機動警察Kanon 第003話













 

  第二小隊の面々がハンガーにやって来た時、そこではすでに食事が始まっていた。

 というよりは始めから待つ気などさらさらないようであった。

 みんな夢中になってかっこんでいる。

 「……なんだかみんな薄情ですね」

 栞の言葉にあゆはうんうんと頷いた。

 「本当だよね。栞ちゃんのいうとおりだよ」






  だがしばらく食事の様子を観察していると違うことに気付いた。

 それは食事をかっこんでいる人たちはお腹を空かせているのではない、ただ急いでいるだけのようだったのだ。

 「…なんで急いで食べているだろうな?」

 祐一がつぶやくと真琴は言った。

 「ご飯がすっごくおいしいんじゃないかな?」

 祐一は黙ったまま真琴の頭をポカッと殴った。

 「痛い〜!! 何するのよ〜、祐一!!」

 「おまえが馬鹿なこというからだ。そんなわけないだろ!!」

 「わかんないわよ。秋子さんだっているんだしありえないことじゃないと思うし」

 「隊長が食事の支度をするもんか!!」

 祐一と真琴が喧嘩しようとしたその時、名雪がのんびりした声で言った。

 「多分……あの人が全部食べちゃうからじゃないかな?」

 「「何っ!?」」





  よく見ると大きいテーブルの片隅に座っている大和撫子風の女性がもの凄い量を食べていたのだ。

 それも並大抵の量ではない。

 ご飯をおかわりするのに茶碗ではなくおひつなのだ。

 たおやかな外見に似合わない大食いに第二小隊の面々はただ呆然として見ているだけ。

 そうこうしているうちに食卓に並んでいたご飯は全部無くなった。








  「あー、おいしかったよ。でもちょっと物足りないね」

 ご飯を食べ終えた女性はとんでもないことを言ってくれた。

 (あれで物足りない……?)

 第二小隊の面々が驚愕していると女性の隣に座っていた大人びた女性が祐一たちに気づき、近づいてきた。

「あなた達は?」

 そこで第二小隊の面々は名乗った。

 「あなたちが第二小隊の……申し遅れたわね、私は深山雪見。巡査部長よ。

 そしてあの大食漢が同僚の川名みさき。やっぱり巡査部長なの」

 上官であることを知った五人はあわてて敬礼した。

 すると深山巡査部長は手をパタパタと振って言った。

 「ここでは課長以外には敬礼なんかしなくていいわ。みんな仲いいんだからね。ところで食事は?」

 「「「「「………」」」」」

 五人の無言の返事を聞いた?深山さんはため息をついた。

 「みんなあの子が食べちゃったのね。…いいわ、台所を案内するから自炊してちょうだい」

 「ご飯つくるの?」

 そこへ件の川名巡査部長が話に割り込んできた。

 すると深山巡査部長はみさき巡査部長に叫んだ。

 「みさき!! あんたは十分食べたでしょが!!」

 「えー、だってまだ物足りないよ」

 「いい加減にして起きなさい!! 食費だって馬鹿にならないのよ!!」

 「ぶー、雪ちゃんいじわるだよー」

 みさき巡査部長はそう言うと軽い足取りで構内へと戻っていった。






 「……ごめんなさいね。あの子底なしだから」

 「「「「「「いいえ……・」」」」」

 五人は見事に重なった言葉でそう頷いた。

 「それじゃあこっちよ。」

 深山巡査部長に連れられ、五人は炊事場へと案内された。

 そしてそこで名雪と栞が作ったご飯が第二小隊の面々の夕食となったのであった。





   五人が遅い夕食を食べ終えるとタイミング良く秋子さんが姿を現した。

 「みんなご飯ちゃんと食べたかしら?」

 秋子隊長の言葉に五人は頷いた。

 「それじゃあもう今日はこれでいいわよ。」

 その言葉に栞は尋ねた。

 「それじゃあ帰宅してもいいんですか?」

 「了承…って言いたいけれど駄目よ。レイバーはないけど待機中ですもの」

 「うぐぅー、たい焼きほしかったのに」

 「真琴も肉まん食べたいよー」
 
 不満タラタラな二人を秋子さんは窘めた。

 「残念だけど我慢してちょうだいね。待機もお仕事なんだから」

 「「「「「はぁ〜い」」」」」





 こうして彼らの特車二課生活一日目は終えたのであった。

 

 

あとがき

ようやく復旧した自分のパソコンで打った話です。

しかしなんか今ひとつというかこんな短い話に8人は出しすぎだ。

もっと長くするか人数を減らすか……今後の課題ですね。

 

おまけ・・・第一小隊編成

       隊長:小坂由起子(警部補)

 一号機パイロット:川名みさき(巡査部長)

   一号機指揮官:深山雪見(巡査部長)

一号機キャリア担当:上月澪(巡査)

 二号機パイロット:七瀬留美(巡査)

   二号機指揮官:折原浩平(巡査)

二号機キャリア担当:長森瑞佳(巡査)

 三号機パイロット:柚木詩子(巡査)

   三号機指揮官:里村茜(巡査) 

三号機キャリア担当:椎名繭(巡査)



2001/02/11

2004/10/09改訂


「機動警察Kanon」TOPへ戻る    SS-TOPへ戻る