「祐一、お待たせ。」
陸上部のミーティングを終えた水瀬名雪は従兄弟の相沢祐一にそう声をかけた。
すると祐一はぶっきらぼうに頷いた。
「遅いぞ名雪、すぐに終わるって言っていたじゃないか。」
「だからすぐに終わったでしょ?」
「・・・30分も寒風にさらされていた俺にそんなことを言うのか?」
祐一がそう叫ぶと名雪はにっこり微笑んでいった。
「でも・・・再会したあの日に比べたら早いよ。」
名雪のその言葉を聞いた祐一はプツンと切れた。
自らの手を名雪の口の中に突っ込むと引っ張り、そして叫ぶ。
「そんなことを言う口はこれか!?これなのか!?」
「うみゅ〜!!」
名雪は思わず涙ぐむとそう叫んだ。
しかし祐一は容赦はしない。
しばらくの間、名雪は祐一に散々なぶられた(笑)。
「う〜、唇が伸びちゃったような感じがするよ〜。」
名雪はひりひりする口元を気にしながらそう呟いた。
すると祐一は悪びれた様子も見せずに言った。
「お前が悪い。」
「う〜、祐一極悪人さんだよ〜。」
「やかましい。そうされたくなければ時間厳守しろ。」
「で、でも〜。」
「俺はあの時マジで凍死する寸前だったんだ。なのにお前と来たら反省の欠片も見せずに・・・」
「わ、わかったお〜。反省するから・・・」
「反省だけなら猿でも出来る。」
「うっ〜って祐一、ネタが古い・・・」
「よけいなつっこみを入れるな!」
なんだかんだ言いつつも仲の良い二人であった。
「あっ!雪が増振ってきたね。」
帰り道の道中、空からはらはら落ちてくる白い物を見て名雪はそう呟いた。
すると祐一はうんざりしたような表情を浮かべた。
「何だ、また雪か。」
すると名雪は不思議そうな表情を浮かべた。
「もしかして祐一って雪、嫌い?」
「・・・当たり前だろ。雪なんて寒いし冷たいし汚いし。」
「私は好きだよ、雪。」
「そのようだな。」
祐一は名雪の様子を見てそう頷いた。
思いっきりうきうきしているのだから間違いはあるまい。
しかし祐一には名雪の様に喜ぶことは出来なかった。
幼いときはあんなに雪が降るとときめいたというのに。
(一体いつから俺は雪が好きでは無くなったんだろう?)
そんな事を考えながら歩いていると名雪が祐一の顔をのぞき込んで尋ねた。
「どうしたの祐一?何か考え込んでいるみたいだけど。」
「・・・何でもない。」
祐一は慌てて名雪にそう答えた。
いい男がそんなことを考えていたなんて知られたら恥ずかしいではないか。
そしてごまかすように祐一は名雪に尋ねた。
「名雪は何で雪が好きなんだ?」
すると名雪はちょっと考え込み、そして笑顔で言った。
「う〜ん、やっぱり名前に雪という字も入っているし。」
「・・・それだけか?」
すると名雪はうんと頷いた。
「もちろんだよ。というよりも好きなことに理由なんていらないよ。」
「それはそうかもしれないな。」
珍しく良いことを言った名雪に祐一は感心したように頷いた。
そしてふと気がついたように祐一は名雪に尋ねた。
「なあ名雪、一つ聞きたいことがあるんだがいいか?」
すると名雪は頷いた。
「答えられることなら良いよ。」
「それじゃあ聞くがお前の名前に何か由来はあるのか?」
「由来?」
名雪は不思議そうに聞き返したので祐一は補足した。
「ああ、そうだ。名雪という名前、正直言ってお前以外に俺は知らないからな。
お前にぴったりな名前だとは思うが何か理由でもあるんじゃないのかって思ってな。」
すると名雪は腕を組んで考え込み、そして首を横に振った。
「お母さんからは聞いたこと無いんだよ。」
「そうか。」
「でもお母さんに聞けばきっと教えてくれるよ。」
「それもそうだな。」
というわけで二人は寄り道もせずに水瀬家へと帰っていった。
「「ただいま〜」」
二人は帰って来るなり家の中へとそう大きな声を張り上げた。
すると秋子さんが台所から顔を出して微笑んだ。
「あら、お帰りなさい二人とも。今日は早かったのね。」
たしかにいつもならば百花屋に寄り道しているのだからもう二時間ぐらいは遅いのではないだろうか?
