注意!!
はじめに一言。
私は特定のメーカー、および製品に悪意を持ってこのSSを書いたわけではありません。
そのことを念頭に置いてお読みください。
「祐一、荷物持ちして」
「いやだ」
名雪の言葉に祐一は即座に却下した。
すると名雪は祐一をにらんだ。
もっともそんなトロンとした目で睨み付けられても迫力は無かったが。
「祐一、荷物持ちして」
再び繰り返される名雪の言葉。
だが祐一は窓の外をちらっと一別し、また断った。
「嫌だ。外はすごく寒そうだぞ」
確かに今外ではものすごく雪が降っている。
というかまるっきり吹雪状態である。
こんな時に誰だって外には出たくはないであろう。
しかし名雪は首を横に振った
「ダメだよ。だって夕飯の材料がないんだよ」
「秋子さんが買ってくるだろ」
「ダメだよ。お母さん、今日仕事だから帰り遅いんだから」
「なら名雪一人で買ってこい」
「じゃあ祐一だけ今日のご飯は紅しょうが」
「・・・・・」
思わず黙り込む祐一。しかし名雪は続けた。
「お茶碗山盛りの紅しょうがを、紅しょうがをおかずにして食べるの。おつゆは、しょうがの絞り汁」
昔どこかで聞いたことあるようなフレーズの言葉。
しかし祐一はそんな食事はごめんであった。
「・・・わかった。それじゃあ行くか」
脅迫に屈した祐一はモコモコのコートを着込むと名雪と二人、吹雪の中買出しに出かけるのであった。
「祐一、スーパーだよ♪」
「見ればわかる」
猛吹雪の中、何とか商店街にたどり着いた祐一と名雪。
そんな二人を出迎えたのはごく当たり前のスーパーであった。
前にこのスーパーに来たときは店の外で待っていたのだが今日は・・・そんな気分にはなれない。
「さあ入るぞ」
祐一から率先してスーパーへと入るのであった。
「今日の夕飯は何にしようか、祐一♪」
「俺が知る分けないだろ」
名雪の言葉に祐一はぶっきらぼうに答えた。
といっても別にメニューを考えるのが面倒だとかそう言うことではない。
焼きそばしか作ることの出来ない祐一には考えようもない分野である。
そのことを十分分かっている名雪は頷いた。
「そうだね。それじゃあ聞き方を変えるけど祐一は何が食べたい?」
「秋子さんの特別製ジャムと紅しょうがのフルコースでなければ何でも」
「・・・祐一、まじめに答えている?」
さすがに怒ったように言う名雪。
だが祐一は真剣そのものといった表情である。
さすがに祐一の本気を悟った名雪は大きなため息をつくと言った。
「しかたがないよね、何か安いのを選りすぐって何か作ることにするよ」
いくらポワンとしていてもカエルの子はカエル、名雪はやはり秋子さんの娘であった。
それから20分経過・・・。
名雪はあるコーナーの一角で釘付けになっていた。
「・・・名雪、いつまでここにいるんだ?」
「・・・・」
しかし名雪は何も答えない。いや答えられない。
目の前の多量のイチゴフェスティバルのデザートに目を奪われていたのだ。
「・・・いい加減にしてくれないか?」
何せ祐一の両手にはたっぷりの食材の詰まったカゴがある。
正直言って重くて仕方がないのだ。
するとようやく名雪は口を開いた。
「う〜っ、祐一。今日のデザート何にしようか?」
「・・・知らん。お前の好きなのを頼めばいいだろ」
「そうなんだけどこれだけあると悩むよ〜」
たしかに名雪ならずとも悩んだことであろう。
そこには20種類以上の多量のイチゴのデザートがならんでいたのだから。
とは言ってもこのままではいつまで経っても決まらない。
そこで祐一はアドバイスした。
「どうだ?今まで食べたこと無いのにするというのは?」
