機動警察Kanon 第004話












  ジリジリジリー






  枕元で鳴り響いた目覚まし時計に相沢祐一は手を伸ばした。

 そのまま手探りで目覚まし時計を手に取るとスイッチを切る。

 するととたんにけたたましい金属音は鳴りやんだ。

 「…もうこんな時間か」

 祐一はつぶやくと布団から身を起こした。

 そして手早く制服に着替えると宿直室を出た。

 すると突然けたたましい音が鳴り響いた。

 その発生源は女性陣が使っている宿直室の一つから鳴っている。

 とあわててパジャマ姿の少女が飛び出してきた。

 かわいらしいパジャマを着たその少女は……美坂栞巡査であった。

 「どうしたんだ栞?」

 祐一の言葉に反応することなく思いっきり狼狽している。

 「なっ…なっ…なっ?」

 どうやらあまりの騒々しさに驚いてパニくったらしい。

 「大丈夫か?」

 顔をのぞき込んでそう言うとようやく落ち着きを取り戻したらしい、祐一に尋ねた。

 「ゆ、祐一さん!! あの騒音は一体何なんですか!?」

 ちなみにまだ目覚まし時計の音は鳴り響いている。

 「あれは多分…いや間違いなく名雪の目覚まし時計だ。昨夜寝るとき気がつかなかったのか?」

 祐一の質問に栞は首を横に振った。

 「名雪さん、昨夜私が宿直室に入った時もう寝てたから起こしちゃ悪いと思って明かりつけなかったんです」

 「はぁー」

 祐一は大きくため息をつき、そして言った。

 「そんなことで名雪が目を覚ましたら苦労はしない。

 それより隣の部屋を借りて着替えな。俺は名雪のやつをたたき起こすから」

 「お姉ちゃんから話には聞いてましたけど噂以上ですね」

 うるさく鳴り響く目覚まし時計の音にも関わらず未だに起きてこない名雪。

 その強者ぷりを察してか栞は大人しく真琴・あゆが眠っている宿直室へと着替えを持って入っていった。









  祐一は宿直室のドアを開けると薄暗い室内へと入っていった。

 あいかわらずけたたましい音を何十個もの目覚まし時計が鳴り響かせている。

 とりあえず祐一はそれら全てのスイッチを切った。

 これでようやく宿直室内は静けさを取り戻した。

 しかしこれで終わりではない、というかこれからが本番である。

 祐一は宿直室のカーテンを一気に開け払った。

 とたんにまぶしい朝日が室内に入り込む。

 それでも名雪はぐうぐう気持ちよさそうに眠っていた。

 「おい、名雪!! 起きろ!! 起きるんだ!!」

 祐一はそう叫ぶと布団を引っ剥がしたが名雪は起きる気配を全く見せない。

 次に祐一は名雪の肩をつかむと無理矢理体を起こさせ、体を揺さぶる。




  ユサユサユサ




 「うぅぅ〜、地震だぉ〜」

 寝ぼけているのだろうか、そんなぼけたことをつぶやく。

 そこで祐一は最終手段というか奥の手というかこれしかない手というかまあアレ使うことにした。

 「なあ名雪……」

 「何だぉ〜」

 「おまえの朝食はあのジャムをたっぷりと塗ったトーストに決定したからな」

 「…あのジャム?」

 名雪はうなされたようにつぶやく。

 しかし祐一は心を鬼にしてその言葉を口にした。

 「秋子さんお気に入りのオレンジ色の原材料不明、甘くないジャムだぞ」



   ガバァー



  あわてて名雪は布団から飛び起きた。その額には汗がダラダラ垂れている。

 「祐一ひどいよ〜」

 抗議する名雪だが祐一はあっさり黙殺した。

 「やかましい、起きないお前が悪いんだ。それより早く着替えろよ。昨日みたいに飯を食いっぱぐれるぞ」

 そう言って祐一は宿直室を出た。

 そしてため息をつくとぽつりとつぶやいた。

 「まったく名雪のやつ……」

 「名雪がどうにかしましたか?」

 「わぁ!!」

 祐一は思わず驚いた。

 いきなり秋子さんに声をかけられたからだ。

 「あら、驚かしてしまったようですね。ところで名雪は目を覚ましましたか?」

 「ええ、起きましたよ」

 祐一の言葉に秋子隊長は笑った。

 「やっぱりあの子を起こすのは祐一さんが一番のようですね」

 「そんなのちっとも嬉しくないですが……ところで隊長、一つお願いいいですか?」

 「なんでしょう?」

 そこで祐一は昨日から思っていたことをうち明けた。

 「隊長って呼びにくいから昔みたいに秋子さんって呼んでも構いませんか?」

 「了承(一秒)」

 いつものように隊長、いや秋子さんは了承してくれた。

 「いやーよかった。秋子さんは秋子さんで隊長じゃなかったんですよ」

 祐一の言葉に秋子さんは嬉しそうに笑った。

 「そう言ってもらえて光栄だわ。それより急がないと」

 秋子さんの言葉に祐一はあわてた。

 このままでは昨日と同じくご飯を川名みさき巡査部長にすべて食べられてしまう。

 祐一はあわててハンガーへと駆けだした。

 

 

 

 

あとがき

 前話の教訓を生かして登場人物を減らしました。

 というわけで今回はあゆ・真琴の出番はなしです。




2001/02/12

2004/10/09改訂


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