しかし今日は秋子さんに聞きたいことがある。
そこで名雪は秋子さんに声をかけた。
「お母さん、聞きたいことがあるんだけどいい?」
「了承。」
いつもの秋子さんの言葉である、が今回はさらに言葉が続いた。
「でも今は夕食の準備中だし夕食後にで良いかしら?」
「了承だよ。」
名雪も秋子さんのように一秒了承する。
その様子を見ていた祐一は(やはり親娘だよな〜)と感心していると秋子さんは言った。。
「それじゃあ二人とも着替えていらっしゃい。すぐに出来るから。」
「「は〜い。」」
二人が二階から下りてくると食卓にはすでに3人分の夕食が見事に並んでいた。
あいも変わらずおいしそうな料理の数々。
さらには名雪の好物であるイチゴも多量に用意してある。
「「いただきます〜♪」」
二人はそう言って夕食を食べ始めた。
(食事シーンは本筋に関係ないので省略)
「「ごちそうさまでした〜♪」」
満面の笑みを浮かべた二人は食事を追えると自然にその言葉を発した。
真においしい料理を食べると人は幸せになれるものだからだ。
そして秋子さんはその言葉を聞いてうれしそうに微笑んだ。
「どういたしまして。ところで名雪、何か話があるんじゃなかったの?」
「そう言えばそうだったよ。」
名雪は頷くと秋子さんに尋ねた。
「ねえお母さん、私の名前に何か由来ってあるの?」
すると秋子さんはビックリしたような表情を浮かべた。
こんな表情ははっきり言って始めて見る名雪と祐一は思わず驚いた。
何かまずいことでも聞いたのではないか?そう思ったからである。
だが秋子さんはすぐに微笑むと言った。
「そうね、そろそろあなたにも話しても良い頃よね。でもちょっと待っていてね。話長くなりそうだから先に後かたづけするから。」
「わかった、私も手伝うよ。」
というわけで夕食の後かたづけは名雪と秋子さんの二人で行われたためすぐに終わった。
「それじゃあ名雪の名前についての由来だったわね。」
秋子さんは名雪の質問を改めて問い返した。
「うん、そうだよ。」
名雪が頷くと秋子さんも頷き、そして話し始めた。
「あ、あ、あ、あ、秋子。」
「はい、何ですか?幸介さん(名雪の父の名前ね)。」
夜の公園のベンチにて。
幸介氏は一世一代の決心をもって恋人である水瀬秋子に告げようとしていた。
しかしいくら決心してもなかなか出来ないこともある。
ましてや断られたりでもしたら・・・・・。
だがいつまでも躊躇しているわけには行かない。
とうとう意を決して心の内をぶちまけた。
「秋子!俺と結婚してくれ!!」
飾りっ気のないストレートなプロポーズと言えば聞こえが良いが何も考えていない言葉とも言える。
しかし秋子は笑いはしなかったし首を横にも振らなかった。
コクと頷くと照れくさそうに、小さな声で言った。
「了承。」
「飾りっ気もなにもないストレートなプロポーズだったんだね。」
名雪はちょっと不満そうな顔でそう言った。
名雪とてうら若き乙女である。
やはりこういった場面ではそれなりにロマンチックにやって欲しかったのだろう。
だが秋子さんはにっこり微笑んで名雪をたしなめた。
「名雪、大切なのは言葉でなくて心ですよ。」
「それはそうだけど・・・。」
「まだ何だか不満なようね。」
「う〜、まあいいよ。それよりもそれでお父さんとお母さんは結婚したの?」
すると秋子さんは首を横に振った。
「いいえ。私とあの人の間にはそれなりの問題があったのですよ。」
「ところで祐一さん、姉さんの旧姓って知っているかしら?」
突然話を振られた祐一は思わず戸惑った。
なんせただ黙ってきいているだけだと思っていたからである。
しかしすぐに気を取り直し考え込んだ。
「・・・そういえば聞いたことないです。」