すると名雪は頷いた。
「うん、そうだね。そうしよう」
そこで名雪は色々物色し始めた。
そして決めた。
「祐一!これにするよ!!」
そう言って名雪が手に取ったのは某大手製パン会社の新製品?○琴一期であった。
「それで決まりか?」
ようやく決まったことにほっとした祐一は名雪に声をかけた。
すると名雪は頷いた。
「うん、他のは食べたことあるし。それに丸ごとっていうのが良いんだよ♪」
確かに他のイチゴのデザートは一イチゴの加工品が多い。
真のイチゴ好きには丸ごと普通のイチゴが入っている方が良いのであろう。
かくして買物を終えた二人は吹雪の中水瀬家へと帰っていった。
「じゃあ今日の夕飯は鍋にするね」
帰るなりそう言う名雪。
確かに冷え切った今の二人には心底暖まる鍋物は最高の料理だ。
何より簡単だし(笑)。
かくして1時間後。
二人は満足げに食後のお茶をすすっていた。
「いや〜、旨かった旨かった」
「どういたしまして」
お腹一杯になって腹をさすっている祐一にニコニコ顔の名雪。
どことなくほのぼのした光景である。
その時祐一はふと気が付いた。
「そういえば名雪、デザートは良いのか?」
「あっ!忘れてたよ」
そう言うや席を立ち、テクテクと冷蔵庫の扉を開ける名雪。
そして中から先ほど買ってきた○琴一期を取りだした。
「えへへへ〜、どんな味かな?」
すっかり舞い上がっている名雪。
そして再び席に着くと名雪は包みを取った。
「いただきます〜♪」
デザートを食べる時には不適切な挨拶、しかし今の名雪にはどうでも良いことであった。
そのまま満面の笑みでかぶりつく。
そして笑顔が凍った。
「うにゅ〜っ、生クリームしか入ってないよ〜!」
そこで祐一は言った。
「端っこだからじゃないのか?○琴馬奈奈も端っこはクリームだけだぞ」
姉妹品を食べたことがある祐一はそう言った。
すると名雪は再び笑顔に戻り頷いた。
「そ、そうだよね!次にイチゴが入っているんだよね〜!」
そしてもう一口。
「・・・もしかしてメーカーのミスでイチゴ入れ忘れた?」
呆然としたように呟く名雪
どうやら二口目にも入っていなかったらしい。
しかしこのままで終わるわけには行かない。
名雪は三口目をかぶりついた。
「うっ!」
「どうした!?」
いきなりうめいた名雪にビックリいて思わず状況を確かめる祐一。
すると名雪は心底情けない表情を浮かべた。
「・・・イチゴ入っているけどすっごく小さいよ〜!」
「・・・お前な。驚かすなよ」
呆れる祐一。
しかし名雪はそれどころではなかった。
そのままあっという間に残りをきれいに平らげる。
そして思わず叫んだ。
「これで○琴一期を名乗るなんてサギだぉ〜!!」
意外な名雪の一面に驚きつつも祐一は名雪に尋ねた。
「何がサギなんだ?ちゃんとイチゴ入っていたんだろう」
すると名雪はムキになって叫んだ。
「入っていたけどこんな小さいのが三個だけだよ〜!!」
そして指で入っていたと言うイチゴのサイズを示す。
それは確かに小さかった。
だから名雪は文句を言い続ける。
「これは誇大表示なんだぉ〜!!許せないんだぉ〜!!!」
そして席を立って電話機に向かう。
「お、おい名雪。何をするつもりだ?」
同じく席を立って名雪の背後に立つ祐一。
すると名雪は手早くダイヤルした。
『はい、こちら104です』
受話器の向こう側から流れてきた女性の声。
すると名雪は言った。
「一件頼むんだぉ〜。日本広告審査機構ことJAROの番号をお願いするんだぉ〜」
『日本広告審査機構ですね。場所はどこですか?』
「たぶん東京だと思うんだぉ〜」
