星々の輝き

 このSSは美凪BadEND後を想定しています。

そのことを念頭に置いてお読みください。


 

 

 

 やかましいくらい蝉が鳴く中、二人の男女が田舎道を歩いていた。

どれくらい田舎といえば360度、全てを見渡しても民家が一軒も見えないほどだ。

ただちょっと離れたところに神社らしき鳥居と社が見えるだけ。

人影も全く目にすることが出来ない。

そして田舎道の両側には青々と茂った稲が植えられた田圃が広がっている。

空にはぎらぎらと照りつける太陽。

まさに夏の暑い真っ盛りと言った様子だ。

 

 その時、きれいな長い髪を持つ少女が立ち止まった。

そして手にしていたスポーツバックをそっと道ばたへと下ろし、ふぅ〜と大きく息をついた。

すると前を歩いていた男が振り返った。

この男は見るからに暑苦しそうな黒っぽい格好であるが旅慣れているらしい。

とくにこれといった疲れを見せてはいなかった。

そして少女に向かって声をかけた。

「遠野、大丈夫か?」

すると遠野と呼ばれた少女は顔を上げると頷いた。

「・・・へっちゃらです。・・・それより国崎さんこそ大丈夫ですか?」

すると国崎と呼ばれた男は頷いた。

「当たり前だ。そもそもお前が旅のことで俺の心配をするなんて1000年早いぞ。」

「・・・それもそうですね。それでは行きましょうか。」

そう言うと少女は地面に置いたスポーツバックを肩に担ぐと歩き出そうとした。

しかしそうはならなかった。

少女はそのままふら〜と前に倒れ込んだのだ。

「美凪!!」

男はあわてて倒れかかった少女を抱きとめた。

 

 

 

 

 それから数時間後。

少女は薄暗い、ひんやりとした屋内で目を覚ました。

しかし少女は取り乱した様子もなく起きあがる。

するとぱさりと濡れタオルが床に落ちた。

どうやら少女の額に載せられていたものらしい。

それによく見ると少女の服の前が開かれている。

その雪のように白く美しい肌、そして下着がちらちらと覗かせている。

しかし少女はあわてる様子もなくボタンを留め、その周囲を見渡した。

するとそこには・・・祭壇が据え付けられており何やら名前も分からない様々な物が備えられいる。

「・・・ここは社の中でしょうか?」

遠野美凪はそう呟いた。

 

 すると社の扉が開き、先ほどの男・・・国崎往人が顔を出した。

「遠野、もう大丈夫か?」

すると美凪はこっくり頷いた。

「・・・はい、もうへっちゃらへ〜です。・・・それよりも私は一体?」

「何、気にするな。ただの熱中症だよ。」

美凪の問いかけに国崎往人はぼさぼさの頭をかくとそうぶっきらぼうに言った。

「・・・そうでしたか。お手数かけてすいません。」

「仕方がないさ。旅慣れていない遠野だ、こういう事もあるさ。

それよりもこういう状態になるまで我慢するなよ。ちょっと休めば倒れるまで行かないんだから。」

国崎往人の忠告に美凪はこくんと頷いた。

「・・・はい。・・・今度からはそうします。」

「うむ、そうしてくれ。」

「・・・ところで国崎さん・・・」

「何だ?」

「・・・言ってくださればいつでもお相手しますからこんな気を失っている状態の私を・・・」

「はあ?何を言っているんだお前は、よくわからんぞ。具体的に言え。」

国崎往人は美凪の言っていることが分からず聞き返した。

すると美凪は

「・・・ぽっ。」

と顔を赤らめた。

そしてここで国崎往人は美凪の言っている事を理解した。

「ば、バカ!何を言っているんだお前は。意識を失っている相手にそんな不埒なまね、出来るか!!」

美凪以上に顔を赤らめて国崎往人は叫んだ。

どうやら人相の悪いくせにに妙に純情らしい(笑)。

国崎往人は自らの行動を事細かに説明する事で美凪の誤解を説くはめになった。

 

 

 

 「・・・ところで今日はどうします?」

何とか誤解も解けたところで美凪はいつものポーッとした表情で尋ねてきた。

そこで国崎往人は言った。

「今日はここで泊まろう。幸い屋根もあるし水道もある。久しぶりに雨露しのげる場所で寝られるぞ。」

「ぱちぱちぱち。」

 

 こうして二人は今日は一晩ここ○○神社で一夜を過ごすこととなった。

 

 

 

 

 

 「あれ?どこへ行ったんだ。」

夜半、ふと目が覚めた国崎往人は傍らに寝ていたはずの美凪の姿が見えないことに気がついた。

(トイレにでもいっているのか?)