「そうでしょうね。姉さん、ああ見えてかなり頑固というか意固地だったし。」
「それはそうですが・・・何か関係が?」
「もちろんありますとも。姉さんの旧姓は水瀬です。」
「水瀬って秋子さん・名雪と同じ?」
「はい。本来ならば水瀬の家を継ぐのは姉さんでした。しかし義兄さんと駆け落ちしてしまして。」
「ほ、本当ですか!?」
思わず祐一は叫んだ。
あの両親にそんな過去があったとは・・・・、夢にも思っていなかったからである。
だが秋子さんは大きく頷いた。
「姉さんは長女でしたから本来ならば婿をとるというのが決まりでした。
しかし義兄さんも家名を次ぐべき長男、婿養子にはなれない。
それで水瀬の家から猛反対を受けまして。祐一さん、水瀬の家には行ったことがないでしょう。」
「・・・そういえば親父の実家に行ったことはあるけどお袋の実家に行ったことはないな。」
「えっ!?祐一、おじいちゃんとおばあちゃんに会ったことないの!?」
「ああ、全くないな。」
祐一は名雪の驚きの声にそう頷いた。
すると名雪は叫んだ。
「それって絶対変だよ。祐一、気にしなかったの?」
「・・・改めてそう言われると確かに変だがそれが当たり前のことだと思っていたからな。」
「今でも姉さんは妹である私以外の水瀬の家とは絶縁関係にありますからね。
まあこれからが本題なんですが姉さんが家を飛び出してしまったために家を継ぐのは私と言うことになってしました。」
「まあそれは確かにそうでしょうね。」
祐一が頷くと秋子さんは微笑んだ。
そしてさらに続けた。
「・・・私と姉さんは昔からよく似ているって言われていたんですが男性に関する趣味も似ていたんですよ。」
「それはどういう事で?」
「・・・あの人・・・幸介さんも長男、それも一人っ子だったんですよ。」
「そうだったの!?」
「そうなんですか!?」
「ええ。ですから事はすんなり済まなかったんですよ。」
そして秋子さんは再び過去を語り出した。
「いかん!!絶対に婿入りなんか許さないぞ!!!」
「そうですよ、幸介さん。秋子さんと結婚することには反対しませんが何で貴方が婿養子にならなければならないのですか!!」
これが幸介さんの実家を尋ねた秋子さんを出迎えた言葉であった。
だがこれは無理もあるまい。
跡取りの息子が家を出てよその家に出て行かれては困るという物だ。
しかしそんな親の気持ち、恋にとち狂った幸介氏には関係なかった。
「仕方がないでしょう!秋子は水瀬の家を継がなければならないんですよ!」
「それはお前だって同じだ!!」
「うちの家名なんか大したこと無いじゃないですか!!たかが明治からの家でしょう!!」
「それでもご先祖様に申し訳が立たないんだ!!!」
「まあこんなやりとりがあったわけです。」
秋子さんの言葉に名雪は憤慨したようにうなった。
「う〜、何でおじいちゃんとおばあちゃんはお父さんとお母さんの結婚を許してくれなかったの?」
「幸介さんは二人にとってたった一人、しかも歳を取ってからの子供でしたからね。
無理もなかったんですよ。」
「で、でも〜」
名雪はさらにうなったが秋子さんはたしなめた。
「名雪、あなただって同じような立場になればわかりますよ。」
「・・・そうなのかな?」
「そうですよ。私も今は義父さん・義母さんの気持ちがよく分かりますからね。
でも名雪が選んだ人なら誰だろうとどんなことだろうと『了承』ですよ。」
「お、お母さん〜」
話がすっかり脇道にそれてしまったので祐一は秋子さんに声をかけた。
「それで一体どうやって認めさせたんですか?まさか秋子さんも駆け落ちを?」
すると秋子さんは笑いながら首を横に振った。
「いいえ、私は姉さんとは違いましたからね。そこまでは出来ませんでした。」
