているようだ。

 「……そんなんで立ち上げできるのか?」

 祐一の言葉に名雪はうなずいた。

 「もちろんだよ〜。だってけろぴーに会えるんだよ〜」

 「けろぴーだと?」

 祐一は首を傾げた。

 新型レイバーの名前はまだ隊員たちには公開されていなかったからだ。

 「けろぴーって一体何だ?」

 祐一の言葉に名雪は幸せそうな表情を浮かべながら言った。

 「う〜んとね〜、けろぴーは私のパトちゃんにつける名前なんだよ〜」

 「…それは正式採用名なのか?」

 「違うんだぉ〜、私のレイバーにつける名前なんだぉ〜」

 それを聞いて祐一はようやく納得した。

 どうやら名雪が自分で勝手につけるレイバーの愛称であるらしい。

 例を挙げるならアメリカ空母「エンタープライズ」にビッグEとかそう言ったものなのだろう。

 「それは良いからしっかり起きていろよ。設定はお前がやるんだからな」





  ププゥー





  その時、ハンガーのすぐ外でけたたましい音が鳴り響いた。

 車のクラクションである。

 どうやらレイバーを載せたキャリアーが到着したらしい。

 整備班の人間があわただしく動き始める。

 そこで整備班長美坂香里が部下たちに叫んだ。

 「電源ぶち込みなさい!!!初期設定、さっさと始めるわよー!!」








  「あ、香里だ〜」

 レイバーの到着を知り、さすがに少し目が覚めたのであろう、友人の姿を見つけた名雪はそうつぶやいた。

 そしてそのまま香里に向かって手を振って叫んだ。

 「香里〜!! こっちだよ〜!!」

 その声を聞きつけたのであろう、香里は名雪を見ると軽く手を振り、そして叫んだ。

 「名雪ー!! そんなところにいないでさっさと下りてらっしゃいー!! 初期設定始めるわよー!!」





  そこで祐一と名雪の二人はさっさと一階へと下りたのだった。



  祐一と名雪、二人がハンガー一階につくとそこにはすでにあゆ・真琴・栞の三人がいた。

 そしてその目の前では今まさにキャリアーの荷台がデッキアップされている真っ最中であった。

 「やっとお目見えか……」

 祐一がつぶやくと名雪・あゆ・真琴・栞もうなずいた。

 そのままグィングィン音を立てながら荷台があがっていく。

 そして登り切ったとき、そこに新型レイバーの勇姿が……見えなかった。

 なぜならばレイバーは厚いキャンバス生地のシートで覆われていたからだ。

 しかしすぐに整備員がレイバーに群がり、シートをかけていたロープをほどいていく。

 そしてバサリと音を立ててシートが床に落ちた。

 そこから姿を見せたのは何とも趣味的なというかスマートで見栄えの良いレイバーが立っていた。

 五人の隊員はそのまま黙り込むとレイバーをじっと眺め続けた。







 「さあさあみんな、初期設定始めるわよ」

 突然の声に五人は驚いて後ろを振り返るとそこには満面の笑みを浮かべた秋子さんが立っていた。

 その手には分厚い初期設定用マニュアルが6冊抱えられている。

 そのマニュアルの表紙にはAV-99「Kanon」と書かれている。

 「そいつがこのレイバーの名前なんですか?」

 祐一の言葉に秋子さんはうなずいた。そして

 「さあみんなマニュアルを取って。Kanonの初期設定始めるわよ」

 「「「「「はい!!」」」」」

 五人は元気(名雪だけ眠そうな声で)よく叫ぶとそれぞれ自分の担当機材に向かって走り出した。








あとがき

ようやく第二小隊用レイバー登場です。

名前はAV-99「Kanon」ですがその内容はAV-98「イングラム」と寸分違わぬと思っていただいて結構です。

ちなみに第一小隊が使用するのはTactics重工業製98式「ONE」です。

とすると次の新型は「Air」かな?




2001/02/14

2004/10/09改訂


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