別れ、そして出会い

 

 

 そこは一面の桜だった。

そして俺の目の前には小さな噴水が見える。

「ここは・・・」

俺は周囲を見渡した。

そこは俺が何度も見た、見覚えのある懐かしい光景だった。

「・・・帰って来られたんだな。」

俺は感慨深げにつぶやき、そして歩き始めた。

俺のことを待ってくれている人に向かって・・・・。

 

 

 「たしかこっちで良かったんだよな・・・」

俺は口の中で独り言をつぶやきながら目的地へと向かって行く。

まだ一度も足を踏み入れたことはない、しかし今の俺にとっては何よりも行きたかった場所なのだ。

一歩一歩、今をかみしめながら俺は歩いていく。

そうこうしているうちに目的地が見えてきた。

 

 

 俺が目的地につくとそこは・・・学校は卒業式の真っ最中であった。

校庭の片隅に植えられた桜の木が公園と同じく満開に咲き乱れている。

そこへ

 

 ザアァァァッ・・・・・

 

 一陣の風とともに桜の花びらが辺りを包み込む。

その風と桜吹雪が収まった時、あいつは・・・繭のやつは歩いていた。

俺が見たことがない制服を着、卒業証書の入った筒を持ったその姿・・・。

その隣には友人だろうか?同世代の女の子と会話しながら繭は歩いていたのだ。

 

 「ねえ繭っ、次の学校いっても、一緒に遊ぼうね。」

「うんっ!」

「ぜったい。約束だよ。」

「うんっ!!」

 

 俺はこみ上げてくる感情を抑えることは出来ずに繭に声をかけた。

「よう、椎名。卒業おめでとう。」

「・・・・・?」

俺の言葉に繭のやつはきょとんとした顔つきで振り返った。

そしてその顔は驚きに変わった。

まあ一年も姿を見せなかった恋人?が突然姿を見せたのだ。無理もあるまい。

「大人になったな。」

俺の言葉に繭は目に涙をためた。

そしてそのままニッコリ笑うと繭は俺の体に抱きついてきた。

「こ〜へ〜っ!!」

ドスン

ものすごい体当たりだったが俺はそれを受け止めた。

そしてそのまま繭を力強く抱きしめる。

「うぅ、うぅっ・・・・。」

泣き出した繭の頭を俺は優しくなでてやる。

そして笑いながら言った。

「相変わらずだなお前は・・・・。少しは成長したのか?」

もちろん冗談だ。繭が成長していたことは誰が見てもわかるだろう。

しかし繭は涙を目に浮かべながら不機嫌そうに俺をにらんだ。

「みゅ〜、浩平がいけないんだもぉん。一年も繭のことほったらかしにするから・・・。」

「それを言われるとつらいな・・・。」

俺は頭をぽりぽりとかいた。

 

「あの〜あなたが浩平さんなんですか?」

突然俺と繭の会話に割り込んできた者がいた。

誰かと思い、振り返るとそれは繭と一緒にいた女の子だった。

「おっとすまない。つい二人だけの世界に入り込んでしまっていた。」

それを聞いた女の子はくすっと笑った。

「そうですね。すこしは人目を気にして欲しいです。ところで・・・」

「おっとそうだったな、たしかに俺が折原浩平だ。んで君は?」

俺が尋ねると女の子が言う前に繭が口を開いた。

「う〜んとね〜、みあちゃん。」

それを聞いたみあちゃんという女の子は再び苦笑いした。

「そのみあちゃんです。ところで繭をほったらかしで一年間もどこに行っていたんです!」

言葉の末尾の方は明らかに怒っていた。

まあ無理もあるまいと思うよりも繭のために俺のことを怒ってくれているみあちゃんが俺にはたまらなく

嬉しかった。

それだけ繭のことを大切に思ってくれているのだから。

とはいえ事情を説明するのはむちゃくちゃ難しいというか信じて貰えないだろう。

俺が返事困っていると繭が助け船を出してくれた。

 

 「みあちゃん、こ〜へ〜はちゃんと戻ってきてくれたんだからいいんだもぉん。」

そう言って見せた顔は真剣なものであった。

それを見たみあちゃんはため息をつくと笑った。

「繭がこう言っているから今回は許してあげます。でも今度泣かせたら許しませんからね。」

「ああ、わかったよ。」

俺は年下の女の子に説教されて苦笑いしつつ頷いた。

 

 

 「ところでこの後どうするつもりだったんだ?」

俺は繭とみあちゃんに尋ねた。

するとみあちゃんが答えた。

「この後二人でどこか遊びに行こうって言ってたんですけど・・・私は遠慮しておきますね♪」

「みゅ〜、みあちゃんどうして?」

繭はみあちゃんの心遣いがわからないのかそんなことを言った。

それを聞いた俺とみあちゃんは苦笑した。

「成長したようでいてまだまだ子供だよな。」

俺の言葉にみあちゃんも頷き、その様子を見た繭が頬を膨らませた。

「こ〜へ〜もみあちゃんも酷いこと言ってる〜。」

繭の言葉を聞いた俺とみあちゃんは顔を見合わせ、そして声を上げて笑った。

 

 「それじゃあみあちゃんも一緒に来るといいよ。今日は特別におごってやろう。」

俺がそういうと繭は笑顔で叫んだ。

「みゅ〜、てりやき〜!!」

それを聞いたみあちゃんは頷いた。

「私もそれで構いませんよ。だって今日の主賓は繭なんですから。」

「それじゃあ行こうか。」

 

 

 俺たちは歩き出した。

別れと・・・そして出会いの季節に・・・・・。

 

 

あとがき

ようやく繭SS完成です。

けっこう大変でしたよ〜、もともと繭はあまり好きじゃなかったし。

EDの繭日記で転んだんですがやっぱ思い入れが少なかったようです。

まあなんにせよこれでおねSS『永遠の世界から帰還直後シリーズ』は完結。

次からはどんなの書こうかな?

 

ところでみあちゃんの設定知りません?

ゲームだけだとこれ以上、さっぱりわからないんですが。

 

平成13年2月5日


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