「ではどうしたんですか?」
すると秋子さんはちょっと淋しそうな表情を浮かべ、そして言った。
「一つ条件がつけられたんですよ。私たちの結婚を認めて貰う代わりに。」
「良いだろう、認めてやろうじゃないか。」
もう何十回目の交渉の席であろうか、とうとう幸介の父親は折れてそう言った。
その言葉に幸介と秋子の二人は顔を思わず見合わせ、そして満面の笑みを浮かべた。
だがその言葉は続いた。
「だが条件があるぞ。」
「条件って一体何ですか?」
秋子は思わず身を乗り出して尋ねた。
すると幸介の親父は腕を組んでいった。
「二人の間に生まれた一番最初の子を我が家の養子とすることだ。それを受け入れるならば幸介の水瀬家への婿入り、認めてやる。」
「そ、そんな条件だったの?」
名雪はビックリして思わずそう叫んだ。
すると秋子さんは黙って頷いた。
「あの頃はまだ生まれてみない、出来てもいない子供のことよりも二人のことが認められる方が大切でしたからね。」
「そ、そうかもしれないけど・・・・」
いままでずっと慕っていた母親の言葉を名雪はすぐには信じられないようだ。
だが秋子さんは続けた。
「結婚した私たちはとても幸せでした。そしてすぐに妊娠しました。」
「・・・それって私?」
秋子さんの言葉に名雪は聞き返した。
すると秋子さんは頷いた。
「ええ、そうよ。そしてあなたは順調に大きくなっていった。それとともに私たち夫婦の苦悩は大きくなっていきました。」
「それってやはり・・・」
祐一がおそるおそる尋ねると秋子さんは頷いた。
「ええ。いくら私たちのことを認めて貰うためとはいえ子供を手放すのは・・・。
でも約束でしたし何よりももっと子供を産めばいいって当時の私たちは考えていたんです。
どんなに生んでも同じ子供は一人としていないというのにね。
それに次の子供は・・・出来なかったですし。」
秋子さんはそう言うと目を伏せた。
そしてしばらく沈黙が続く。
そしてその沈黙を破るかのように名雪が言葉を発した。
「それはつまりお父さんが・・・?」
「ええ、そうよ。」
秋子さんは頷いた。
「あの日・・・・あの人はこの家の玄関を出て仕事に向かいました。そして二度と自らの足で戻ってくることはありませんでした。」
「「・・・・・・」」
「その知らせを聞いた私は絶望の淵に立たされました。
そしてすぐに考えたのがあの人の後を追うことでした。しかし私には出来なかった。なぜならば・・・・」
「・・・私がお腹にいたから?」
すると秋子さんは頷いた。
「そうです。私はあの時間違いなくあの人の後を追おうとしていました。
包丁を持って水の張ってある風呂場にまで足を踏み入れたぐらいですから。」
秋子さんの過去の告白に名雪と祐一は言葉も出せない。
ただ黙っているだけである。
「私は包丁の刃を間違いなく左手首に当てました。そしてあとは手にした包丁を引くだけ。
その時、私は名雪に助けられたんです。」
「わ、私がお母さんを助けた?」
「ええ、そうよ。」
秋子さんは微笑んだ。
「その瞬間、名雪、あなたは私のお腹の中で力強く蹴ったの。そしてそれは私に生きる希望を与えてくれた。」
「お母さん・・・・」
「生まれたらすぐに義父さん・義母さんに渡す約束をしていて勝手だとは思うのだけれど。
でも名雪、私はあの時のことを決して忘れたりはしないわ。」
しばらく重苦しいとは違う、しかし緊迫した空気がリビングルームを包む。
そういった雰囲気が苦手な祐一は続きを促した。
「それでどうしたんですか?」
すると秋子さんは微笑んだ。
「私と名雪がここで一緒に17年間過ごしてきた、それが結果です。」
「それはそうでしょうが・・・っていつの間にか秋子さんの思い出話になっていません?
