憂鬱な日
 
 


 
 「はぁ〜、今年もこの日が来たのね・・・。」

パン屋の看板娘スー・グラフトンは店のカウンターの中で大きなため息をついた。

すでに今日何十回目のためいきであろうか?

一体、女性のため息の原因は一体何であろう?

恋煩い?

いやスーはもっかのところ彼氏などいないさみしい独り身であった。

無論片思いなどということとも全く縁がなかった。

それでは便秘?

いやスーは美容の為に常に快眠・快食・快便を心がけていたので便秘とは無縁の生活だった。

それじゃああの日?

いややはりスーのあの日は一週間前に来ており、今は何でもなかった。

それでは一体なんなのであろうか?

ただスーは無性に今日という日が疎ましかったのである。
 
 
 そこへ突然店の扉が開け放たれた。

そして扉に付けられたベルが音を立てて鳴り響く。

「いらっしゃいませー!!」

ブルーの入っていたスーは慌てて営業スマイルを浮かべると客を出迎えた。

するとそこにはポニーテールをした少女が立っていた。
 
 スーはその顔を見るなり元の憂鬱な顔に戻って腰を下ろした。

「何だ、キャロルだったのね・・・。」

「きゃはははー。何だとは酷いよ〜。」

スーの親友キャロル・パレッキーは朗らかというか脳天気な声で笑いながら言った。

それに対してスーはつまらなそうな表情で言った。

「別に良いでしょう、あなたなんだから。」

思いっきり失礼な言い方だがキャロルは気にしなかったようだ。

笑顔のままスーに言った。

「お誕生日おめでとう、スー。これであなたも24歳だね♪」

その言葉を聞いたスーは思わずカウンターにうつぶした。

「キャロル、あなたねぇ・・・(怒)。」

スーの反応を見たキャロルはそれこそ脳天気な笑顔を浮かべた。

「はははー、やっぱり24歳になったのが気に入らないんだー。そうよね、もうシルベスターだもんねー。」

「うるさいわね!!!誰だって生きていれば24歳になるわよ!!!そんなこと気にする分けないでしょ!!!」

だがキャロルはさらに上手だった。

スーの心をぐさっと完全に一突きする言葉を言い放ったのだ。

「ごめんね、言い直すよ。24歳になったのが嫌なんじゃなくって24歳になったのに未だに独身、しかも男っ気が全く無いから嫌なんだよね〜。」
 
 キャロルの口撃はクリティカル!!

スーのHPを999失わせた。。

スーは死んでしまった。
 
 
 「そんなわけないでしょ・・・・。」

ぐったりした表情ではあったがスーは何とか復活した。

だがすっかり意気消沈してしまっている。

とキャロルがスーを励ました。

「落ち込んでいるだろうと思って慰めに来ているのに落ち込んじゃ駄目だぞ〜。」

「・・・あんたのやっていることは私を余計に落ち込ませているだけよ・・・・。」

スーのその言葉を聞いたキャロルは心底うれしそうな顔をした。

「キャハハハハ。やっぱり分かる〜?」

「・・・もういい・・・。」

スーは部屋の片隅で膝を抱えながら落ち込んだ。

「・・・どうせ私はさみしい独り者ですよ。世間様には行かず後家と笑われ、看板娘じゃなくって看板おばさんと陰口を叩かれ・・・・。」

そのあまりの負のパワーにさすがのキャロルも圧倒されたらしい。

必死になだめてきた。

「ちょっとスー、冗談を本気にしないでよ。そんなことを言っていると本当に実現しちゃうよ。」

「・・何が?」

「行かず後家とか看板おばさんとかだけど。」

キャロルの言葉を聞いたスーは心底心の奥底、魂の叫びをあげた。

「それだけは絶対にイヤー!!!」
 
 

 「それにしてもスー、なぜ男と縁がないんだろうね?」

とりあえず出されたお茶をすすりながらキャロルはしみじみとつぶやいた。

それに対してスーももっともだと言わんばかりに頷きながら言った。

「・・・本当にそうよ。私パンを焼くのは苦手だけどちゃんとお料理だって上手いし、裁縫も出来る、お掃除だって洗濯だってきちんと花嫁修業で身につ
けたんだから。」

「でも男とは縁がないのよね〜。」

あまりにしつこいキャロルの言葉にスーはその首根っこをつかむと締め上げた。

「・・・それ以上言ったらあんたを殺す!」

「わ、わかった。も、もう言わない・・・・。」

そのプロの傭兵も真っ青のすごみにキャロルは慌てて謝った。

するとスーはいつものように戻り、キャロルの首根っこから手を放した。

そしてまた口を開く。

「私お尻は安産型で子供だって沢山産めそうなのに・・・。体のラインだってまあまあ自信あるにな・・・。」
 
 


 あまりに惨めな親友の姿にキャロルはある決断をした。

「スー、今夜酒場に繰り出さない?わたしがおごっちゃうよ。」

未成年のキャロルの言葉にスーは一瞬考え込んだ後うなずいた。

「いいわ、おごって貰う。こうなったら憂さ晴らしよ!!!」
 
 
 そしてその夜、二人は酒場へ繰り出しめいいっぱい羽目を外して憂さ晴らしをしたのであった。

ちなみにその際の彼女の姿を見て男達がスーに近寄らないのだということをスーはまだ知らない・・・・。
 
 
 
あとがき
スーの誕生日記念SSです。

あまりというか全然良い思いしていませんが。

登場人物もスーとキャロルだけ、女同士という惨めさです。

もう少し良い目、あわせてあげても良かったかな?
 
 
20001.04.22
 
 
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