デリカシーのない彼はそう思い、目を閉じると眠ろうとした。

しかし美凪は十分経っても二十分経っても戻ってこない。

さすがに心配になった彼は起きあがると探しに行くことにした。

 

 

 

 「何だ、ここにいたのか。」

探し始めてすぐと言うべきか、美凪は社を出たすぐ近くのベンチに座って夜空を眺めていた。

そこで彼は美凪の隣に座ると同じく夜空を眺めた。

空には満天の星が瞬いている。

「・・・星、きれいですね。」

「ああ、きれいだな。」

 

 

 

 そんな星々をしばらく眺めていたが、やがて美凪は視線を地面に落とし、そして言った。

「・・・このような夜空・・・星々を見るのはあの時以来です。」

「そうか?・・・確かにそうかもな。」

美凪の言葉に国崎往人は頷いた。

まだあれからそれ程日時が経っているわけではない。

しかし間違いなくあの時とは状況が異なっていた。

あの時は・・・二人ではなく三人で星空を眺めたのだから。

 

 「みちる・・・あの子は今どうしているんでしょうか?」

その言葉に国崎往人は首を振った。

「あいにくだがみちるの事は遠野、お前以上に詳しい奴はいないと思うぞ。」

「・・・国崎さんでもわかりませんか?」

美凪の言葉に彼は苦笑した。

「何で俺ならばわかるんだ?」

「・・・何やら不思議な力をお持ちですから・・・」

「俺の力なんぞたかがしれているよ。ただあの古ぼけた人形を使ってケチな芸をするだけだ。」

「・・・残念・・・」

「まあもっともそんな力なんぞなくってもあいつの居場所なら分からないでもないがね。」

「本当ですか!」

国崎往人の言葉に美凪はそう叫んだ。

そこで国崎往人は頷き、言った。

「なあ美凪、お前なら知っていると思うが昼間にも星って出ているそうだな。」

「・・・はい、確かにそうです。・・・昼間は太陽の強い光に遮られて見えませんが星はいつも瞬いています。」

何の脈略もなさそうな彼の言葉に戸惑いつつ、美凪は頷いた。

そして彼は美凪の言葉に満足げに頷くと続けた。

「つまりみちるも同じと言いたいのさ。確かにその姿は見ることは出来ない。

しかしだ、例え今の俺たちには見ることができなくてもみちるは空のどこかにいる。

俺たち二人をいつも見守ってな。」

「・・・そうでしょうか・・・」

「当たり前だ。

常に俺たち二人の中を邪魔し続けたみちるだぞ、今ラブラブの俺たちを監視していないはずがない。」

その言葉に美凪はくすっと笑った。

「・・・ラブラブ・・・私たちが?」

「違うのか?俺の勘違いだったら悲しいぞ。」

「・・・いいえ、確かにラブラブですね。」

「だろう、だからいつかまた俺たちの前に姿を現すさ。『国崎往人、覚悟!!』っていう具合にな。」

「・・・そうですね、・・・その方がみちるらしいですね。」

そして二人は顔を見合わせると久しぶりに、本当に久しぶりに腹の底から声を上げて笑ったのであった。

 

 

 

 「スゥ〜 スゥ〜」

「やれやれ、こんなところで寝てしまったか。」

国崎往人は彼の肩に寄りかかって寝てしまった美凪を見てそう呟いた。

さっきまでの夜空を眺めていた表情とはうって変わって穏やかな表情で寝息を立てている。

「・・・起こしてしまうのは悪いな。疲れているだろうし。」

そこで国崎往人はこのまま夜を過ごすことにした。

そして彼は一人満天の星空を未見上げると呟いた。

「・・・待っていろよなみちる。翼を持つ少女のついでにお前も助けてやるぞ。」

(ちょっと国崎往人!!それはないだろ!!!)

そんな言葉が頭の中を過ぎったものの彼は頭を振ると目を閉じた。

 

 まだまだ続く、長い長い旅のために・・・・。

 

 

 

あとがき

とりあえず「Air」の遠野美凪クリアを勢いをかって書いたSSです。

いかがでしょうか?

どうもAirはKanonに比べると書きにくいですね。

とりあえずDREAM編の三人は書いてみたいけどどうだろう?

とりあえず「機動警察Kanon」の方には間違いなく出すんですけどね。

 

 

2001.09.24

 

 

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