『分かりました。それではお伝えいたします。ありがとうございました』
そして機械によるアナウンスが流れ、すぐさまメモを取る名雪。
そして
「え〜っと03の、3541の2811っと」
とプッシュする。
そこで初めて事態に気が付いた祐一は慌ててフックを指で切った。
「何するんだぉ〜!」
「お前こそ何考えているんだ!!JAROに電話してどうするつもりだ!?」
「もちろん誇大広告だって文句を言うんだぉ〜!!」
「馬鹿なことは止めろ!!」
「バカとは何だぉ〜!!私を騙くらかした○○○○に正義の鉄槌をくだすんだぉ〜!!!」そして再びダイヤルをプッシュしようとする名雪。
そんな名雪を祐一は羽交い締めにした。
「止めろ名雪!!何を血迷っているんだ!!!」
「離すんだぉ〜祐一!!話せばわかるんだぉ〜!!!」
そして2時間。
「離すんだぉ〜祐一」
「いいや、離さないぞ!!」
二人はまだもみ合っていた。
いつもならばとっくに夢の世界にる名雪であるがさすがにイチゴ・ねこ・謎ジャム等が絡んでいると起きていられるらしい。
「私は理想を実現するために、真の○琴一期を実現するために、JAROに電話するんだぉ〜!!!」
ジオンの某少佐のような台詞を吐きながら祐一の腕の中から逃れようとする名雪。
だが祐一も必死だった。
こんなアホなことで文句をつけるとは・・・。
このままでは名雪は単なるクレマーになってしまう。
それは避けたい祐一は必死だ。
するとその時、玄関が開き秋子さんが水瀬家に帰ってきた。
「あらあら、二人とも何仲良くじゃれ合っているのかしら?」
もみ合う二人を見た秋子さんは頬に手を当てながらそう言った。
「あ、秋子さん!!名雪を止めてやってください!!!」
思わず叫ぶ祐一。
それに対して名雪は秋子さんの帰宅に全く気が付いていない模様。
とにかく祐一の腕の中から逃れ、JAROに電話しようとする。
「わっ、やめろ名雪!」
「・・・とにかく事情を話してくれないかしら?」
「は、はい!では手短に・・・」
祐一は2時間前の出来事を話した。
すると秋子さんは情けない顔をした。
「・・・この子、一体いつまで子供のつもりなのかしら?ちょっと甘やかせすぎたかもしれないわね」
そして台所へと秋子さんは消える。
「あ、秋子さん!?」
一緒になって名雪を止めてくれると持った秋子さんがその場から去ってしまったことに祐一は困惑を隠しきれない。
その時、再び秋子さんが姿を現した。
その手にはオレンジ色のアレが握られている。
その姿を見た祐一は思わず硬直してしまった。
しかし血迷っている名雪はその状況に気が付かない。
それが悲劇の幕開けだった・・・。
「はい、名雪。イチゴの代わりの特製ジャムですよ」
秋子さんはスプーンいっぱいに謎ジャムを取ると名雪の口にそのスプーンを突っ込んだ。
「・・・?・・・うあ・・・ゆ・・・」
思わず昏倒する名雪。
かくして名雪の暴走を阻止することに成功した。
多大な損害と犠牲(名雪のこと)を払って・・・。
そのためであろう。
これ以降、名雪はこのことを持ち上げることはなかった。
ただし某製パン会社の商品には決して手を出さなくなったが(笑)。
あとがき
落ちが弱いのが玉に瑕。
ネタ的にはおもしろいかな?と思ったんですが。
ちなみに名雪の反応は私が三週間ぐらい前に食べたときの感想そのもの。
ちょっとイチゴは少なすぎ。バナナの方がおいしいよな。
ちなみに私は別にこの会社のパンは食べないとか買わないという反応はしていません。
なおこのSSはギャグです。
メーカーさん、文句言わないでね(笑)。
2002.02.03