機動警察Kanon 第001話










  ハイパーテクノロジーの急速な発展と共にあらゆる分野に渡って進出した多足歩行式作業機械レイバー。

 しかしそれはレイバー犯罪と呼ばれる新たな社会的脅威をも生み出した。

 続発するレイバー犯罪に対抗すべく警視庁は本庁警備部内に特殊機械化中隊を創設した。

 特車二課、通称パトレイバーの誕生である。







  「ここが特車二課か……」

 特車二課前というバス停に降り立った相沢祐一は呆然としたようにつぶやいた。

 なんせ周囲5km圏内にはコンビニ一つないとんでもない僻地だったからである。

 「あぅー、肉まん買えるのかな?」

 とつぶやいたのは沢渡真琴。

 「うぐぅー、たい焼き食べれるの?」

 と嘆いたのは月宮あゆ。

 「アイス買えるのでしょうか?」

 と寂しそうに言ったのは美坂栞 。

 食い意地の張った彼女らは皆、この度新設された特車二課第二小隊のメンバーであった。

 一年前に警視庁に採用、半年の基礎訓練を受けた後、特車二課に配属されるために半年にも及ぶ猛訓練を

 受けてきたのである。






  「あらあら、荷物が一つ足らないわね」

 特車二課第二小隊隊長水瀬秋子は隊長室の窓から、ついたばかりの隊員たちを見てそう呟く。

 「秋子先輩の娘さんはまだのようね」

 これは第一小隊隊長の小坂由起子さんのセリフだ。

 「どうやらまた起きられなかったみたいね」

 ちっとも困っていなさそうに秋子さんは微笑みながら言った。

 「それで良いんですか、先輩?」

 その時、隊長室のドアがノックされた。

 「どうぞ」

 由起子さんの言葉にドアが開き、入ってきたのは整備班班長美坂香里であった。

 「秋子さん・由起子さん。これから八王子まで行って来ます。課長がいないものですから」

 「了承(一秒)」

 「……どうしたの、美坂さん。わざわざ八王子まで行くなんて」

 二人の隊長の言葉に美坂班長は言った。

 「実はKeyの製品に不良品が出たそうなんです。ですから最終チェックのやり直しに……」

 「がんばってね香里ちゃん」

 秋子さんの言葉に香里は微笑んだ。

「それでは行って来ますね。」

 そして美坂班長は部下の北川・住井・斉藤らを引き連れてKey重工業八王子工場へと向かったのであった。






 「秋子先輩…人も機械も無くってどう仕事するんですか?」

 高校・大学・警察学校と先輩・後輩の間柄であった小坂隊長は同僚である秋子さんにそう切り出した。

 しかし秋子さんはまったく動じなかった。

 湯気の立つ紅茶にオレンジ色のジャムをたっぷり入れてロシアンティーを作るとそれを優雅に口にした。

 「ああおいしいわ。由起子さんもいかがかしら?」

 その言葉に小坂隊長はあわてて首を横に振った。

 「い、いいです!! ま、まだ喉が乾いていないし」

 「そう…おいしいのに……」

 がっかりする秋子さんを後目に小坂隊長はほっと胸をなで下ろした。

 (危ういところだった…もう少しで謎ジャムの餌食に……)

 その時、荒野(特車二課周囲はまさに荒野なのだ)から砂煙がわき上がっているのが目に付いた。

 「あら? 何かしら?」

 少しでも謎ジャムから離れたい小坂隊長は窓から外を見下ろした。

 すると誰か人が走ってくる。

 「あれは?」

 「あれは名雪ね。まったくあの子ったら社会人になっても遅刻するんだから……」






  そのまま走ってきた謎の人物、いや水瀬名雪は玄関前にいた祐一・あうぐぅ・栞を無視してそのまま

 特車二課内に飛び込むとあわただしく駆け込んできた。

 と間もなく隊長室の扉が勢いよく開かれ、優しげなというか眠たそうな顔をした女の子が飛び込んできた。

 「お、おはようございます!! 本日付けで第二小隊に配属された水瀬名雪です!!」

 敬礼しながら目の前にいる人物に気がついた名雪は驚いた。

 「お、お母さん!?」

 名雪の言葉に秋子さんは微笑みながら言った。

 「駄目よ名雪、いえ水瀬巡査。ここは職場なんだから隊長ってよばないとね」

 その時、玄関で名雪に吹っ飛ばされた佑一・あゆ・真琴・栞が隊長室に入ってきた。

 そして四人が四人とも秋子さんを見て驚いた。

 「「「「秋子さん!?」」」」







  「かくかくしかじかこういうわけでです」

 はっきり言えばこんな説明でわかるわけがない。

 しかし秋子さんの説明を聞いた五人はこくこく頷いた。

 そうしなければとんでみないこと(謎ジャムの刑)に合わされるのではないか。

 そう思わずには居られなかったのだ。

 「せっかくですからこの場で編成を発表しますね」

 秋子さんの言葉に五人は再び頷いた。

 今度は純粋に自分がどこに配置されるのか知りたかったからだ。

 「それでは言いますね。」

 秋子さんは手にした書類を読み上げた。

 そこには次のように書かれていた。





 1号搭乗 水瀬名雪巡査

 1号指揮車 相沢祐一巡査

 1号キャリア担当 美坂栞巡査

 2号搭乗 沢渡真琴巡査

 2号指揮車 月宮あゆ巡査





 「まだ全員揃っていないから暫定的な編成だけど。みんな仲良くね」

 「「「「「はい!!」」」」」

 秋子さんの言葉に五人は揃って返事した。

 これが通称「警視庁のお荷物」・「独立愚連隊」・「猫の手も借りたい」といわれる特車二課第二小隊の

 始動となるのであった。











あとがき

とうとう書いちゃいましたKanon-SS。

まだPC版もDC版もゲームはやってないのに……。

 

というわけでKanonパロディです。

これならやってなくってもまあ書けるでしょうということで。

 

ちなみに第二小隊のメンバーはあと一人。

そして第一小隊はおねの登場人物がつとめることになっています。

基本的には全員出すので お気に入りキャラが出るのをじっくり待っていてくださいね。




2001/02/07

2004/10/09改訂


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