名雪の名前の由来を聞いていたんじゃ?」
すると名雪もようやくと目的を思い出したようだ。
秋子さんに問いただした。
「そういえばそうだったよ。私の名前は一体?」
すると秋子さんは笑った。
「二人とも慌てないの。話は続くんだから。」
「「おめでとう、秋子さん。」」
幸介の両親は無事出産を終えた秋子を見舞い、そう言った。
その傍らには生まれたばかりの赤ん坊がいる。
それに対して秋子は・・・事務的に答えを返した。
「・・・ありがとうござます。」
3人は黙り込み、そしてその間に緊張感が漂う。
がやがて決心したのであろう、幸介の親父は口を開いた。
「・・・秋子さん、この子のことだが・・・」
その言葉を聞いた秋子は叫んだ。
「お願いします!!この子を・・・幸介さんの子供を連れて行かないで!!」
まだ名前も付いていない赤ん坊を抱きしめて秋子は叫んだ。
すると母親の状態に気がついたのだろうか?突然赤ん坊は泣き出した。
だが秋子はそのことに気がつくこともなく抱きしめ続けている。
その様子を見ていた幸介の父親・母親は顔を見合わせ、そして頷いた。
「秋子さん・・・その子はやはり母親と一緒の方が良いと思うのよ。」
義理の母親の言葉に秋子は顔を上げた。
すると義母は続けた。
「・・・子供のいなくなった母親の気持ちは私も痛いほどよくわかるわ。
私だってお腹を痛めて産んだ子供を失ったのだから・・・。
でも私には支えてくれる夫がまだいる。
でも今のあなたを支えるべき人はその子だけですもの。」
「お義母さん・・・・」
秋子の言葉に幸介の両親は笑い、そして言った。
「だがせめてこの子の名前は付けさせて欲しいんだがどうだろうか?」
その言葉に秋子さんはこっくり頷いた。
「了承です。」
「・・・ありがとう。もし幸介が生きていたらこの子につけられるはずだった姓なんだが・・・。」
そう言って義父はその名前を口にした。
「水瀬名雪」と。
「・・・私の名前ってお父さんの実家の姓だったんだ・・・・」
名雪の言葉に秋子さんは頷いた。
「ええ、あの人の実家・・・名雪家。あなたの名前にはその歴史が込められているの。
あの人は水瀬家に比べれば大した家じゃない、そう言ったわ。
でもね、名雪。どんな家であろうともずっと積み上げられてきたものがあなたの足下にはあるの。
そのことを忘れないでね。」
「う〜、わかったぉ〜。」
「わかったぉ〜?」
名雪の言葉に祐一は慌てて名雪の顔をのぞき込んだ。
するとあまりに長くなった話のせいだろうか?すっかり睡魔にとりつかれていた名雪の姿があった。
時計を見ればもう午後十時すぎ。
いつもの名雪ならばとっくに夢の世界に行っている。
今日はよく頑張ったと褒めるべきなのかもしれない。
だが感動的な話の最後にこれはないであろう。
祐一はポカっと名雪の頭を軽く叩いた。
「う〜、祐一ひどいぉ〜。」
もちろん寝たままである。
すると秋子さんが祐一に言った。
「祐一さん、女の子の頭叩いちゃだめですよ。」
「し、しかしせっかくの話の最後にこれはないんじゃ・・・・」
すると秋子さんは驚くべき言葉を賜ってくれた。
「あら祐一さん、本気にしたんですか?」
「えっ!?まさか冗談とでも言うんですか?」
「さあ、それは秘密ですよ。」
「ちょ、ちょっと秋子さん・・・・。」
だが秋子さんは微笑むだけ、それ以上は教えてくれない。
そして笑いながら言った。
「祐一さん、水瀬名雪と相沢名雪、どっとがいいかしらね?」
「あ、秋子さん!!」
祐一は顔を真っ赤にして照れた。
そして秋子さんはソファーを立つと背後にいる祐一に声をかけた。
「名雪を部屋までお願いしますね。明日仕事で朝早いので私、もう寝ますので。それではお休みなさい。」
「あ、秋子さ〜ん」
あとがき
会社で休日出勤中、顧客名簿を見ていて思いついたネタ。
って仕事中に何考えているんだろう、俺。
ちなみに名雪という名字は本当にありました。
幸介という名前はでたらめ、頭の中に思い浮かんだのを適当に。
名雪の話のはずだったんだけどいつのまにか秋子さんの話になるし。
やはり思い通りには書くの難しいな。
2001.10.22