誕生日のプレゼント(キャロル編)

 

 

 「ようキャロル!今日は誕生日なんだってな。」

俺はバイト仲間のキャロル・パレッキーにそう声をかけた。

するとキャロルは脳天気な笑顔で答えた。

「うん、そうだよ!今日は私の誕生日♪」

「それなら何かプレゼントをやろうか?」

俺の言葉にキャロルは脳天気な笑顔のまま頷いた。

「くれるんなら何でも貰うよ〜。」

「よし、それなら帰りにかってやろう。ただし安い物だけどな。」

「全然構わないよ〜。」

 

 

 というわけでバイトを終えた二人はキャラウェイ通りを歩いていた。

「ところで何で安物じゃないといけないのかな?」

キャロルの問いかけに俺は答えた。

「決まっている。金を持っていないからだ。」

それに対してキャロルは不思議そうに尋ねた。

「だって傭兵しながらバイトしてるんでしょ。

給料二重取りな上に食費・賃貸料等もかからないのになんでお金がないの?」

「酒に博打に女。いくらあっても金はたらん。」

俺の言葉を聞いたキャロルは「キャハハハハ〜」と笑った。

「そりゃあ仕方がないよね。それじゃあお金が残るわけないし〜。」

「分かったなら少しでも安いのを選んでくれ。」

 

 

 「ところでどんな物が欲しいんだ?」

俺が聞くとキャロルは少し考え込み、そして言った。

「やっぱ楽しいものよね〜。」

「なるほど、楽しい物か。」

キャロルの要望を聞いた俺は楽しそうな物が売っているお店にキャロルと入った。

 

 

 「ワォ〜。ここはいいお店ね♪」

キャロルはその店に入るなり感嘆の声を上げた。

そこは悪戯グッズを専門に取り扱うお店で何に使うのか皆目見当もつかないような物からオーソドックスな

物まで取り扱っているのだ。

悪戯好きなキャロルにはたまらないらしく店の主人と夢中で会話しながら商品を選んでいる。

とりあえず店の商品に興味を持った俺はキャロルが選んでいる間見て回ることにした。

 

 

キャロル:「ねえ店長・・・、これは?」

  店長:「・・・・さ。結構貴重なんだぜ。」

キャロル:「これがあの・・・初めて見た・・・。欲しいけどいくら?」

  店長:「こんだっけだけど・・・どうだ?」

キャロル:「ちょっと高いわね。こんくらいの予算でおもしろいの手に入らない?」

  店長:「うーん、この予算じゃあねーってそういえばいいもん入ってたよ。」

キャロル:「て、店長・・・これは38じゃない!!」

  店長:「しっー!!声が高いって。どう?欲しくない?」

キャロル:「欲しいに決まってるでしょ。シンラギクルフォンの38といったら有名よ。

       それにしてもこんなのよく手に入れられたわね。」

  店長:「ご禁制だったから大変だったけどね。どう?これなら予算で十分買えるよ。」

キャロル:「これにするわ店長。おーい、決まったから来てー!!」

 

 

 欲しい物が決まったキャロルに呼ばれた俺はカウンターへとやって来た。

そこでは店長がなにやら竹のような物を紙袋に詰めているところであった。

「何にしたんだ?」

俺は尋ねてみたがキャロルは答えようともしない。

たたニヤニヤ笑っているだけ。

しかたがなく金を払って俺はキャロルとともに店を出た。

 

 

 「一体何を買ったんだ?」

しつこく聞き続けるとキャロルはようやく口を開いた。

「ちょっとの間内緒。これから使うからついてきて。」

そう言われた俺はキャロルに連れられてある塀の前へとやって来た。

 

 「これはね〜、三八式爆竹っていうんだよ〜。」

「何だ、爆竹か。ありきたりだな。」

がっかりした俺がそうつぶやくとキャロルは笑った。

「甘い、甘すぎる。この三八式はそんじょそこらのとは訳がちがうんだからね。」

「どこがどう違うんだ?」

俺の言葉にキャロルはマッチを取り出した。

「ふっふ〜。論より証拠、試してみようね。」

そう言うと爆竹一束に火をつけ、塀の向こうに放り込んだ。

 

 バァン バァバァバァバァバァバン 

 

 ものすごい爆裂音が辺りに鳴り響いた。

「な、なんだ・・・この爆竹は・・・。端じゃない音だなぁ。」

俺が驚いたようにつぶやくとキャロルは胸を張って威張った。

「当たり前よ。この三八式はね、あのテロ集団シンラギクルフォンが正式採用しているテロ御用達爆竹なのよ。

だから一般には市販されていないんだから。」

「・・・それってやばいんじゃないか?」

冷や汗を垂らしながら俺が聞くとキャロルは頷いた。

「まあ多分衛兵隊にとっつかまるんじゃないかな。」

その時、塀の中からあわただしい声が響いてきた。

「テ、テロだ〜!!まだ犯人どもはすぐそばに居るはずだ!!!捕まえろ〜!!!!」

「騎士団にテロとは不埒な奴め〜!!我らのメンツにかけてテロリストを捕まえるんだ〜!!」

 

 「やばくなってきたことだし逃げよっか。」

「なぁ!?」

俺の返事も待たずにキャロルは脱兎の勢いで駈けだした。

あわてて俺もその後を追いかける。

 

 「やっぱ悪戯って楽しいよね♪」

キャロルはそんなことを言うが俺にはそれどころではなかった。

とにかく激しく息をつきながらその場を逃げ去るだけ。

「後は犯行声明文を騎士団に送りつけるだけよね♪」

(うぅ〜)

俺は心の中で涙を流した。そして心底誓った。 

『もうキャロルにはプレゼントなど絶対にやらん!!!』と。

 

 

 

あとがき

キャロルの誕生日記念SSです。

相変わらず変ですけどね。

 

じつはキャロルの誕生日、勘違いしていました。

2月7日なのに2月9日だと思っていたんです。

ですから発表が一日遅れということに・・・。

 

 

平成13年2月7日  キャロルの誕生日に

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